軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2話 これからどうやって生きていこう

「で、で、ですがっ、この目まぐるしい生活の姿は、ライル様の凄まじいまでの魔力量の現れでございます……っ! 通常であれば、せいぜい卵焼きを作っている姿が映し出される程度でございますので……っ!」

などと老齢の魔導具師が必死にフォローしてくれたけど、そんな言葉はもはや父上には届かなかった。

「黙れ! いかに魔力量が多かろうと、才能が生活魔法ではまったくの無意味だ!」

魔導具師をそう怒鳴りつけると、父上はオーガのごとき形相で僕の方を睨みつけて、

「ライルっ、貴様には失望したぞ! あれだけ私を期待させておいて、よもやこんな無能だったとは! 貴様のような存在は、我がエグゼール家にとって恥辱以外の何物でもない! もはや顔を見ることすらも不快だ! 即刻、我が家から出ていくがよい!」

そう一方的にまくし立てると、そのまま式場を出ていってしまった。

「……本当に家を追い出されてしまった」

鏡の審判の数日後。

父上が命じた通り、僕はエグゼール家を勘当されていた。

城の敷地内に足を踏み入れることを禁じられ、与えられたのは一か月ほど生活できる程度の資金だけ。

ちなみに兄上たちは「せめて使用人として城で働かせてやろうぜ。たっぷりこき使ってやるからよ」と父上を説得(?)しようとしてくれたけど、父上が頑としてそれを認めなかったのだ。

それだけ父上の怒りは強大だったようである。

「これからどうやって生きていこう?」

僕はうーんと唸りながら考える。

生活魔法の才能を授かっているというのに、生活ができなくなってしまったなんて、一体何の冗談だろう。

といいつつ、実は頭の中に一つだけ、自分のこれからについてのアイデアがあった。

「冒険者だ」

魔物討伐から宝探し、ダンジョン攻略に要人護衛まで、危険度の高い依頼を受けて稼ぐ仕事である。

実は幼い頃、僕は生活魔法しか使えない魔法使いの話を本で読んだことがあった。

その魔法使いは、勇者と呼ばれる英雄が率いるパーティに所属していて、戦闘では何の役にも立たないものの、便利な生活魔法で過酷な冒険をサポートしていた。

子供ながらに僕はその本に感動させられた。

サポート要員とか、縁の下の力持ちとか、地味なイメージがあったけれど、本当は凄くカッコいいものだって思うようになったのだ。

「僕もあの魔法使いのように、世界一のサポート要員になってみたい!」

生活魔法の才能を授かったのは、むしろ僥倖だったかもしれない。

一族を束ねる当主になることを期待されていたけど、それはサポート要員とは真逆の、みんなの先頭に立つ役割で、僕の性格的にどう考えても向いてないしね。

冒険者ギルドと呼ばれる組織が依頼を斡旋していて、このあたりだとアーゼルという都市にその支部が存在するという。

「行ってみよう。冒険者ギルドに」

そう決意した僕は、生まれ育った街を飛び出し、新天地を目指して歩き出したのだった。

生活魔法の才能があっても、いきなり生活魔法を使えるわけじゃない。

僕も現状、使える魔法は一つもなかった。

魔法を習得する方法は大きく二つある。

一つは魔法の術式を知ることだ。

だけどそれには魔導書などが必須で、そんなものは手元にはない。

それに使いこなせるようになるまでには時間がかかるという。

もう一つはもっと手っ取り早いものだ。

それは魔物を倒すことで経験値を稼いでいく方法。

一定の経験値を稼ぐと自然と魔法を習得し、しかも簡単に使いこなせるようになるらしい。

どの魔法を習得できるかは人によって違っているため、習得したい魔法を必ず覚えられるわけではないものの、僕が今やれる方法はこれしかなかった。

ちなみに成人前だと、いくら魔物を倒しても経験値は獲得できないらしい。

「エグゼール家にいたら、成人後に高位の魔法使いたちに同行してもらって、安全に経験値稼ぎをするはずだったんだけど……」

少しでも魔物にダメージを与えれば、それだけで経験値を獲得できるようで、こうした手段は貴族の家ならエグゼール家に限らず当たり前のように行われている。

当然、勘当された僕はたった一人で魔物を倒さなければならなかった。

そんなわけで、アーゼルを目指し街道を進みながらも、街道を逸れて魔物が棲息する森に寄り道をすることに。

「グギギッ!」

そんな鳴き声を響かせながら現れたのは、十五歳にしては小柄な僕より、さらに一回りは小さい人型の生物。

緑色の肌に、堕ち窪んだ眼、大きな鼻、口からは涎と一緒に舌がだらりと垂れ下がっている。

醜悪な容貌のそいつは、言わずと知れた最弱級の魔物、ゴブリンである。

とはいえ、こちらは成人したばかり。

生活魔法では魔物と戦うことすら難しいというのに、その生活魔法すらまだ使えないのだ。

もちろん魔法に傾倒したエグゼール家では、剣なんかの扱いを学ぶこともないし、餞別として武器をくれるなんてこともなかった。

そんな完全に無防備な僕に向かって、どこかで拾ったらしい錆びついたナイフを片手にゴブリンが躍りかかってくる。

――ドンッ。

「ギッ?」

ゴブリンの脳天に風穴が空いた。

その後も二歩くらいこっちに近づいてきたけれど、三歩目で白目を剥いてその場に倒れ込んだ。

「うん、普通に倒せるね」

ゴブリンの頭を撃ち抜いたのは、僕が放った魔力の塊である。

僕はこれを魔力弾と呼んでいるのだけど、実は魔法が使えなくても、魔力そのものを利用すればこんなふうに攻撃手段にもできるのだ。

相当な量の魔力を凝縮させないと硬い頭蓋を撃ち抜くほどの威力は出ないので、攻撃魔法よりも遥かに効率が悪いけどね。

それからも何度かゴブリンに遭遇し、そのたびに脳天への一撃で仕留めていった。

コントロールには自信があるので百発百中だ。

伊達に物心つく前から魔力で遊んでいたわけじゃない。

やがて何体目かのゴブリンを倒したとき、急に身体に力が漲ってきたような感覚があった。

経験値が一定量に達すると、身体能力も向上すると言われているのだ。

――〈明かり〉を習得しました。

――〈水生成〉を習得しました。

「あっ、魔法も覚えたみたい」