軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アウォード・ヘーゼン・ブッシュミルズ

「アオイ・コーノミナトです。フィディック学院の教員をしております。この度は、謁見していただき感謝を」

「良い。用件を話せ」

きちんと挨拶をしようと思ったが、マッシュから遮られてしまった。だが、特に気を悪くしたわけではなさそうである。せっかちな性格かもしれないと思い、早々に用件を口にする。

「……そうですね。実は、私とオーウェンは魔法陣の研究をしておりまして、この王都近くにあるという遺跡に古代の魔法陣が描かれていると聞き、参った次第です」

そう告げると、マッシュは眉根を寄せて眉間に小さな縦皺を作った。そして、腕を組んで唸ってみせる。

「……ふぅむ、遺跡。古都の魔法陣のことか」

小さくそう呟くと、マッシュは難しい顔でこちらを見下ろす。

「……古都は、我が国の古い王都の跡地であり、重要な遺跡である。我が国の貴族であっても、一部にしか立ち入りを許可しておらんのだ」

と、マッシュは答えた。これにはオーウェンが黙っていない。

「む、それは困る。ここまで来たのだ。せめて、一目だけでも見せてもらえないか」

オーウェンは大国の王を相手にとんでもない物言いをした。それに頭を抱えていると、グレンが焦ったようにオーウェンの肩を叩く。

「これ、オーウェン。もう少し言い方を考えんか」

「む」

グレンに窘められて、オーウェンは不服そうに唸った。そんな失礼な態度に、後方でモアが悲鳴を呑み込む声が聞こえた。周りの兵たちは表情を変えた気がするが、幸いにもマッシュが怒り出すことはなく、安心する。

そんな様子に苦笑しつつ、ラムゼイが口を開く。

「王よ。せっかく来てくれたのです。少しくらい良いではありませんか。グレン侯爵とアオイ殿の性格は承知しているが、悪いことを企むような人間ではありませんぞ」

ラムゼイはそう言ってアウォードを見上げる。それに、マッシュはしばらく考えるような素振りを見せ、やがて腕を組んで顔を上げた。

「……仕方がない。それでは、戦士の儀式を行うとしよう。勝てば、特例として遺跡に立ち入る許可を出すぞ」

そう言って、マッシュはちらりとこちらを見た。それに、ラムゼイが困ったように笑う。

「……陛下。つまり戦ってみたいだけでは?」

ラムゼイがそう尋ねると、マッシュは声を出して笑った。

「わっはっは! さぁ、どうする? グレン殿だけでなく、アオイ殿も戦って証明せねばならんぞ?」

マッシュの言葉に首を傾げていると、後ろからモアがこっそりと教えてくれた。

「戦士の儀式とは、王の前で戦いを披露し、実力を認めてもらった者は相応の願いを叶えてもらえるという儀式でして……」

「つまり、陛下と……?」

モアの言葉に驚いて聞き返していると、マッシュが笑みを浮かべて口を開く。

「そうだ。折角だから、今度の武闘大会の景気づけに五対五で戦ってみらんか?」

「……五人、ですか」

マッシュの提案を聞き、そっと自分たちのメンバーを確認する。マッシュの実力がもしラムゼイと同等なら、戦えるのは私とオーウェンしかいないかもしれない。それに、他の出場者もブッシュミルズ皇国屈指の強者が並ぶのだとしたら、かなり厳しい戦いとなるだろう。

「……五人だと、こちらは私とオーウェン、グレン学長、ラムゼイさん、ストラスさんの五人になりますね」

そう告げると、グレンが顔を青ざめさせて口を開く。

「わ、わしも戦うのかの? ラムゼイ侯爵が出るなら、モア君でも良い気がするんじゃが……」

「え!? わ、私ですか!?」

グレンが苦笑いしながら名前を出し、モアが慌てて顔を上げた。慌てふためく皆を眺めていると、マッシュが鼻を鳴らして片手を左右に振る。

「それは面白くない。ラムゼイは我が国の貴族だ。その部下であるモアも同様である。それならば、こちらは余とラムゼイ、マーティン、ニニック、プルトニーの五名としよう。モア。お前は立会人だ」

「は、ははっ!」

マッシュにそう言われて、モアは恐縮しながら頭を下げた。どうやら、ラムゼイもモアもメンバーには選べないらしい。そうなると、こちらのメンバーは……。

「……俺が出るぞ」

振り返ると、すぐにフェルターが力強い目でそう言った。

「……しかし、フェルター君は生徒ですし、それにラムゼイさんの実の子になりますから……」

相手側になってしまうのではないか。

そう思ったが、マッシュの反応は違った。

「おお! フェルターとは、ラムゼイの子のフェルターか! 久方ぶりだ! これは、中々強そうになったな。よし、特別にそちらのメンバーとして認めてやろう。その実力を見ておきたい」

マッシュは嬉々としてそう言うと、フェルターの参加を認めた。どうもこの王は自分が面白いと思う方向に物事を進めたがる気がしたが、国の運営は大丈夫なのだろうか。