軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔術の未来

私の言葉を理解できなかったのか、アラバータが固まったまま動かない。後方では何度も咳払いが聞こえてくるが、今は置いておこう。

数秒して、ディアジオが目を瞬かせながら口を開いた。

「……お、おお。アオイ殿は一流の大魔術師であろうが、やはり各国の情勢や国と国との機微などには精通していないか。我が国は大国の一つに数えられているが、それでも各国との勢力図は拮抗している。秘術ともいえる独自の魔術の流出は、その均衡をいとも簡単に壊してしまうものなのだ」

と、暗に私の要望を叶えることは出来ないと告げてくる。それには同意せず、私は短く息を吐いて顔を上げた。

「その考えが魔術の発展を妨げていると思いますが、懸念されていることは理解できます。確かに、他の国が国独自の魔術を公表しないのに、自国だけが不利になるようなことは出来ないかもしれません」

一部意見を肯定するとディアジオはそうだろうとでも言うように深く頷く。だが、その後の返答を聞く前に、私は再び言葉を続けた。

「しかし、そうはなりません」

そう告げると、ディアジオだけでなくアラバータも首を傾げた。

「なにゆえか」

改めて尋ねられて、私は安心させようと微笑みながら口を開いた。

「私が、全ての国の魔術を公開させるからです。違いがあるとするならば、遅いか早いかの違いでしかないでしょう」

そう告げると、広間の空気が凍り付いたかのように静かになってしまった。

結局、ディアジオから魔術公開の許可は出なかったが、私の魔術を教える代わりにメイプルリーフ聖皇国の魔術研究所への立ち入りは許可された。これに関しては他国の大臣クラスでも認可は下りないものらしく、特別であることを何度も告げられた。

納得はし難いが、一先ず話はまとまった為ディアジオとの謁見は終わりを告げた。

別の貴賓室らしき部屋に通された私は、静かに口を開く。

「……やはり、私が各国全ての魔術を覚えて、自ら研究するしかないのでしょうか」

そんなことを呟きながら残念がっていると、疲れ切った顔でストラスとエライザがこちらに来た。

「頼むから、不用意な発言はしないでくれ」

「アオイさん!? もう気を失いそうだったんですから! 本当にもう!」

二人が一斉に苦情を申し出てきたので、頷き返す。

「分かっています。安心してください。きちんと相手を怒らせないように言葉を選んで意見をさせてもらいましたから。ただ、遠慮し過ぎてしまって、肝心の部分は相手に譲歩させることが出来ませんでした。次回は、必ず認めてもらえるように努力します」

そう宣言すると、二人揃って頭を抱えながら天を仰いだ。やはり、出来るだけ早く魔術を公開させるべきだろうか。二人はすっかり落胆してしまっている。

そんなことを思っていると、苦笑いを浮かべたシェンリーが控えめに挙手をした。

「あの、これからどうしますか?」

シェンリーが誰にともなく尋ねると、コートが腕を組んで唸る。

「そうですね。あまりに急な訪問だった為、魔術学院も研究所もまだ準備や通達の時間がいるとのことでしたし……」

コートが困ったように呟くとアイルが飛び上がるほどの勢いで両手を上げて叫んだ。

「観光! 観光にしましょう!」

その言葉に、皆がアイルを見る。

「王城内を見て回る許可ももらいましたが、そっちは多分また出来ます! でも、自由に街を見て回るのは今日しか出来ないと思います!」

「何故だい? 街の方がいつでも見学できると思うけど」

コートが疑問を口にすると、アイルは私を見ながら即答した。

「だって、明日か明後日にはもう有名になっちゃってるかもしれないでしょ?」

と、不思議なことを言うアイルに、何故か皆が深く頷く。

「……確かに」

「す、鋭いですね」

「……昔から、勘の良いところがありましたからね」

口々に納得の声が聞こえ、リズやベルはアイルを「流石です!」と褒め称えている。

なにやら釈然としないが、皆が望むなら是非も無い。

「では、街へ観光に行きましょう。シェンリーさんに案内をお願いしましょうか」

意見を採用しつつシェンリーを見るが、何故か慌てた様子で否定された。

「い、いえ。私は聖都にあまり詳しくありませんし、何かあるといけないのでお城の方に案内をお願いしましょう」

シェンリーがそんなことを言うと、ストラスたちが即座に同意する。

「それが良い」

「それは良いですね」

「できたら、アラバータ様に頼んだ方が……」

「何かあったらまずいですからね!」

と、皆が聖都の治安か何かを懸念して話し合っていると、不意に外から扉が開かれた。

現れたのはメイプルリーフの宮廷魔術師、クラウン・ウィンザーだった。

「話は聞かせてもらいました。私が案内をしましょう」

なんと、クラウンが自ら案内役を申し出てくれた為、私は素直に感謝を伝える。

「ありがとうございます。助かります」

そう言ってから皆を振り返ると、何故か全員がとても微妙な顔で俯いていた。