軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第117話 二つの玉座、ひとつの意思

即位の日。

帝都は、かつてないほどの熱気に包まれていた。

王城の鐘が鳴り響き、

広場には人が溢れ、

そのすべてが一つの瞬間を見届けようとしている。

玉座の間。

重厚な扉が開かれる。

視線が一斉に向けられる中、私は歩みを進める。

隣には――

皇帝。

かつて“皇子”と呼ばれていた存在。

そして今。

この国の頂点に立つ者。

私はその一歩後ろではなく。

「隣」に立つ。

それが、私の立場。

皇妃。

だがそれは飾りではない。

「……始まるな」

小さく呟く声。

皇帝のものだ。

私はわずかに頷く。

「ええ」

儀式は厳かに進む。

宣誓。

戴冠。

そして。

国の未来を背負う者としての覚悟が、形式として刻まれていく。

だが。

本当の意味での“即位”は。

この後だ。

数日後。

最初の政務会議。

皇帝即位後の初会合。

円卓に並ぶのは、帝国の中枢。

宰相。

将軍。

財務官。

そして有力貴族。

その中心。

皇帝と――

私。

「では始める」

皇帝の一言で、会議が動き出す。

最初の議題。

「戦後処理」

スー公爵家の粛清により空白となった権力層。

それをどう再編するか。

「新たな公爵家の選定を」

宰相が言う。

だが。

私は即座に否定する。

「不要です」

視線が集まる。

「権力の集中は、再び歪みを生みます」

「分散と監視体制の構築を優先すべきです」

「しかし前例が――」

「前例が国を救いましたか?」

遮る。

沈黙。

皇帝が口を開く。

「皇妃の案を採用する」

即断。

異論は出ない。

出せない。

なぜなら。

それが“正しい”と理解しているから。

次の議題。

「経済再編」

私は資料を広げる。

「北方領・南方都市・帝都」

「三拠点連携による流通の最適化を提案します」

商会。

領地。

すべてが繋がる。

「既存の商人たちの反発が予想されます」

「ならば利益を提示します」

即答。

「独占ではなく拡大」

「全体の利益を増やせば、抵抗は減ります」

皇帝が頷く。

「進めろ」

会議は続く。

軍備。

教育。

法整備。

すべてにおいて。

私は発言する。

そして。

皇帝は判断する。

それは上下ではない。

役割分担。

会議終了後。

人が去り、静寂が戻る。

「……容赦ないな」

皇帝が言う。

私は肩をすくめる。

「必要なだけです」

皇帝は小さく笑う。

「助かる」

短い言葉。

だが。

信頼がある。

数ヶ月後。

帝国は変わり始めていた。

貴族の権力は再編され、

経済は安定し、

地方と中央の連携も強化される。

「……順調ですね」

私は報告書を閉じる。

皇帝は頷く。

「お前のおかげだ」

私は首を振る。

「違います」

「“二人”だからです」

沈黙。

そして。

皇帝は静かに笑った。

夜。

王城のバルコニー。

帝都の灯りが広がる。

無数の命。

無数の生活。

「……守れているな」

皇帝の声。

私は頷く。

「ええ」

そして。

少しだけ、視線を横に向ける。

隣にいる。

同じ高さで。

同じ景色を見ている。

それがすべて。

「これからも忙しくなるぞ」

皇帝が言う。

「望むところです」

即答。

短い沈黙。

「……後悔はないか?」

ふとした問い。

私は少しだけ考える。

そして。

「ありません」

選んだ道。

選んだ立場。

そして。

選んだ相手。

すべて、自分の意思。

だから。

迷いはない。

風が吹く。

帝都の灯りが揺れる。

物語は終わっていない。

むしろ。

ここからが本番。

だが。

それでいい。

私は前を向く。

皇妃として。

統治者として。

そして。

隣に立つ者と共に。

この国を、未来へ導くために。