軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11章 彷徨する迷宮(ワンダリングダンジョン) 02

「というわけで、もう一つのCクラスのダンジョンは後回しにして明後日バルバドザへ向かうことになった。断るのは難しい案件だったので済まないが了承して欲しい」

宿で、部屋に集まった皆に伯爵の依頼のことを伝えたが、『ソールの導き』のパーティメンバーは特に大きな反応もしなかった。

「ソウシさまが受けると判断されたのなら大丈夫です」

「まあ伯爵様直々に依頼されたら断れないよね。ここのCクラスを後回しにするのはちょっと気持ち悪いけど仕方ないんじゃない」

「私も特に問題はないと思います。それにソウシさんとしてはアンデッドというところが気になっているのではないのですか?」

スフェーニアの言葉に俺は頷いた。

「実はその通りだ。やはりこのタイミングでのアンデッド騒ぎはどうも無視できない気がしてな」

「ふぅん。でも別に私たちじゃなくてもいい気がするんだけどなあ。バルバドザって大きな町なんでしょ? 強いパーティも多いと思うんだけど」

ラーニの言葉はその通りだが、伯爵の考えはなんとなく分かる。

「伯爵としては俺たちの力を測りたいという考えもあるんだろう。なにしろ今回『黄昏の眷族』を討伐したのは無名の冒険者だからな。さすがに討伐しました、というだけで判断はしないと思う」

「面倒なんだね貴族様って。証拠があってもダメなんだ」

「『眷族』を討伐したのを疑っているというより、それがまぐれかどうかを測りたいんだろう。王家に報告をする以上、伯爵としては裏を取るのは当然だ。もっとも、よく分からないアンデッドの対応に手持ちの強い駒を使いたくないっていうのもあるのかも知れないが」

多少邪推も入るが、まあ大きく外れている考えでもないだろう。上の人間には上の人間の論理があるからな。

俺の話にマリアネも同調するように頷いてくれた。

「ソウシさんの考えの通りでしょうね。それに加えて『ソールの導き』と関係を持っておきたいということもあるでしょう。どちらにしても、伯爵からの依頼を受けるということはそれだけで大きな実績になりますし、『ソールの導き』にとっては悪いことはありません」

「そう言われると安心できるな。とにかくアンデッドが相手となればフレイが頼りになるからな。よろしく頼む」

そう言うとフレイニルの顔がぱっと明るくなった。両手を胸の前で合わせて「はいソウシさま。全身全霊でソウシさまのお役に立ちます」と宣言する。力を入れすぎるのも問題があるが……モチベーションが高いのはいいことだ。

「もちろん皆も頼りにしている。アンデッドは物理攻撃が効きづらいやつもいるからな」

と忘れずに他の皆にも気を配っておくと、ふと前世でプロジェクトのリーダーをやっていたことを思い出した。そうか、あの感じに近いんだな、冒険者パーティのリーダーってのは。

翌日はもちろんトレーニングを行いつつ買い出しを行った。領都バルバドザまでは伯爵様の護衛として雇われることにもなっていて、4日間の旅になる。実は俺は心配性なところがあって食料品などは常に多めに買いこんでおいたりする。『アイテムボックス』は実に俺向けのスキルである。

翌々日朝、伯爵様一行と合流し、ロドニク代官に見送られてバートランを出発した。

伯爵様一行は、伯爵乗車の高級馬車を中心に、荷馬車一台、兵士20名、例の双子の護衛2名にプラスして通常の護衛の冒険者4人の総勢27名だ。マリアネによるとこれはかなり少ない数らしいが、それだけ領主が移動するというのは大変なことなのだろう。

なお双子はどちらも元Cランク、護衛の冒険者パーティ『 黎明(れいめい) の 雷(いかずち) 』もBランクということで、護衛の戦力としては申し分ないようだ。

宿泊については領都と第二の町を結ぶ街道ということで宿場も整備されており、当然のように伯爵専用の建物が用意されていた。

護衛用の小屋も近くに配されているのだが、それは兵士用なので俺たちは結局野宿になる。もっともラーニに言わせると「話しかけてくる男がいるとめんどくさい」とのことなのでそれはそれで都合はいい。

2日目の宿場に着くまでは特に何もなく、伯爵が宿に入った後、俺たちはその宿から少し離れたところにテントを張った。護衛の『黎明の雷』とは話し合って、伯爵の宿を挟むようにしてそれぞれ持ち場を警戒をすることになっている。

俺たちが夕飯を食べていると、宿の方から伯爵の護衛の双子のうち女性のほう……名は確かレイセイ……が歩いて来た。

「こんばんはですぅ~。ソウシさん、パーティの皆さんに挨拶をさせてください~」

「どうもこんばんは。どうぞこちらへ」

改めて見てみるとやはり二十歳前後の女性である。ショートカットにしているのと独特な口調もあって多少幼く見えるが、眼の光は経験を積んだ人間のそれだ。元Cランクなのだし中身が見た目通りということもないだろう。ここに挨拶に来たのも伯爵の指示なのであろうし。

「はぁ~、皆さんおきれいな女性ばかりですねぇ~。ソウシさんってそういう人なんですかぁ?」

5人で車座になっているところに加わりながら、レイセイ嬢はいきなりそんなことを言ってきた。まあ一番気になるところではあるよな。

「そういう人っていうのはよく分かりませんが、自然と集まってこうなっただけですよ。紹介しますね」

と言ってフレイニルからマリアネまで4人を紹介する。

「わたしはレイセイと申します~。もともと伯爵様にお仕えする家の出なんですけどぉ、姉弟揃って冒険者になっちゃいまして、Cランクになったので伯爵様の護衛として認められたんです~」

「ご姉弟のレイナンさんと一緒に『覚醒』したのですか?」

「そうなんです~。とても珍しいとかで、家族にも驚かれたり悲しまれたりしたんですがぁ、なんとか今の感じに収まった感じです~」

もともと伯爵に仕える家ということはそれなりの格がある家のはずだ。その家にとっては子弟が姉弟揃って冒険者になったとなれば確かに大変な痛手だろう。冒険者としてそれなりの成功を収めて伯爵の護衛になれたのは、家としては色々と幸運なことだったに違いない。

「ところでぇ、マリアネさんってギルドの方ですよねぇ? もしかして『ソールの導き』の専属職員ということですか~」

聞かれてマリアネが頷く。

「はい、そうです」

「それはぁ、『黄昏の眷族』を倒したから専属がついたっていうことですか~?」

「いえ、その前からです。『ソールの導き』が以前から有望なパーティだと目されていましたので」

「ふぅ~ん、ギルドのパーティを見る目ってすごいんですねぇ。それってやっぱりソウシさんが強いからですよねぇ?」

マリアネがちらりと俺を見る。レイセイはあきらかに『ソールの導き』の能力を探ってる感じだからな。どこまで開示するのかは難しいところだ。

「そうですね。ソウシさんの力はすでにBランクを超えAランクに及ぶほどです。その上『アイテムボックス』のスキルもご覧の通り他の冒険者に比べて格段に有用性が高いので、ギルドとしては注目しています。もちろんパーティとしてのレベルも非常に高い部分も評価されています」

「確かに『黄昏の眷族』を倒せて、ここまで物が大量に運べるとなると、深層ダンジョンの素材も大量に手に入るかもしれませんからねぇ。高い評価なのも分かります~」

マリアネがすでに分かってる範囲の情報だけで説明すると、レイセイはひとまずは納得したようだ。スフェーニアがハイエルフなのは見ただけで分かるし、フレイニルが元公爵令嬢というのは伯爵も気付いているだろう。そこも含めれば専属職員がつくのはおかしな話でもないはずだ。

さすがにレイセイもそれ以上根掘り葉掘り探るようなことはせず、当たり障りのない話で盛り上がって宿の方に戻っていった。