軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第94話 皇子の秘めた想い

王都の夜は、静かに闇を広げていた。

宮殿の塔から見下ろす街並みは、まるで小さな模型のように整然と輝いている。

私――アルヴェルトは、深い書斎の机に座り、心の奥に秘めた思いを反芻していた。

レスティーナ・フォン・グランテ――北方領の若き領主。十三歳。

あの少女は、他の誰とも違う。理知的で、落ち着きがあり、そして優れた判断力を持つ。

私の領地の視察に訪れたときの彼女の仕事ぶりは、まさに模範的だった。

私は、思わず胸の中でつぶやく。

(この人を、皇妃として迎え入れたい……)

だが、冷静になると、まだ時期ではないことを悟る。

私はまだ十三歳。政治的決定を下すには未熟すぎる。

しかもレスティーナは、私に恋心を抱いている様子は一切ない。

彼女はただ、良き主君としての私を評価しているだけ――その事実を、私は知っている。

深く息をつき、机の上の手紙を手に取る。

北方領から届いた報告書には、街の人口、商業施設の発展、都市のインフラの整備状況が詳細に記されている。

レスティーナは、私が思った以上に着実に都市を成長させていた。

その報告を読むたび、私は胸が熱くなるのを感じる。

(これだけの人をまとめ、街を育て上げる力……この人なら、私のそばにいても大丈夫だろう)

しかし、心の片隅で自制が働く。

まだ、私の想いを彼女に伝えるべき時ではない。

今、もし自分の感情を押し付けたら、彼女の仕事や北方領の秩序に悪影響を及ぼすかもしれない。

だから私は、心の中でそっと思うだけに留める。

夜の静寂の中、私は書き記す。

――レスティーナ・フォン・グランテへ。

君の働きと知恵に、私は深く感服している。

この街の成長は、君の努力の賜物だ。

まだ伝えるべきではないが、私は君を高く評価していることを、忘れない。

手紙を書き終え、私は胸の中で呟く。

(焦ってはいけない……だが、見守ることはできる)

レスティーナは、北方領で自らの力を使い、街を作り上げる。

その成長を遠くから眺めるだけでも、私は幸せを感じる。

彼女が困っていれば助け、街の発展が停滞していれば方策を考え、私ができる範囲で支える――

それが、今の私の責務であり、忍耐であり、そして秘めた想いを守る方法だ。

窓の外には、北方領からの便りに書かれていた街の灯が揺れて見えるような錯覚があった。

彼女は、確実に街を作り、経済を動かしている――私が想いを寄せる以前から、すでに立派な統治者として存在していた。

(私はまだ、伝えるべき時ではない……だが、いつか)

その言葉を胸に、私は机に肘をつき、夜の帳の下で深く考える。

未来――将来、皇妃として迎え入れるとき、彼女が自分の気持ちを私に向けてくれる保証はない。

それでも、私は待つ。焦らず、急がず、彼女の成長を見守りながら、機が熟すのを待つ。

書斎の外から、宮殿の警備の足音がかすかに響く。

私は手紙を封筒に収め、しっかりと封をする。

内容はまだ、公式には送られない――私の心の中でだけ、想いを伝えるために書かれたものだ。

そして私は、もう一度深呼吸する。

北方領レスティーナ・フォン・グランテ――君が気持ちを向けなくとも、私は君を評価し、支え、見守る。

私の想いは、まだ秘密のまま、静かに街の発展を眺めることになるだろう。

机の上に置かれた手紙を見つめながら、私は小さく笑った。

(今はまだ時期ではない……だが、いつか必ず、この気持ちを伝えるときが来る)

皇子として、未来の主君として。

そして一人の十三歳の少年として、私はレスティーナを見守り続けることを、ここに誓った。