作品タイトル不明
対シロ戦 前編
元々この洞窟は邪神を封印するためにフロイドが造り、神の結界を入口に施して、誰もここに立ち居られないようにしていたために、簡単な造りになっているそうだ。
具体的には別れ道や罠等は一切無く、本当にただ1本の道しかない。
それに、洞窟なのに暗くなかったので、よく見ると壁一面に光る苔が生い茂っていた。
「このただの1本道……まるで私のようですね……」
「……は?急に何言ってんの?お前」
奥へと向かって歩いていると、フロイドが唐突に意味不明な事を言いだした。
俺は隣を歩くフロイドへとジト目を向ける。
「なんでこの1本道がお前のようなんだよ?」
「そこはほら、神を捨て、ワズ様の執事としてこれからを生きていく様を表しているのです」
「よぉ~しっ!!これから別れ道でも造るかぁ!!俺の拳1つで殴って掘っちゃうか!!それとも、もう崩落させちゃうか!!」
「おやめ下さい、ワズ様」
いや、もちろんそんな事はしませんよ。
フロイドもその事が分かっているのか、口だけで俺を止める。
そんな俺達の様子を後ろから見ていた女神様達がくすくすと笑い、大地母神様がとんでもない事を言った。
「ワズさんと創造神様は、長年の友のようにお話をなされるのですね」
それは無い……
そうして先へと進むと開けた場所に出た。
充分に暴れられそうな広さがあり、そして、その中央に暇そうに足元の小石を蹴っているシロが居た。
シロは俺達を視界に入れると、嬉しそうに口角を上げて、歓迎するように腕を大きく開く。
「やぁやぁやぁ!!やっと来たね!!もっと早く来るかと思ってたのに、随分遅かったね?どこか寄り道でもしてたのかな?まぁ、許容範囲内だからよかったけど、もう少し遅かったら先に邪神復活を始めてた所だよ?」
つまり、まだ邪神は復活していないという事か……
シロの言う事を鵜呑みにする訳ではないが、嘘をついている風には見えないし、思えなかった。
「さぁてと!!」
シロが広げた両手を自分の前で叩き、パンッ!!と音をたてる。
「じゃあ、邪魔者には先に進んで貰おうかなぁ?僕が用があるのはワズ君だけだからね!!」
そう言ってシロは自分の後方にある、更に奥へと続く道へと案内するように手を向けた。
その行動にフロイドと女神様達が俺の方へと視線を向ける。
俺は1つ頷くと、フロイド達に先に行けと目線を洞窟の奥へと向け、再びフロイド達へと戻す。
「……お気をつけて」
「どうかご無事に……」
「無理はするなよ」
「邪神の事は任せて」
「……Zzz」
「先に行っております」
其々が俺に一声ずつ掛けて、フロイド達はシロの横を通り過ぎ、洞窟の奥へと向かった。
そんなフロイド達に向け、シロが声を掛ける。
「あっ、そうそう、奥では闇の女神様が待ってるよ~!!」
『よっしゃぁ~!!ぶち殺してやるわぁ~!!』
主に女神様達が声を荒げ、猛烈な勢いで駆け出した。
俺が向こうに行った時、悲惨な現場になっていそうで怖い……
「さて、これで邪魔者は居なくなった」
「邪魔者?まるでこうなるように仕組んだように聴こえるが……まぁ、現にそうなってるし……そういう事なんだろうな。で、俺と1対1に持ち込んで何がしたいんだ?」
「そんなの決まってるじゃないか!!もちろん戦いだよ!!言っただろ、僕達は“似て非なる者”……決して互いの存在を認められないし、理解も出来ない……だから相手には消えて欲しいと思うもんなのさ!!」
シロはそう言って愉快そうに笑みを作ると、両手を握り、拳を作ると、拳同士を打ちつけ、かかってこいよと言うように俺へと向かって手招きをする。
「……武器は使わないのか?」
「武器?神に近しい僕達に、この世の武器は効かないよ!!それぐらい理解しているだろ?それに昔からよく言うだろ?男と男の戦いは拳だってさ!!」
その言葉の終わりと同時にシロが俺へと殴りかかってきた。
俺はその拳を咄嗟に避けたのだが、シロのこちらへと迫って来た速度は普段の俺並に速かった。
俺は即座に後方へと飛び、シロの追撃をかわす。
「あっぶな……ふぅ~……どうやら神格化出来るだけあって、そこそこステータスは高いみたいだな」
「もちろん!!僕だって死にたくはないからね、ちゃんと鍛えてるよ!!そんな事よりよく避けたね!!こんな見た目に油断して、逆に殺されちゃう人が多いのに……流石としか言いようがないね!!」
「そりゃどうも……そう言えば思い出したんだが、お前のせいで色々とこっちも面倒な事に巻き込まれた事もあったな……」
エルフの里や、マーンボンド王家の問題、メアルが攫われたり、ハオスイが魔王化したり、獣人国の反乱や、王都イスコアでのエリス姫様拉致等……多分、俺の知らない他の事も色々とやっているんだろうな……全く……いい迷惑だ……
「あはは!!少しはやる気になったかな?」
「あぁ、お前をぶっ飛ばして、ついでに邪神もぶっ飛ばしてやるよ!!」
再びシロが俺へと瞬時に迫り、拳を突き出してくるが俺はその拳を受け止め、逆に殴り飛ばした。
確かにシロの動きは速く、普段の俺並だ。
だが、普段の俺並という事は、手加減状態の俺並の力しかないという事であり、少し力を入れれば余裕で俺の方が強い。
殴り飛ばされたシロは壁へと激突し、口から血を流すが、いつもの笑みは相変わらずそのままだ。
「あはははは!!やっぱりこのままじゃ駄目か……どう考えても元々戦闘向きじゃないしね……どうしても普通状態じゃ差が出ちゃうね」
口のから出ている血を拭いながら立ち上がると、シロは「いくよ?」と小さく呟き、神格化した。