軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第114話 国家を動かす者の決着

帝都は、静かに狂い始めていた。

それは目に見える混乱ではない。

だが確実に、深く、逃れようのない形で――

「侵食」されていた。

最初は微細な違和感。

物資がわずかに滞る。

価格が理由なく揺れる。

人の配置が、意図的にずらされる。

そして。

「……複数の貴族家が、不可解な連携を取っています」

報告を受け、私は静かに目を閉じた。

「中心は?」

「スー公爵家です」

――確定。

メアリー。

そして、その後ろ盾。

スー公爵家。

帝国の上層に深く食い込んだ存在。

それが今、国家そのものを歪めている。

「……皇子へ」

「すでに」

短いやり取りで、すべてが伝わる。

今回の戦いは、個人では終わらない。

国家を巻き込む。

否。

国家そのものの“意思”として処理する必要がある。

王城。

執務室。

皇子は窓辺に立っていた。

「来たか」

振り返るその目は、すでに覚悟を決めている。

「状況は」

「内部侵食。経済・人事・情報、すべてに干渉」

「黒は」

「メアリー、及びスー公爵家」

沈黙。

重い。

だが迷いはない。

「……証拠は揃っているか」

「十分に」

だが、それを出せば。

「国家は揺らぎます」

皇子はゆっくりと息を吐く。

「ならば」

顔を上げる。

「揺らぐ前に叩き潰す」

決断。

王としての。

数日後。

帝都に布告が走る。

王家直轄監査。

対象――全貴族。

例外なし。

ざわめきが広がる。

だが拒否はできない。

それが王権。

絶対の命令。

メアリーはその報を聞いて、微笑んだ。

「……ついに来たのね」

恐れはない。

むしろ歓迎。

なぜなら。

彼女もまた、国家を掌握する準備を終えていたから。

「正面からなら、潰せる」

自信。

揺るがない確信。

そして。

王城・大広間。

貴族たちが集められる。

前回とは違う。

これは裁判ではない。

「国家の選別」

皇子が前に立つ。

その一歩だけで、場が静まり返る。

「本日、国家に対する重大な背信行為について処理を行う」

宣言。

「メアリー・スー公爵令嬢」

名が呼ばれる。

彼女は優雅に前へ出る。

完璧な所作。

崩れない笑み。

「何かしら?」

余裕の声音。

私は前に出る。

「あなたの構築した影響網、すべて把握しています」

空気が変わる。

「証明を」

当然の要求。

「あります」

合図。

扉が開く。

次々と入ってくる人影。

貴族。

商人。

官僚。

そして。

――スー公爵家の関係者。

「……なぜ」

メアリーの目が揺れる。

あり得ない。

完全に掌握していたはずの駒たち。

「恐怖は、支配を長続きさせない」

私は静かに告げる。

「裏切りを生むだけです」

皇子が前へ出る。

その声は、絶対。

「王家の名において断ずる」

空気が凍る。

「メアリー・スー公爵令嬢」

「並びにスー公爵家」

家名ごと呼ばれる。

それが意味するもの。

――連座。

「国家権力の不正掌握、及び内政攪乱」

「さらに国家転覆未遂の罪により」

一語一語が重く落ちる。

「爵位剥奪」

「全財産没収」

そして。

一瞬の静寂。

「一族、公開処刑とする」

絶対の宣告。

時間が止まる。

メアリーの思考が、崩れる。

「……は?」

理解が追いつかない。

「そんな……」

声が震える。

初めて。

明確に。

「私は……完璧にやったはず……」

崩れた理論。

崩れた支配。

私は答える。

「国家は、一人で支配できるほど単純じゃない」

衛兵が動く。

メアリーは抵抗しない。

できない。

すべてを失ったから。

数日後。

帝都中央広場。

人が集まる。

貴族も平民も。

すべてが見届けるために。

壇上。

メアリー。

そしてスー公爵家。

その顔は蒼白。

だが。

メアリーだけは違った。

最後まで、諦めていない。

「……まだ」

小さく呟く。

だが現実は変わらない。

罪状が読み上げられる。

国家反逆。

そして。

刑の執行。

その瞬間。

メアリーは顔を上げる。

視線の先。

レスティーナ。

「……あなた、だけは」

言葉は最後まで続かない。

すべてが終わる。

帝都に静寂が戻る。

歪みは消えた。

完全に。

皇子が隣に立つ。

「これで終わりだ」

「ええ」

短い言葉。

だが十分。

これは個人の勝利ではない。

国家の勝利。

秩序の勝利。

そして。

「統治する者の責任」

その結末。

私は静かに空を見上げる。

世界は、続く。

守られたまま。

これからも。