軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ケアン侯爵家3

「……ここがフェルター君のお家ですかぁ」

「家、というか城だがな」

エライザの呟きに律儀に突っ込むストラス。それに苦笑するシェンリー。三人とも家は普通なのだろうか。そう思っていると、ロックスとハイラムは遠目から城を見上げて雑談していた。

「黒い城ってのは見た目的にも威圧感を与えて良いかもしれんな」

「そう? 僕は戦争でのことより普段の景観の方が重要だと思うけど……」

と、二人は呑気な会話を繰り広げている。対して、城主であるラムゼイはそんな会話など聞こえておらず、フェルターを放置してグレンと雑談をしていた。

「ラムゼイ殿はいつも元気そうじゃのう」

「そうか? ふむ、グレン殿も元気そうで何よりだ。それにしても、我が領地に来られるのは久しぶりではないか?」

「そうじゃったかのう?」

そんな平和な会話を聞き、オーウェンが段々とソワソワしてきた。こと魔術、魔法陣においては極端に我慢が出来ない男である。

仕方なく、ラムゼイに対して口を開く。

「すみません、ラムゼイさん」

「む?」

声を掛けると、ラムゼイは片方の眉をあげて振り返る。フェルター以上のふわふわの髪と獣の耳が揺れて可愛らしい。

私はオーウェンを指差し、状況を説明した。

「本当は正規の手続きをして謁見を申し込もうと思っていたのに、うちのオーウェンが我慢できずに……」

「ふむ、まぁ良かろう。今回はもう長い間攻められることがなかったこの街が攻められたとしたら、という訓練だったことにしようではないか。事実、中々出来ない防衛訓練になったと思うぞ」

そう言って、ラムゼイは肩を揺すって笑う。そして、すぐに口の端をあげて目を細めた。

「……ところで、あのエルフの御仁は、もしやアオイ殿の婚約者なのか?」

「え? いえ、そんなことはありませんが」

ラムゼイの予想外の疑問に驚いて否定する。すると、ラムゼイは首を傾げて眉根を寄せる。

「むむ? それにしては仲が良く見えるな」

どこを見てそう思ったのか、ラムゼイは再び妙なことを口走る。それを不思議に思いながら、改めて回答した。

「多分、オーウェンが私の師匠だからでしょう。仲が悪いわけではありません」

「おお! アオイ殿の師匠とは! そういうことだったか」

ラムゼイは驚きつつ、笑顔でオーウェンの様子を眺めた。そして、大きく頷いて口を開く。

「ふむ、それなら良かった。フェルターも頑張りがいがあるな!」

「え?」

よくわからないことを言って声を出して笑うラムゼイ。それに首を傾げ、どういう意味かと聞き返そうと思ったが、それはフェルターに妨げられた。

「……話が長い。用件を聞け」

フェルターが仏頂面でそう告げると、ラムゼイは不敵な笑みを浮かべて肩を竦める。

「ほう。そういえばそうだな。して、用件とはなんだ」

ラムゼイにそう言われ、生徒達に見せる為に用意した魔法陣を記した紙を取り出した。

「本日は、ブッシュミルズ皇国にこのような魔法陣が記された古代の遺跡があると聞きまして、それを見ることが出来たらと思って参りました」

そう答えると、ラムゼイは腕を組んで魔法陣を眺める。

「ふぅむ……はて、どこかにこんなものあったか?」

予定外のラムゼイの言葉。これにはオーウェンの目が吊り上がる。

「なに? もしや、場所が分からないのではないか?」

急に口を開いたオーウェンに、近くにいたグレンが両手の手のひらを向けて苦笑した。

「まぁ、落ち着くのじゃ。とりあえず、他にも聞き込みをすれば誰か知っておるじゃろうとも」

「ぬぅ……」

グレンに諭されてしまったオーウェンは深く息を吐いて首を左右に振る。不服そうではあるが、とりあえず黙らせることには成功した。その様子を横目に見ながら、フェルターに声を掛ける。

「ほかに、一緒に行った人はいますか?」

「……どうだったか。少し記憶を探ってみるとしよう」

フェルターが険しい顔でそう答え、ラムゼイが顔を上げて口を開いた。

「ちょ、ちょっと待て。それならフィオールに聞いてみるとしよう」

ラムゼイは自らの妻に確認すると口にする。

「確かに。フィオールさんならしっかり覚えていそうですね」

「む……う、うむ」

同意したつもりだったが、ラムゼイは複雑な表情で返事をした。言い方が良くなかっただろうか。そう思ったが、フェルターは気にせずに城を指差す。

「なら、すぐに行くぞ」

「うむ」

フェルターの発言に一番にオーウェンが答えた。そして、フェルター、オーウェンがさっさと城の入り口を目指して歩いて行き、これまで静かにしていたストラス達が乾いた笑い声を上げる。

「……ブッシュミルズ皇国の大侯爵を相手に雑すぎないか」

「流石に怖いです」

「……国際問題にはしないでほしいのだが」

そんな声に、グレンが困ったように笑いながらラムゼイを振り返った。

「すまんのう。悪気は無いんじゃが……」

グレンがそう言って軽く謝ると、ラムゼイは面白そうに笑う。

「良い良い。こんな客人は久方ぶりだ。楽しませてもらったぞ」

そう言って笑うラムゼイ。それには流石に上級貴族としての器の大きさを感じる。遠目から様子を見ながら怯えていたモア達も、ラムゼイの笑顔を見てホッと一息吐いている。

しかし、後でオーウェンはきちんと叱っておこう。普通なら大問題である。