軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪意は形を持ってやってくる

「では、これより双方同意の元「守人」のトップを賭けて決闘を開始する。双方共相違ないな?」

「はい」

「あぁ」

サローナさんとガズナの間に歩いてきたナイスミドルなエルフさんが現れて2人に最終確認を取っていた。ユユナ、ルルナに聞くとどうやらここの里長とのこと。貫禄ありますね、里長さん。

「うむ、これよりこの場に結界を張りその中で勝敗をつけてもらう。また他の者が手を出さぬよう結界は侵入不可であり、勝敗がつくまで双方出ることは出来ん。勝敗のつけ方は2人が決めなさい」

「私は負けた方が里を出ると条件がついた以上、お前の命を取る気はない」

「あぁ、俺だって別に命なんか欲しい訳じゃねぇよ。ならそうだな心が折れた方、古典的だが「まいった」と言ったら負けでいいんじゃないか?」

「あぁ、それでいい」

それだけ言うと、2人はそれぞれ武器を取り出した。

サローナさんは、あの立派な宝飾のナイフを、ガズナはどうやら長剣を使うようだ。サローナさんのナイフとまではいかないがそこそこの宝飾が施されている。

2人が武器を構えると、それを確認した里長は周りの輪の最前列まで戻りその身に魔力を纏わせた。

「では、決めた条件を基にーーー

目に映りしは 決闘者共の不可侵の領域」

里長がそう唱えるとサローナさんとガズナを少し青みがかった半円状の透明な結界が覆った。

……コンコン。固いな。けど、本気で叩いたら割れそうだ。いや、やらないけどね。

「では、始めぃっ!!!」

里長の決闘開始の合図と共に動いたのはガズナだ。長剣とナイフとのリーチ差を利用した突きを放った。するどい突きだったがサローナさんは難なくナイフで剣身に当て軌道を反らし、そのままガズナに肩から体当たり、ガズナの体勢を崩すと顔の前にナイフによる一閃でフェイントをかけ、体の回転を利用したまわし蹴りを放つ。蹴りはガズナの腹部に命中したが、苦悶の表情をしたのはサローナさんの方だった。

「くっ、この衝撃…鉄?だが、ローブの下は普通の服装だった。そうなると仕掛けはそのローブか?」

「さすがサローナ!なかなかの洞察力御見逸れする。そう、このローブは魔力を流す事によって鉄の硬度を発揮する、最近ある行商から手に入れたモノだよ!ナイフだろうが体術だろうが俺には効かないぞっ!!さぁ、どうするサローナちゃぁん」

あっ、そんなあっさりバラすんだ。自慢したかったんだろうな、きっと。

「……そうか」

サローナさんはそれだけ言うと、すっと目を細めナイフを腰の鞘に納めた。瞬間。爆発的な瞬発力でガズナに肉薄するとローブに覆われていない足の爪先をおもいっきり踏み抜いた。あれは痛い。

今度はガズナが苦悶の表情を浮かべたと思ったら、サローナさんはローブを掴み、ガズナの顔めがけ頭突きをおみまいした。あれも痛い。

それでもサローナさんの攻勢は終わらず 、足払いを仕掛けガズナを地面に倒すとそのまま馬乗りになり、ガズナの顔面をボッコボコに殴りまくった。

俺はそのサローナさんの容赦のなさに恐怖を感じていた。だって、無表情でやってんだもん。そりゃこえぇよ…余程「ちゃん」呼ばわりが腹にたったのだろうか?ユユナ、ルルナも若干恐怖を感じているようだ。俺も気を付けよう……うんうん……

気が済んだのか、ある程度殴り終えるとそのまま立ち上がりゆっくりとガズナから距離を取った。

「無駄だ。お前がどのような策を用いようとも私には通じない。それがわからない程 、お前は馬鹿ではあるまい?」

いや、おもいっきり挑発にのってましたよ。それに問い掛けられても多分彼は今喋れる顔をしているとは思えませんよ?

と思っていたのだがーー

「くっくっくっ……さすが「守人」で1番強いサローナ。怒らせるとここまで容赦がないとは、恐い恐い」

軽口を放つガズナが普通に立ち上がってきた。その顔は殴られ続けた後が少しずつ消えていって元のムカつく笑みを浮かべていた。なんか余裕がありそうだな。まだ何かを隠してんのかな?

「傷が癒されていく…なるほどそのローブからも微力だが魔力が感じられる。…自動回復か?」

「そうだ、サローナ。いくら俺を攻撃しても無駄だ。もう諦めたらどうだ?」

「戯れ言を。それがお前の自信の元か?そんなもの私にとっては只の時間稼ぎにしかならないぞ」

「………フフフ、あぁ!そうだ!時間稼ぎにしかならないだろうなぁ!!だが、それでいいんだよ!!サローナ!お前に絶望を与えるにはなぁ!!!」

そう言うとガズナはローブの中から黒い玉を出した。

「そしてコレが俺の望みを叶えてくれる!

『我が心を満たすは 大いなる闇の福音』」

ガズナの言葉に反応するように黒い光が玉から放出され視界を埋め尽くしたと思ったら、一瞬で消えるように無くなり元に戻った。だが、先程の黒い光が現実だったのを証明するようにガズナの手から黒い玉は消えていた。

サローナさんは自分の体に異常がないか、手を閉じたり開いたり確認している。

「なんだ?何がしたいのだお前は?」

ーーーーーードクンッーーーーーー

なんだろう?今一瞬、心臓の鼓動が聞こえたような……けど周りの皆は普通だし、聞こえてない?

う~ん……気のせいだな、きっと。

…ん?なんか地面が揺れてないか?

ドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!

なんか遠くから大集団が全力でこっちに向かってる音が聞こえるような…