軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アオイの講義②

魔法陣の講義が進み、少しずつ生徒達の理解が進んできた。平面の簡単な魔法陣ならば、大半が魔力を流せば発動させることが出来るようになっている。初級も初級とはいえ、短期間とは思えない成果だろう。

むしろ、私が魔法陣を学んだ時は最初が一番時間がかかったと言っても良い。回路をイメージして魔力を流してみたりもしたが、どうにも理屈が違う。いや、最終的には間違っていなかったと再確認できたが、習い始めた当初は本当に雲を掴むような気持ちだった。

「オーウェンより私の方が教えるのが上手なのでしょうか」

「馬鹿を言え」

苦笑交じりに呟くと、隣に座るオーウェンが腕を組んで鼻を鳴らした。そして、魔法陣を新しく描いてみたり、作った魔法陣の構造を確認している皆を眺め、口を開く。

「……数十人に同時に教えるということが良い効果を生んでいるとみるべきだろう。優秀な教員と生徒が同時に学ぶ中で、最初に気付きを得る者がいる。皆が同じ段階にいるのだから、そこで何が正しかったのか。どこが間違っていたのかを共有できる……これは最高の情報となるだろう」

「なるほど。それは確かに」

珍しくオーウェンが口にした言葉が納得できるものだった。いや、魔法陣に関してはオーウェンも変なことはあまり言わないのだが。

「……何故か微妙に腹立たしい気持ちになるな。なんだ、その目は」

「いえ、流石はオーウェンです。ならば、誰かが躓いたところを記録しておけば、今後は更に魔法陣の講義が充実していきますね」

「そうだな。何が分からなかったのか。その時にどこを修正したことで問題解決に至ったのか。それを記録して、次の講義の時にそのことを交えて教える方が良いだろう」

そんなやり取りをしていると、ハイラムが出来たばかりの魔法陣を片手にこちらに歩いてきた。

「魔法陣の有用性は分かったけど、アオイ先生ってこんな魔法陣をいつも持ち歩いているってこと? 一枚一枚は薄くても、いろんな属性の魔術を使おうと思ったら大変じゃない?」

ハイラムからの質問が聞こえたのか、教員や生徒も何名か振り向いた。確かに、自分たちが魔法陣を実際に運用するならと思うと、気になるところだろう。

まだ皆に教えるという段階ではないが、それならばと魔法陣の実用段階のものを見せることにした。

「それでは、ちょっとだけお見せしましょう。ただ、ここまで精密に作れるようになるのは十年はかかるかもしれませんが……」

そう前置きして、空中に魔力を使って小さな立体魔法陣を展開してみせる。球状になった魔法陣で、表面だけでなく、内側には平面の魔法陣が十層も描かれている。詠唱一節一節が高度になってしまう為、魔法陣もそれだけ複雑になってしまうのだ。

その代わり、一度作ってしまえば魔力を流し込んで魔術名を口にするだけで、必要な魔力を持つ人物であれば誰でも魔術を発動させることが出来る。

「 炎環(ラウンドフレア) 」

出来たばかりの魔法陣を発動させると、空中に激しい炎の輪が生まれた。今は魔力量を抑えて最低限の大きさにしている状態で、直径三十センチほどだろう。

「この炎の輪は魔力量に応じて大きさを変えることが出来ます。大きくなればなるほど高温になる為、直径三メートルを超えたら石も溶かすことが出来るでしょう。ちなみに、私が発動する場合は最大で直径十メートル以上にはなります」

解説しつつ、皆に見えるように立体魔法陣を持ち上げて見せる。

「……大きいし大変そうだけど、それを補って余りある効果だね。そんな丸い球を持ち歩くだけで良いなら、誰でも喜んで持ち歩くよ」

ハイラムが呆れたような顔でそう口にするので、首を左右に振って一部を否定した。

「いえ、これは分かりやすいように大きく作っています。実際にはこの魔法陣が、この指輪についている宝石の中に仕込まれています」

「え?」

「なに?」

「なんだと?」

魔法陣を消して、代わりに右手を顔の高さに持ち上げて答えたところ、各所から疑問の声が上がる。そして、皆が私の手を見に集まってきた。少し恥ずかしい。

「……どこに、今の魔法陣があるだと?」

「まったく分からないんだけど」

ストラスとハイラムがもう一度疑問の声を上げた。それに頷いて答える。

「右手の人差し指につけている指輪ですね。あまり指輪自体を大きくしたくなかったので、今回は宝石部分を外に出しています。宝石が傷ついてしまうと魔法陣も効果を失う可能性があるので、本来なら指輪を大きくして内側に隠すように宝石を配置したりもしますね」

「……この、小さな宝石に、魔法陣が……?」

「え? 今の魔法陣がここに?」

困惑する二人の言葉に頷き、次はと左手を顔の高さに挙げて口を開く。

「こちらは水の魔術ですね。 乱水流(ウォーターパイル) 」

魔力を流しながら魔術名を口にすると、今度は左手に渦を巻く水流が生まれた。空中で渦を作る水の流れを見て、二人も絶句する。