軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9章 再会と悪魔の足音  03

翌朝開門と同時に、俺たちはトルソンに向けて出発した。途中で『ギガントバイパー』を討伐する旨も全員が了承済みである。

ウチのパーティではすっかり基本のマラソン移動を行い、 件(くだん) の農村には昼前に到着する。

村長に『ギガントバイパー』の情報を聞き、教えられた草原に向かう。遠くに水場が見える、いかにも巨大蛇がいそうなロケーションである。

「ん~、生臭いニオイがする。あっちの水場の方にいるわね」

ラーニのおかげでモンスターが見つけやすいのも実はかなりのズルな気がするな。

俺たちは警戒しながら、池のように見える水場に近づいていった。

「水場の中にいてこちらを狙っていますね。近づいた時にいきなり襲い掛かる気でしょう」

スフェーニアが水晶の杖を出しながら言う。

「火魔法であぶり出すことなんかはできないか?」

「あまり深くまで潜っていると難しいですが、多分浅い所にいるはずなのでできると思います。やりますか?」

「出てきたところを一発殴ってみる。仕留めそこなったら援護を頼む」

「そのメイスの威力を試したいわけね。男ってそういうの好きよね」

ラーニの言う通りなのだが、まあこれは仕方ない。メイスの感触は昨日一通り振り回してみて即実戦可能だと判断している。

「ソウシさま、お気をつけて」

フレイニルの心配そうな声を背に、俺だけが前に出ていく。

「魔法行きます。『フレイムボルト』」

10本ほどの炎の槍が俺の頭上を越えて放物線を描いて池に着弾、すさまじい音と水蒸気を立てる。

同時に水面が膨らんだかと思うと、巨大な蛇……『ギガントバイパー』が姿を現した。俺に向けられた目には怒りがこもっているように見える。

一瞬の後、凄まじい勢いで巨大蛇が滑り寄ってきた。確かにデカい、胴は直径で1メートルはありそうだ。

『ギガントバイパー』は俺を射程にとらえると、大口を開けて飛び掛かってきた。口には短剣ほどもある牙が光っている。

俺はその鼻面に、完璧なカウンターでメイスを叩きこんだ。先端だけで自重100キロを軽く超える質量が、時速300キロを超えるスピードで叩きつけられる。もちろん力を倍々で高めていくスキル群も乗っての一撃だ。一発で頭部が爆散した『ギガントバイパー』の死骸が、その圧倒的な威力を物語っていた。

「さすがソウシさまです!」

「あれをホントに一発で倒すって……ソウシってやっぱり色々とおかしいよね」

「あれがソウシさんの本気の一撃。すでにCランクどころかBランクすら超えているのでは……?」

リーダーを持ち上げてくれるのは嬉しいが、ほどほどにして欲しいものだ。

巨大蛇をなんとか『アイテムボックス』に押し込めて、俺たちはそのままトルソンの町まで再度マラソンをした。

「あれが全部『アイテムボックス』に入るのもおかしいですが、入れたまま走れるのもおかしい気がします」

とスフェーニアが言っていたが、これは俺の『体力』と『筋力』が並外れているから可能なことなのだろう。

トルソンではまず宿の確保をし、次いで冒険者ギルドを訪れた。

久しぶりに顔を見る受付嬢キサラに声をかける。いや、そんなに久しぶりでもないか。

「あれ、ソウシさんじゃありませんか。どうしたんですか?」

「Dランクになったのでトルソンに来たんです。少しだけまたお世話になります」

と言うと、キサラは一瞬ポカンとして、それからカウンターの上に身を乗り出した。

「えっ、ソウシさんもうDランクになったんですか? ちょっと早すぎませんか?」

「そうですね、色々と幸運もありまして。おかげさまでパーティを組むこともできましたし」

と言ってフレイニル達3人を紹介する。キサラの目がさらに丸くなる。

「え……っと、こちらがパーティメンバーなんですか? はぁ~」

「はぁ~」という感嘆には非常に微妙な意味がありそうだが、そこはあえて気付かなかったことにしよう。

「あ、ところでこちらに途中の村の『ギガントバイパー』討伐の依頼って入ってますか?」

「Dランクの奴ですね。確かに入ってますね」

「討伐完了しましたので報告しておきます。モンスターの素材はエウロンに納品しろと言われているのでそちらで処理はしますが」

「本当ですか? あ、でも一応証拠を見せていただかないと……」

ということだったので、解体場に移動して『アイテムボックス』から『ギガントバイパー』の死骸の一部を取り出して見せた。

キサラはずっと「えっ!? えっ!? えっ!?」と言っていたが、討伐自体は信じてもらえたようだ。

「とりあえず明日からDクラスダンジョンに入りますので」

と伝え、俺たちはギルドを後にした。

トルソンの町には宿が二つあるが、今回は泊まるのは女子3人がいることもありもちろん高い方の宿である。

キサラと仲がよさそうだとラーニにからかわれ、フレイニルにちょっと悲しい目をされたりしたが、とりあえず宿で早めの食事をとって部屋に引っ込むことにした。

のだが、俺はその後宿を抜け出してもう一軒の宿へ向かった。もちろん以前世話になったパーティ『銀輪』の面々に挨拶をするためである。

ところが宿の女将さんに聞いたところ『銀輪』は討伐任務で出払っているとのことで空振りに終わってしまった。まあ冒険者だからそんなこともあるだろう。

宿に戻って廊下を歩いているとラーニが部屋から出てきて、なぜか唐突に俺の身体のニオイを嗅ぎ始めた。

「なにしてるんだ?」

「他のオンナのニオイがしないかどうか調べてるの」

「は……?」

「まあソウシも男だからそういうのも分からなくはないけど、女3人いるパーティだから気を付けてね」

俺が答えに窮しているとラーニはそのまま女子部屋に戻ってしまった。

なんか「大丈夫だったよ」とか聞こえるんだが、俺は一体何を疑われていたのだろうか。

まさか怪しい店に行ったとか思われたのか? 女の子がそういう場所に行く男を嫌がるのは世界が変わっても同じなのだろうな。