軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第10話 普通に火力役でしょ

「私の知ってる〈火起こし〉は、せいぜい料理用に小さな火を起こす程度のものよ? こんなの完全に火魔法じゃない。それも、上級魔法並みの威力があったと思うわ」

すっかりよく喋るようになったシルアが、呆れたように聞いてくる。

僕は笑った。

「はは、さすがに上級魔法は言い過ぎだって。よくてせいぜい中級魔法くらいだと思うよ」

父上が使う赤魔法を何度か見せてもらったことがあるけれど、上級魔法はこんなもんじゃない。

確かに生活魔法の〈火起こし〉としては強力かもしれない。

でも、魔力量が多くてもこの程度なわけで、生活魔法の才能しかない僕が、エグゼール家を追い出されてしまうのも無理ないことだろう。

「うん、やっぱり僕はサポート要員として生きていくしかないね」

「サポート要員て。普通に火力役でしょ……」

僕が火力役?

何の冗談だろう。

まぁシルアはあまり魔法に詳しくないのだろう。

逆に僕は魔法の名門の出身だからね。破門されたけど。

「っと、ボスを倒したお陰か、新しい生活魔法を覚えたみたい」

それも同時に三つ。

「なになに? まずは〈歩行補助〉。これは歩くサポートをしてくれる魔法のようだね。それから……あっ、〈痛み止め〉だ。怪我は治せないと思うけど、痛みを緩和することはできるはず。あと一つは……〈目覚まし〉。起きたい時間に起きれるようになる魔法かな?」

シルアは今の戦闘であちこち傷だらけだ。

早速〈痛み止め〉を使ってみることにした。

「っ……傷があっという間に治っていく……?」

気づけば血が止まり、傷が塞がっていた。

「何をしたの?」

「〈痛み止め〉を使ったんだけど……せいぜい痛みが緩和されるくらいだと思ってたのに、傷が治っちゃったね」

「ていうか、よく見たら古い傷まで治りかけてるんだけど? そこらの治癒魔法より強力なんじゃないの……?」

「いや、さすがにそこまでじゃないと思うけど」

加えて今度こそ〈汚れ落とし〉を使い、汚れも取り除いてあげる。

気づけばそこには白銀の髪の美少女が立っていた。

「お風呂で奇麗に洗った後みたいにすっきりしたわ」

「……てっきり灰色かと思ってた」

「元はこういう色なのよ」

どうやら汚れてくすんだ灰色のようになっていたらしい。

「っ……見て、この隷属の刻印も……」

「え、消えかかってる?」

シルアの腕に施されていた隷属魔法による禍々しい模様。

それが明らかに薄くなっていたのだ。

「もしかして僕の〈汚れ落とし〉の効果?」

「それしか考えられないわね」

「呪いが汚れとして判定されてるってことかな……もっと魔力を込めれば、完全に消せちゃうかも?」

僕は先ほどよりさらに強い魔力を込め、〈汚れ落とし〉を発動させる。

すると刻印が黒い靄となって消失してしまった。

「……消えたわ」

「……消えたね」

思わず僕たちは顔を見合わせる。

「あなたのお陰よ、ラウル。ありがとう」

「ライルだけどね」

初めて見たシルアの笑顔に、僕は思わずドキリとしてしまう。

だけどすぐにそれは獰猛な笑みへと変貌し、

「これでもう二度とあの胸糞悪い連中の言いなりにならなくて済むわ。もちろんこれまでに受けた仕打ちを百倍にして返さなくちゃ気が済まない。まだ隷属しているフリをしながら、隙を突いて一人ずつ確実に仕留めていくのがいいかしらねぇ?」

急に饒舌になって復讐の算段を始めてしまった。

こんなキャラだったの……?

それから僕たちは二人だけで地下10階の安全地帯を目指した。

恐らくボスから逃走したゲインさんたちも、そこに向かっているところだろう。

「やっぱり〈歩行補助〉があると違うね。歩いているだけなのに、走っているよりもペースが速いよ」

「あなたの生活魔法が異常なだけで、本来ならここまでの性能じゃないでしょうけど」

〈歩行補助〉を使ったことで、階層をあっという間に踏破していく。

二人になったというのに、行きよりも遥かに速い。

お陰で地下10階どころか、地下12階の途中で見知った三人組の背中が見えてきた。

「あっ、クズどもがいたわ」

「ほんとだ」

後ろからボスが近づいてこないか不安なのか、三人は足早に通路を進んでいた。

「くそっ、マジで大損害じゃねぇか! 奴隷はまぁ、また実家から新しいやつを連れてくりゃいいけどよっ、あの生活魔法のガキはせっかく掘り出し物を見つけたと思ったのによ! しかも預けていた荷物まで一緒だぜ!」

「え、じゃあ、あたしの服とかお風呂セットも!? 何なの、あいつ! 役に立たないくせに助けにいくとか、ほんと馬鹿の極みでしょ!」

「死んだらその場に落ちてるんじゃねーか? ほら、たまにダンジョンで死んだ冒険者の武具なんかが落ちてるだろ? 回収するのは面倒だが……それにしばらくは怖くて地下14階に近づけねーよなァ」

そんなことを言い合う声がこっちにまで聞こえてくる。

僕めちゃくちゃ貶されてる……。

「っ、後ろから気配だ」

真っ先に気づいたのはギルさんで、僕たちの方を振り返った瞬間、大声で叫んだ。

「おいおい、何で生きてんだァ!?」

「え? なっ……お前ら、生きてやがったのかっ!? ボスはどうなった!?」

「よかった! あたしの荷物も無事ってことね!?」

すぐに追いついた僕は単刀直入に報告した。

「ボスなら倒しましたよ」

「「「……は?」」」