軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

武闘場3

重量のある刃物や鈍器を眺めて回り、一言呟く。

「……試合とは言っていましたが、殺し合いになりそうな武器ばかりですね」

そんな感想を口にすると、モアが真剣な顔で首を左右に振った。

「いえ、死者はまず出ません。そもそも、武闘場で戦えるような戦士は攻撃する術だけでなく、我が身を守る術にも長けている筈ですから」

モアはそう言って、自らの腰のあたりから手のひらサイズの短剣を取り出した。

「勿論、自分で武器を持ち込むのも問題ありません。たとえ試合といえど、常に実際の戦場を想定して戦う。それがブッシュミルズ皇国での考え方ですから」

そんなモアの言葉に、ロックスが目を瞬かせて口を開く。

「……それだと、とてつもなく強い魔術具を持ち込むのもアリってことか? それは流石に公平じゃないだろう?」

ロックスが尋ねる。それに、モアは首を左右に振って答えた。

「問題ありません。勝った方が強かったと誰もが納得するでしょう」

そんなモアの言葉に、ロックスは言葉も無かった。

「聞く限りだけど、一対一で戦う以外は本当に何でもありって感じだね」

ハイラムも呆れ顔でそう呟く。それに、シェンリーが不安そうに眉根を寄せた。

「……そんな恐ろしい戦い、やめておいた方が……」

シェンリーがこちらを見ながらそんなことを言う。誰かが怪我をすることを恐れたのかもしれない。しかし、パッと試合に参加する面々を眺め、首を左右に振った。

「いえ、私は問題ないと思います。私やオーウェン、グレン学長もそうですが、ストラスさんも身体強化の魔術師相手には有利に試合を展開できると思いますよ。フェルター君はそもそも、ラムゼイさん以外に負けるつもりは無いでしょう?」

「爺にも負けるつもりはない」

「そうでしたね」

フェルターが鼻を鳴らして強がる様を見て苦笑し、答える。グレンはとても嫌そうな顔をしていたが、ストラスは真剣な顔で頷いていた。オーウェンは壁に掛けられた魔術具らしき代物を見て回っている。

正直、よほどの相手でなければ良い勝負はできるだろう。

シェンリーに微笑を向け、顔の前で拳を作って答える。

「大丈夫です。もし、怪我をしてもハイラム君が治療しますから」

「え? 嘘でしょ?」

突然話を振られたハイラムが驚いて振り返った。

「どうせなら、癒しの魔術の練習をした方が良いでしょう?」

「……気絶だけにしてくれる?」

もうだいぶ慣れたのか、癒しの魔術を依頼されてもハイラムはすぐに軽口を叩いてきた。いや、顔は強張っているので本気なのかもしれない。切り傷や擦り傷くらいなら治せるはずだが、あまり自信はないのだろうか。

「まぁ、一人ずつ順番に戦うなら私とオーウェンが癒しの魔術を使うことが出来るので、そこまで心配しなくても大丈夫ですよ」

「……そう願ってるよ」

一応フォローはしてみたが、ハイラムは溜め息交じりにそう答えたのだった。それを見て、シェンリーが苦笑する。

「そ、そうですね……癒しの魔術もあるし、大丈夫ですよね」

シェンリーが自分を納得させるようにそう呟き、エライザが「あ」と声を上げた。

「どうしました?」

首を傾げてエライザを見ると、エライザは眉間に皺を寄せて口を開く。

「……もしかして、陛下たちもラムゼイ侯爵のように特別な魔術具を持ってたりして」

エライザのその言葉に、モアが答えた。

「はい。ラムゼイ様ほどではないかもしれませんが、最上級の魔術具が十。そして上級の魔術具が三十ほど発見されています。陛下は勿論ですが、マーティン様達もとても強い魔術具をお持ちです」

あっさりとそう答えられ、エライザとシェンリーの顔色が変わる。てっきり自らの拳や剣で戦うのかと思っていたが、魔術具による攻撃や強化も確実となってしまったからだ。

「だ、だだだ、大丈夫ですか!?」

「アオイ先生……」

一気に不安そうな表情になってしまった二人に、安心させようと笑顔を向ける。

「大丈夫ですよ。こちらも私やオーウェンが作った魔術具が使えますから」

「あ、そ、そうですね」

「確かに、それなら……」

と、私の言葉に二人はホッと胸を撫でおろす。先ほどから顔が赤くなったり青くなったりする二人に、ストラスが溜め息を吐いて口を開いた。

「お前たちが戦うわけじゃないだろう」

「そういう問題じゃないです!」

ストラスの言葉にエライザが両手を上げて怒った。その言葉にシェンリーも小刻みに頷いている。二人に責められるように見られて、ストラスは逃げるようにこちらに振り返った。

「……アオイの魔術具は俺も使えるのか?」

「簡単なものなら大丈夫かと思いますが……」

そう言ってから、腕輪を一つ取り出す。それを受け取り、ストラスは腕輪を顔の前に持ち上げて首を傾げる。

「これは、どういうものなんだ?」

その質問に、笑顔で応えた。

「真空の刃を発生させるものです。自分を中心に放射状に周囲へ見えない刃が飛びます。ドラゴンの胴体も両断できるほどの威力ですよ。ストラスさんは風が得意なので、使いやすいかと思って……」

「……いや、止めておこう」