軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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舞踏会の日から私の周辺で変化があった。

まずエルネストがアンナさんといる場面がとても減った。生徒会の仕事がない時は、放課後すぐに帰宅し騎士団の新人練習に参加しているようだ。

その為、学年の違うアンナさんとは会う時間が無くなってしまったのかもしれない。

ただ学園で顔を合わせた時は、いつものように明るい笑顔を向けてくれることは変わらない。

先日エルネストに会った際、どうしたのか尋ねると、「自分の甘さを突きつけられてしまったよ」と苦笑いしていた。

また「今は自分の将来の為に頑張らないと。ラシェルにも迷惑かけてごめんな」と寂しそうに笑った。

エルネストは言葉を曖昧に濁して私に答えた。

その為詳しいことは分からないし、あえてそこを聞き出そうとは思わない。

でも一つ分かることがある。

エルネストの顔つきが前とは少し変化したということ。何があったかは分からないが、エルネスト自身も何かに葛藤し、立ち向かっているのかもしれない。

そこは私が土足で立ち入るべきではない、そう思った。

もしかしたら、私の知らない所でアンナさんと何かあったのかもしれない。

それとも、殿下と何かあった⋯⋯そうとも考えられる。

そして、そのアンナさんも私や殿下に話しかけることがなくなった。

隣のクラスなので合同授業もあるが、今までと違い私を視界に入れても、すぐにあの明るい笑顔で声をかけられることがない。

そう、不自然なぐらいに。

彼女との距離感に戸惑っていた私は、どこかほっとしてしまった部分もある。

そこで気がついたことがある。

前回の彼女への行いから、つい彼女に対しては罪悪感が表に出ていた気がする。

だからこそ、令嬢として目に余る部分であっても注意はしなかったし、彼女は私よりもよっぽど優れた人物という考えばかりが過ぎっていた。

だが少し違うのかもしれない。

殿下もそうであったように、前回とか今回とか関係なく、彼女自身をしっかりと見る必要がある。

何と言っても、やはり彼女に関しては違和感が徐々に強くなっている。

もしかしたら、私と同じように彼女も過去の記憶がある?

とも考えた。

だが、そうなると前回の彼女と今回の彼女は全く繋がらない。

あのニコニコとした笑顔の中で、彼女は何を考えているのだろう。

その疑問だけが私の中で何度もグルグルと駆け巡るのみだ。

それでも、最近の私の学園生活はとても穏やかで順調な日々を過ごしている気がする。

授業は面白いし、仲のいい友人もいる。今までの学園生活では得ることが出来なかったものが、ここにある。

そして今日は放課後、一人で屋上庭園に来ていた。

殿下の言っていた通り、ここは本当に人があまり来ない。その為放課後に予定の無い日はここで本を読んだり、予習復習をしたりとしている。

時々殿下と会う時もあり、その時は僅かな時間を一緒に過ごすことが出来る。

「ラシェルさん」

本に没頭していたからだろうか、誰かが側に来たことに気がつかなかった。

私を呼ぶ声にドキッとする。

ゆっくりと振り返ると、にっこりと笑ったアンナさんの姿。

「アンナさん、どうされました?」

「ここ、いいですか?」

そう言うと、私が座るベンチの隣を指差す。

「えぇ、どうぞ」

「ありがとうございます。

何だか久しぶりな気がしますね」

「そうですね。元気にしていましたか?」

私の問いに、アンナさんはどこか気まずそうな苦笑いを浮かべ肩を竦めた。

「デビュタントの日のこと。父に怒られてしまいました。ラシェルさんにもご迷惑をおかけしてしまって、本当にごめんなさい」

「いえ」

「全く周りが見えていなかったように思います。

こんなことラシェルさんの前で言うのもおかしいと思いますけど。

殿下と踊らないとって、それしか考えられなくて」

「⋯⋯そ、そうなの。デビュタントですものね」

アンナさんの真っ直ぐな物言いに、何と言っていいのかが分からなくなる。

⋯⋯正直言うと、婚約者に言ってはいけない言葉だと思う。

だが彼女は本心から謝っているように思うし、確かにデビュタントの日については彼女は淑女としてしてはいけないことをしてしまった。

それでも今反省しているのであれば、今後は変わっていくのかもしれない。

人がいくら言っても、自分が変わろうと思わなければ何も意味がない。

それは自分がよく知っている。

「それともう一つ、謝らないといけないことがあるんです」

「え?」

もう一つ?

アンナさんはいつもの微笑みを浮かべることなく、何処を見ているのか分からない瞳で、ただ遠くを眺めている。

いつもと違う?

何だろう、このモヤモヤする気持ち。

アンナさんを目の前に、突然湧いたような言いようのない不安に私は戸惑いを覚える。

「意味が分からないと思うんですけど、私今までストーリーに拘っていた所があって⋯⋯。

でもそれは難しそうなので」

「えっと、あのアンナさん?」

「結局、ハッピーエンドにさえなればいいのかなって。そうすれば、クリアかなって思うんです」

「⋯⋯何をおっしゃっているの?」

「思い通りにいかないから戸惑ってたけど、どう頑張っても殿下もあなたもちゃんと動いてくれないから」

何?

動いてくれない?

私が何度も戸惑うように尋ねた言葉も、アンナさんには聞こえていないようだ。

「個人的にはラシェルさんと殿下のルートがあってもいいとは思います。でも、私も可能性があるならそれに賭けないと後悔するから」

これは⋯⋯誰?

何を言っているの?

「だから、あなたには⋯⋯ごめんなさい」

アンナさんはそれだけ言うと、またにっこりと笑い「では、失礼します」と可愛らしく頭を下げると、呆然としている私の前を颯爽と過ぎ去った。

その時に、「⋯⋯ってキャラに言っても仕方ないか」と意味の分からない言葉をボソッと呟く声だけが僅かに耳に入った。

何だったの。

何が言いたかったの。

ルート? キャラ?

⋯⋯初めて聞く言葉。

あの人は⋯⋯本当にあの聖女の名前の如きアンナ・キャロル?

⋯⋯それとも、本当は違う誰かなのだろうか。

私は考え込んだまま、その後夕日が沈みかける頃までそのベンチで動くことが出来なかった。