軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第34話 北方開拓通販術

レスティーナは馬車の中で窓の外を眺めながら、脳内でググル先生と会話していた。

「ググル先生、北方領の詳細な現状を整理して」

『了解です。北方領の人口は現状五十人。農地の六割は放棄、森林は密集、寒冷地帯です。主要道路は荒廃。輸送は馬車と小型船が中心ですが、陸路は冬季に凍結の可能性があります』

レスティーナは軽くうなずいた。

(人の確保と農地復興を最優先にするわ)

「では、まず人員の誘導ルートを算出して」

『最適ルートは三つあります。北西の森林道、東の谷間、中央の旧街道です。全て公爵軍の監視を避ける形で到達可能です』

「了解。門は開放状態にする」

『効率的です。逃亡農奴が安心して流入できます』

馬車は帝都を抜け、北方の荒野へと進む。荒れた村々や放棄された畑が視界に広がる。レスティーナは窓の外をじっと見つめ、脳内で物流と人員のシミュレーションを開始した。

(まず食料と種子、工具、衣類を送る。次に労働力を受け入れ、農地を再生する。都市の建設も同時進行で…)

『配送ルートと資材量を確定しました。初回配送は五日以内に到着予定。農地用の種子、保存食、建材、工具、簡易医療品を優先します』

レスティーナは馬車の揺れに合わせて軽く笑った。

「冬でも作業可能ね」

到着初日、北方領の荒地はまだ静かだった。だが、遠く森の奥で小さな影が動く。

「人影です」

見張りの声に、レスティーナは城門を開ける指示を出した。

「公爵軍が目の前でも、農奴は安心して逃げ込める」

『人員到着の計算完了。第一波は二百人、次の波も随時誘導可能』

森を抜けて、農奴たちが町へ流れ込む。子供、女性、老人も含め、荷物を抱えて息を切らしながら走ってくる。

「門を開けて!」

兵が叫ぶと、重い木製の門がゆっくりと開いた。農奴たちは恐る恐る城内に足を踏み入れる。

レスティーナは脳内でググル先生と通信する。

(人数カウント)

『第一波、二百人到着。次の到着は三日以内に百五十人を予測』

「よし、すぐに宿舎を整えるわ」

まず簡易テントと倉庫を設置し、次に薪小屋を建て、農奴たちを受け入れた。生活に最低限必要な水と食料を確保し、衛生環境も整える。

物流は完全にネットショップ方式で管理される。資材の注文、配送、到着後の振り分けまで全てググル先生が計算する。

『次は農地です。耕作可能面積は旧村落の二割、周囲の荒地を整地すれば初期作付けは五十ヘクタール可能』

レスティーナは指を動かし、北方領の地図を頭の中で拡大する。荒廃した畑は区画整理され、どこに何を植えるか、収穫までのスケジュールも秒単位で計算される。

「小麦、ジャガイモ、耐寒品種を優先ね」

『配送は五日以内完了。農奴には作業手順を事前に教育済みです』

教育と作業の効率化は、ググル先生が設計したシミュレーションプログラムに従う。農奴は指示通りに働き、迷わず都市の再建に貢献する。

三日後、第一波の農奴たちは簡易宿舎で生活を始め、食料と水の分配もスムーズに行われた。レスティーナは馬車で周囲の地形を視察しながら、次の指示を出す。

「第二波の誘導を開始」

『了解。東の谷間を利用し、百五十人を安全に誘導します』

森の奥から煙が上がり、遠くで移動する人影が見える。逃亡農奴たちだ。レスティーナは笑った。

(都市はこうしてできていくのね)

城壁内では既に小さな市場が作られ、資材の分配所も設置済み。物流の流れは整理され、農奴たちは即座に作業に取りかかる。

「資材を倉庫に移して、次は耕作地の整地よ」

レスティーナは指示を出し、ググル先生が現場に最適な作業順序と人数配置を即座に算出する。

『耕地整備完了まで二日。小麦の初期播種は四日後、ジャガイモは六日後』

物流、労働力、作付け。全てが計算され、都市としての機能が少しずつ形を成していく。

レスティーナは馬車から降り、整備中の広場を歩く。逃亡農奴たちが働く姿を眺めながら、次の指示をググル先生に出す。

「小屋の追加、井戸の増設、簡易市場の拡張」

『全て計算済み。次回資材配送で即座に対応可能』

夕日が荒地をオレンジ色に染める。北方領の荒野は、少しずつ都市の形を帯び始めていた。

レスティーナは深呼吸をひとつし、脳内でググル先生に確認する。

『初期人口:三百五十人。目標五百人まであと百五十人。タイムライン通りです』

「よし、都市化計画は順調ね」

北方開拓都市は、人工知能の知恵とネットショップの物流力をフル活用することで、かつてない速度で再生を始めていた。

逃亡農奴たち、資材、農地整備、都市機能整備。全てが、レスティーナの指示一つで動く。

北方領の荒野に、少女の計画が静かに、しかし確実に根を下ろしていった。