軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

突撃

頼み込み、話を広げないようにしてもらっていたロックスと護衛の二人が外で待っていた。そして、側には何故かシェンリーとディーンが立っていた。

「む、終わったか……生きていると良いが」

小さくロックスが何か呟いたが、聞き取れなかったので捨て置く。

私は全員がこちらに向いたのを確認して、ロックスに問う。

「シェンリーさんとディーン君が何故ここに?」

「二人とも俺達を待っていたらしい」

ロックスが答えると、シェンリーが一歩こちらに出て口を開いた。

「ディーン君のご友人が昨日から帰ってないと聞いて、アオイ先生がロックス先輩と帰ってくるのを待ってました。もしかしたら、何か手掛かりが見つかったんじゃないかと思って……」

そう口にしたシェンリーの隣では、不安そうに眉をハの字にするディーンの姿がある。

私は二人に頷いてみせた。

「手掛かりは得ました。後は、直接確認に向かいます」

そう答えると、二人はホッとしたような顔で頷き返す。そして、ロックスが困ったように口を開いた。

「ネヴィス一家に案内させるのか? 一応、騎士団での尋問と調査が……」

「そちらは何とか誤魔化せませんか?」

「ご、誤魔化す? いや、そういうわけには……」

私の言葉に、ロックスは目を白黒させる。確かに騎士団や衛兵の立場で見れば看過できないだろうが、今回は即捕縛といかれては困る。

「時間がありません。他の組織のところに我が学院の生徒がいる可能性もあります。順番に各組織の根城に乗り込み、直談判しなくてはならないでしょう。その為にも、ネヴィス一家には協力してもらいます」

「……せめて、騎士団で尋問した後では……」

「仮にも街の裏側を支配している組織であるならば、情報は何よりも早く集めているものと思われます。ネヴィス一家が襲撃にあったという話も、恐らく即座に伝わるでしょう。相手がネヴィス一家が寝返った可能性まで考慮する前に、こちらから尻尾を掴みにいきます」

目を見て真っ直ぐに今後の計画を伝えると、ロックスは何故か頬を赤くして視線を逸らした。

「……わ、分かった。情報規制をかける」

言質を取り、首肯を返す。

唯一の気掛かりが大丈夫であると分かった以上、後は行動あるのみだ。

私はシェンリーとディーンを呼び、研究室へと戻った。

カリラ・ネヴィスは仕事が早かった。他の組織と接触したいと伝えたところ、すぐさま部下を使って動き出した。

カリラ本人は私と共に街の裏通りを歩いているが、部下たちはこの動きを把握しているのだろうか。

「……何処へ連れて行く気だ? もし、逃げる算段や我らを罠にかけようなどと企んでいるのならば……」

後ろをついてくるロックスが警戒心を露わにして釘を刺す。カリラはそれに顔を顰めると、こちらを一瞥した。

「馬鹿言えよ、王子様。今更逆らう様な真似しねぇよ。俺達が使えるところを見せておけば、上手くいけば処刑を免れるかもしれねぇだろ」

「……太々しい奴だな。それを俺達に言うとは」

呆れるロックスをカリラは鼻で笑い、肩を竦める。

そして、暫く歩いているとカリラの部下が一人、音も無く現れ、報告をした。

カリラに顔を寄せて小さな声で何か呟き、離れる。

「……白き灰のガローヌが会いたいと言ってきた。カーヴァン王国に本拠地を持つかなり大きな一派だ。行けば、最低でも五十人はいるだろう」

「……会いたい? どういうことだ」

ロックスが聞き返すと、カリラは皮肉めいた笑みを浮かべた。

「馬鹿デカい儲け話があるが、騎士団が動くかもしれない。分け前はやるから、人を貸して欲しい……そう伝えてみただけだ。嘘じゃないだろう?」

「どう考えても嘘ではないか」

「解釈の違いだな」

眉根を寄せるロックスにカリラが肩を揺する。

「それで、場所はどちらですか?」

尋ねると、カリラは路地の奥を指さした。

「詳細は知らんが、この奥の縄張りでガローヌの部下が待っているらしい。悪いが、王子様と騎士様は入れないぞ」

「……ならば、鎧を脱いでいけば良いだろう」

「フードを被ってもバレる。案内する前に顔は確認するだろうからな。黙って待ってろよ、王子様」

カリラにピシャリと否定されて、ロックスは苛立ちを顔に表した。だが、言い返すことも出来ず、ただ無言で睨み返すのみである。

そのロックスの背中を軽く叩き、私はカリラの方へ歩く。

「大丈夫です。私がきちんと話をつけてきます。安心してください」

「……どちらかというと、アオイ先生がやり過ぎないか心配なんだが……」

「きちんと手加減はしましょう」

答えると、ロックスが渋面となった。

そこへ、これまで静かに付いてきていたシェンリーとディーンが口を開く。

「わ、私達なら顔は知られてません。アオイ先生のお手伝いをします」

「え、ぼ、僕も?」

決死の顔のシェンリーと必死な顔のディーン。魔術の技術は上がってきたが、こんな殺伐とした現場には不向きだろう。

「シェンリーさんとディーン君はロックス君と一緒に建物の出入り口を見張ってください。もし戦いになる場合は大丈夫ですが、散り散りに逃げられると見逃してしまうことも考えられます。もし、裏口があったら、そちらの見張りもお願いします」

そう告げると、自らの力不足を認識してか、シェンリーは悔しそうに俯く。ディーンはホッとした顔をしていた。

それに微笑みながら、私はカリラと一緒に路地の奥へとつま先を向ける。

暫く歩いていくと、物陰から二人の男が現れた。

「……ネヴィス一家のカリラ・ネヴィス殿だな。隣の少女は?」

片方がそう尋ねると、カリラが不敵に笑って私を指さし、答える。

「これが儲けのネタだ。話はガローヌに会って話す。案内しろ」

強気にカリラが告げると、男達は顔を顰めるが渋々頷いた。

「……ついてこい」

そう言って、男達は前を歩き出す。カリラはそれに笑いながら私に付いてこいとジェスチャーを送り、歩き出した。

それから道を幾つか曲がり、これまでで一番細い道を進んだ。石畳は敷かれておらず、代わりに砂利が敷き詰められていた。かちゃかちゃという足音を立てながら、四人は通路の突き当たりまで向かった。

正面には少し暗い色の石壁があるだけだ。

「……行き止まりじゃないか」

カリラが怒ったようにそう言うと、二人の男が振り返った。

「ボスに会わせる前に安全確認するのが決まりだ。まずは、武器を預かる。次に、尾行がいないか調べる」

言われて、カリラは鬱陶しそうに背中から二本の曲剣を抜き、足元に落とす。

「馬鹿馬鹿しい。俺が来てんだ。部下が無茶しないようにするなら、単純に複数で俺を囲んでりゃ良いだけだろうが。脳みそまで灰になったのか、お前ら」

悪態を吐きながら剣を指さすカリラに、男達は舌打ちをして近づいて来た。

「……少数でも縄張りを認められたネヴィス一家だ。我々は過小評価などしない。特に、カリラ。お前の戦闘技術は一流だと聞いている」

「……そこの小さい女。武器を出せ」

そう言われて、私は両手の手のひらを見せる。

「武器はありません。剣も杖も持っていません」

言いながら一回転、その場で回る。

「……本当のようだな」

「よし、会わせてやろう」

男がそう言った直後、後ろから石と石が擦れる音が聞こえた。

振り向くと、そこには五人の図体のでかい男達がいた。二人は獣人のようだ。

「こっちだ」

五人の男の一人がそう言うと、足元の砂利を足で乱暴に払う。

現れたのは、小さな鉄板の蓋のようなものだった。

「ボスは、地下で待っている」