軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドラゴンを売りたい

真っ黒な体。大きな一対の翼。そして、二本ずつの腕と脚。目の数は人間と同じく二つだが、指は四本だ。大きさも体長二十メートルを超えるだろう。亜種ではなく、純粋な飛竜の一種に違いない。

これまで討伐してきたドラゴンを研究したところ、小山のような巨大なドラゴンが最大の種で、比率的に翼はそこまで大きくない。ただ、目は四つあり、指は六本だった。一つ小さな種になると、翼が大きくて目は二つか四つ。指は五本である。それより小さなドラゴンは大体が目は二つ、指は四本となっていた。

オーウェン曰く、ワイバーンや大きなトカゲのようなドラゴンは亜竜種といって正式にはドラゴンではないとされているそうだ。ただ、それでも剣や弓矢のような通常の攻撃は簡単に弾いてしまう強さ、硬さを持つ。

ドラゴンの種類は多岐に渡り、大きな山の下に眠る地竜種で最も大きなドラゴンは全長数百メートルにもなるという。

それくらいのドラゴンを捕まえることが出来たら高く売れそうだが、まずお目にかかったことはない。いや、捕まえても運ぶのが大変そうなので、どちらにしても出品対象ではないか。

そんなことを考えていると、ドラゴンは翼を大きく広げて雄叫びを上げた。この辺りはグリフォンも一緒だったが、やはり自分を大きく見せながら威嚇するという本能だろうか。

オーウェンが言うには、大きさは関係無く、最上位のドラゴンは人間以上の知識を持ち、人間の言語を操る者もいるという。

ドラゴンは千年以上生きるらしいので、長寿のドラゴンはそんな風に進化していくのかもしれない。

残念ながら、目の前のドラゴンは通常のドラゴンのようだが。

ドラゴンは雄叫びをあげた後、姿勢を低くして突進でもしそうな体勢となる。物理的な戦いを挑もうとしているようだ。

「それなら…… 氷の要塞(アイスバロック) 」

呟くと、きらきらと陽の光を乱反射させてダイヤモンドダストがドラゴンの周りを舞った。

次の瞬間、ドラゴンは不規則に絡まり合った氷の柱や壁などによって捕らえられる。瞬時に大きなドラゴンの体を覆うほどの氷の牢獄が出来上がった。

ドラゴンは氷の牢獄を力尽くで破ろうと腕と尾を振るが、簡単には壊れない。激しい音と振動が空気を伝わってくるだけだ。

「これで捕まえられるなら、思ったより……」

そう口にした瞬間、ドラゴンは動きを止めて首を挙げて背中を仰け反らせ始めた。そして、口を微かに開き、首を震わせる。

「あ、まずいですね」

ドラゴンの口の中から青い火の粉が見え始めた為、身を守る為の魔術を行使する。

「 岩山籠(ブルックロック) 」

ちょっとやそっとでは砕けないような巨大な岩の壁だ。これなら大丈夫だと思ったが、壁の奥で激しい炎が吹き上がるのを見て、考えを改める。

あまり大きくないドラゴンだから甘く見ていたのかもしれない。ブレスの強さは想定以上だ。岩の壁の端の部分が融け始めている。あの熱量ならば、氷の牢獄などあっという間に溶かされてしまっただろう。

周囲の森が燃えてしまわないように、一応上空から魔術を使うとしよう。

自然に配慮して、私は飛翔魔術を使って空に移動した。ちょうど良いタイミングで、ドラゴンは激しく損傷した岩の壁を体当たりで破壊していた。私が立っていた場所に人の身長よりも大きな岩の破片が幾つも突き立っている。

ドラゴンは私の姿が見えないことに気が付き、右、左と顔を動かして、すぐに上空へと顔を向けた。まさかそんなに匂うわけではないだろうが、何かの気配を感じたのだろう。

こちらの居場所に気が付いてすぐにドラゴンは口を僅かに開け、再び青い火の粉を口から洩れ出させ始めた。

「させません」

ブレスを放つ前に先手を打つ。

「 凍土の銀槍(カシウス) 」

全力で魔力を込めて氷の魔術を発動した。片手をドラゴンに向けて突き出すと、腕の周りを真っ白な雪が舞い、すぐに手のひらの先に三角錐状の塊が出現する。氷の塊は周囲の水分を全て凍らせて白い帯を残しながら、ドラゴン目掛けて飛来した。

槍は一撃でドラゴンの首を斜めに切り裂き、両断する。通常であれば槍が触れた箇所は凍り付くが、ブレスの炎が首の断面の氷を解かしてしまい、周囲に溢れ出た。

青い炎が地面を焼き尽くさんと広がり始めたので、慌てて消火活動に入る。

結果、消火されるまでの数分間、半径二十メートル四方の木々や草花が炭と化してしまったのだった。

「獲ってきました」

「……っ!!?」

少々大きかったが、オークションで高値で売れるかもしれないと思って姿のまま持ち帰ってきた。学院の中庭に降り立ち、校舎の方から走ってきた教員や生徒達の中からエライザとストラスを発見して報告する。

「ど、ドドド……!?」

「え!? 死んでる!? もしかして、生きてる!?」

唖然とする教員達に対して、生徒達は声が裏返るほどの大声で騒ぎ始める。

「お静かにお願いします。中庭とはいえ、学院の中ですので」

教員として注意くらいはしておこうとやんわり告げたのだが、ストラスから凄い目で睨まれた。

「騒ぎの原因がなんだと思っている?」

「……このドラゴンが原因ですか。お騒がせしてすみません」

慌てて頭を下げて謝罪する。

そこへ、凄い勢いでグレンが空を飛んできた。

「うぉほほほう! これまた綺麗な状態のドラゴンじゃあ!」

既にテンションは上がり切っている。中々綺麗なターンをしながら着地したグレンは、ドラゴンの顔の近くに言って状態を見た。

「首を一撃かのう。凄いのう。わしもドラゴンは何頭か仕留めてきたが、これほど見事に仕留めたことはないぞい」

と、グレンが評する。首は凍らせて元通りの形に見せていたのだが、流石だ。

「これでしたらオークションで高値がつくでしょうか」

グレンにそう尋ねると、笑い声が返ってきた。

「ほっほっほ! そりゃあ目玉が飛び出るくらい高いぞい! この規模なら金貨千枚以上にはなるじゃろうなぁ」

グレンがそう言うと、生徒達がお祭り状態となった。

「おお!」

「金貨千枚!?」

凄い凄いと騒いでいるが、それでは足りないかもしれないのだ。

「珍しい魔術具を購入したいと思っているので、もう少し大きなドラゴンを狩ってきましょう」

そう告げると、グレンが目を丸くする。

「ちょ、ちょっと待つのじゃ。一つの山脈にドラゴンは十数頭が精々じゃ。余程深い森と山々があるならば、百頭以上棲息する山もあるじゃろうが、普通はそんなにおらん。その地域のドラゴンを一気に狩ってしまうと、近隣の生態系が崩れて森の外、下手をしたら街道まで魔獣が現れるなんてことも起きてしまうぞい」

「え? ドラゴン数頭でですか? グランドバジリスクとかなら分かりますけど……」

「そんな神話に出てくる魔獣などと比較してはいかんぞい……え? 実際に遭遇したわけじゃないんじゃよな? 神話のやつじゃもん」

グレンが何か言っているが、ドラゴンを複数狩るのは他所に迷惑をかけてしまうと聞き、頭を悩ませる。

すると、エライザが片手を挙げて口を開いた。

「やっぱり、グレン学長に借りましょう! 二日でドラゴンを狩って帰って来るんですから、アオイさんなら必ず返済できますし!」

エライザがそんなことを言うと、後ろの方で「おい、二日って……」「なんか、常識が崩れてきたぞ……」なんて声が聞こえてきた。

一方、グレンは言い難そうに眉根を寄せて肩を落とす。

「それは、残念ながら無理なんじゃよ。お金、あんまり持っておらんのじゃ」

聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声でグレンが呟くと、エライザが笑顔で首を傾げた。

「え? なんですか?」