作品タイトル不明
屋敷の中に居た者は
アリアが居るかもしれないという情報をハオスイが受付嬢さんから聞いてきたので、再びカガネの案内の元、情報の貴族街の外れにある屋敷へと向かう。俺は先頭を歩くカガネの後ろ姿を肩を落として追い掛けながら、大きく息を吐いた。
未だ先程の受付嬢さんの対応に落ち込んでいた……あそこまで言わなくても……まずメアルは本物だし、自分の顔の平凡さなんて自分が一番知ってるよ……うぅ……
これではいけないと自分の両頬を2度叩いて、気分を入れ替える。これからアリアに会うかもしれないのだ。気をしっかり持たないとな……皆には俺が逃げ出そうとするかもしれないから、その時は押さえつけて下さいと言っている。ただ、よくよく考えるとアリアが居る場所って事は勇者パーティーも居るって事ではないだろうか?やだなぁ~……勇者様には会いたくないなぁ……どうにかアリアとだけ話が出来ないものだろうか?
いくら考えてもいい案が思いつかない内に、俺達は目的地である屋敷が見える位置にまで来た。そのまま近付き、門から中を窺うと普通のどこにでもありそうな平凡な貴族が使いそうな2階建ての屋敷と小さな庭がある。ただ、仮にも貴族街にある屋敷なのに門番は誰も居らず、庭へと視線を向けると枯れた木が1本に雑草が生い茂り、屋敷の窓は中が日の光で焼けるのを回避するためかはわからないが、全て大きな木材を打ちつけて中が見えなくなっていた。どう考えても人が居る……というか住んでいる屋敷にはとてもじゃないが見えない。本当にこんな所にアリアが居るのだろうか?
半信半疑で屋敷全体を上から見ていくと、屋敷の扉が少し開いているのが見えた。やはり中に人が居るのだろうか?そうか、もしかしたら何かの依頼でここを訪れている可能性もある訳だ。なら、一応中も確認しておくべきか……
というか、これ勝手に入っていいのだろうか?そう疑問に思っていると
「……問題ない。今ここに人は住んでいない。ただ時折人が居る姿が見えるらしく、幽霊屋敷と呼ばれていると受付の人が言っていた。立ち入りの許可もついでに貰っている」
と、ハオスイが教えてくれた。てか、幽霊屋敷って何!!初めて聞きましたけど!!ちょっと待って……もしそれが本当だとして幽霊に俺の攻撃は効くのだろうか?……それが不安だ……いざとなったら神格化して魔法で消してしまおう……
サローナ達の様子を確認すると皆平然としていた。あれ?皆怖くないの?幽霊だよ?幽霊?その事を確認すると皆特に怖くはないらしい……皆強いんだね……はぁ……なんか怖がってる俺が馬鹿みた……いや、怖くねぇよ!!怖くないったら怖くないから!!
俺はサローナ達に屋敷の中も確認すると一声掛けて、全員一緒に屋敷へと入った。
屋敷の中は定期的に掃除がされているのか、床が埃で埋まっているという事は無かったのだが……フロイドがスススッと玄関横にある棚に移動したかと思うと、指でスッと棚の表面をなぞり確認して「……ふむ」とか言って何か確認していた。お前は何様だと言いたい。
このままここに佇んでいても仕方ないので、屋敷内の探索を開始する。
「じゃあ俺は1階を見て回るから、皆は―――」
『一緒に行きます!!』
「……え?」
なんで?効率が悪いよ?
「ワズさんは私達に言った」
「アリアさんと対峙した時に逃げないようにしてと」
「それなのに別々の行動をしている時に」
「もしアリアとばったり出くわしたら」
「……旦那様を捕まえる事が出来ない」
「だから、常に一緒に行動するんです!!」
「うむ。なんならその……寝食も共に……な」
寝食は関係ないんじゃなかろうか……だけど、サローナ達の視線は本気であると俺に訴えている。
「……えっと、寝食の話はとりあえず置いといて……確かにもし俺が1人の時にアリアと会ったら、まず間違いなく逃げるのは確実だから……わかった。一緒に行動しよう」
単独だと逃げるのは自分でもわかりきっている事なので、サローナ達の言う通り一緒に行動する事にした。
まずは1階から探索を開始した。
「探索の前に……もしアリアが居て探している間に入れ違いになっては元も子もないから誰かがこの玄関口に居た方がいいよね?」
そう言うとサローナ達は気まずそうに俺から視線を逸らす。どうやら皆俺と行動を共にしたいようだ。その気持ちは嬉しいし、俺もそうしたいとは思うのだがやはり誰かがここに居た方がいいのは間違いない。さてどうしようかと思っていると、サローナ達の後ろから手が上がる。
「では、私がここに居ましょう」
フロイドが率先して残ってくれるようだ。その気持ちを素直に受け取っておこう。
フロイド……君の事は忘れない……
「ワズ様、私はここに生きておりますが?」
あ~あ~、聴こえな~い……
一応、フロイドにここは任せたと伝えるために頭を下げてから、俺はサローナ達を伴って1階の探索へと向かう。
1階は食堂やリビング等、人をもてなすための場所があるようで、全部屋見て回ったのだがアリアのというか、人は誰も居なかった。探索の際に床も確認してみたが地下室は無いようなので、そのまま2階へと向かう。
2階は1階とは逆に住人が住む場所のようであり、何部屋か見て回る。ここに住んでいた住人は読書好きなのか本棚が多く残されていた。まぁ棚だけだけど……
そして残り探していないのは2階の隅にある部屋だけとなった。場所的にはこの屋敷の主が使う書斎のような場所だろうか……ここに来るまでに誰にも会わなかったという事は、もし人が居るならここか……まぁ勝手に屋敷の扉が開いていたという可能性もあるが……
俺は覚悟を決めて扉を開いて中へと入った。
「やぁ、やっと来たね。待ちくたびれちゃったよ」
何の調度品も置かれておらず、ただ部屋の奥の方に机だけが置かれ、その机に腰掛けるようにしてこちらへと無邪気な笑みを向け、そう言う者が居た。
そいつは全身を黒色の服で覆い、顔を黒いフードで隠している……メアルをハオスイの所へと飛ばした男だった。