作品タイトル不明
第47話 役に立ち過ぎているんですよ
「残念ながら、あなたを正式にパーティの一員に迎え入れることはできません」
「え……」
リーゼさんが口にした言葉に、僕は目の前が真っ暗になる。
受付嬢のレイラさんの紹介を受け、ここアーゼルでトップレベルとされる彼女たちのパーティに参加させてもらうことになった。
一緒に冒険したのはほんの短い期間だったけれど、ダンジョン『樹海迷宮』の最下層でボスを撃破したり、魔物災害からアーゼルの街を救ったりと、大きな危機を乗り越えてきた。
それだけに、きっと僕を正式なパーティに迎え入れてくれるだろうと勝手に思っていたのだ。
……甘かった。
そういえば最初に言っていたじゃないか。
彼女たちは火力役の魔法使いを求めているって。
生活魔法しか使えない僕が不採用にされるのは、むしろ当然のことだ。
「はは……そうですよね……僕は所詮、生活魔法使い……皆さんの役になんて、立てないですよね……」
もはや自虐的に笑うしかない。
するとなぜかリーゼさんが首を左右に振りながら叫んだ。
「逆です、逆!」
「え?」
「むしろ役に立ち過ぎているんですよ! あなたの実力は、どう考えても私たちのような中堅パーティにいるようなレベルじゃないんです!」
「……えええ?」
何を言っているのか分からず、僕は混乱した。
「僕が、役に立ち過ぎている……?」
「がはははは! やはり自覚がないようだな!」
「やれやれ、ライル殿、それでは拙者のことを馬鹿にできないでござるよ」
「ユズリハに言われるのは癪だろうが、この件では同意せざるを得ないな」
ゴルドンさん、ユズリハさん、そしてピンファさんが、呆れたような顔で僕を見てくる。
「で、でも、皆さんはアーゼルでトップレベルのパーティのはずですよね……っ?」
そんなパーティに「自分たちでは役不足だ」なんて言われたら、僕がサポートできるパーティなんていなくなってしまう。
リーゼさんは苦笑した。
「それはアーゼルのレベルが低いだけです。世界を見渡せば、せいぜい中堅のパーティですよ。なにせ私たちはCランクですから。もっともっと上がいます。そしてライル君、あなたの実力は、そうした高位のパーティでこそ活かされるべきだというのが、私たちの出した結論なのです」
そういえば最初に冒険者登録をしたときに、レイラさんが教えてくれたっけ。
冒険者のランクはAからFまであるって。
Cランクは上から三番目で、見習いのFを除外して考えると、真ん中のランクということになる。
「だけど、そんな高位のパーティのあてなんてないですし……」
「大丈夫。あてならあります」
「え?」
「実は私の姉も冒険者をしていまして。彼女は今、Bランク冒険者なのです。しかもちょうど有能なサポート要員を探しているところらしく、ライル君のことを紹介したらぜひ会ってみたいと」
「リーゼさんの、お姉さんが……?」
どうやらすでに話をつけてくれたという。
冒険者ギルドには、冒険者同士が連絡を取り合えるサービスがあるそうなので、恐らくそれを利用したのだろう。
「姉のパーティは現在とある〝魔境〟に挑戦するべく、大陸の南端を目指しているそうです。ライル君もそこに向かえば、きっと合流できると思います」
魔境。
それはダンジョンにも匹敵する危険地帯だ。
凶悪な魔物が棲息するだけに留まらず、非常に過酷な環境であることも少なくない。
ただ、希少な資源を入手できる場所も多いため、一攫千金を求めて数多くの冒険者たちが集まるような魔境もあった。
「その魔境は『無明の竪穴』と呼ばれていて、地中深くにまで続く巨大な竪穴です。その名の通り穴の深部には光がまったく届かず完全な闇が広がり、独自の進化を遂げた魔物が棲息しているそうです」
「『無明の竪穴』……本で読んだことがあります。貴重な鉱物資源が手に入る魔境だって……」
「はい、よくご存じですね」
穴の上部は比較的緩やかな坂になっているけれど、途中からは完全な断崖絶壁で、穴の底まで辿り着いたという記録は数えるほどしかないという。
「どうですか? ライル君が世界一のサポート要員を目指すのであれば、アーゼルにいるよりもずっと多くの経験を積むことができると思います」
「……」
近くには二つのダンジョンがあるため、アーゼルは冒険者が多く集まる都市だ。
だけど、僕はすでにどちらのダンジョンも攻略してしまっている。
リーゼさんが言うように新天地に挑戦すれば、この街にいるよりも成長できることは間違いない。
ただ、見習いから卒業したばかりの僕に、果たしてBランク冒険者のパーティを満足させられるような働きができるだろうか……?
不安を抱きつつも、僕は頷いた。
「……そう、ですね。せっかくいただいたチャンスですし、一か八か挑戦してみようと思います! もし行ってみてダメなら、またアーゼルに戻ってくればいいだけですし」
幸い〈帰宅〉を使えば簡単に戻れるのだ。
「一か八かというか、たぶん普通に活躍できるとは思いますけど……(こんなかわいい子を手放すのは残念ですがっ……これもライル君のためっ……断腸の思いで送り出しますっ! ……ああでもやっぱりライル君と離れるのは嫌あああああああああああああっ!)」
「? リーゼさん?」
こうして僕はアーゼルを出発し、大陸の南端にある魔境へと向かうことになったのだった。