軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24章 異界回廊 36

アナンタとの長い戦いが終わり、全員がその場に座り込んだ。

俺はリーダーの矜持でなんとか堪え、

「皆本当にお疲れだったな。きつい戦いだったが、これを乗り越えられたのは大きいだろう。この後にやってくる『大いなる厄災』でも、千匹以上のモンスターと戦う可能性もあるわけだしな」

と声をかけたが、自分で言っていてどうも嫌なフラグになってしまった気がする。

前向きに考えれば、ダンジョンがそれを見越して、俺たちにそれこそ千本ノックをしてくれたということなのかもしれない。考えすぎかもしれないが、『天運』スキルにはそれくらいの信頼感がある。

「ソウシさまのおっしゃる通りですね。私たちはとてもいい経験をさせてもらったのだと思います」

とフレイニルが返してくれたので、なんとなくいい感じにまとまっただろうか。

さて、10分ほどしてラーニとシズナが動き出し、宝箱のほうへ歩いていった。

箱はさすがに千個はなく、虹色のものが3つだった。経験上虹色の宝箱は最上位の装備が出るので期待大である。

「ソウシ~、開けていい?」

「いいぞ」

出てきたのは女性用と思われる、銀と白で彩られた美しい軽装の鎧、こちらも女性用と思われる臙脂色の洒落たコート、そしてなんとオリハルコン製の兜であった。

「鎧は『紡がれざる銀糸』という名です。『金剛体+3』『金剛壁+3』『金剛幹+3』『予知+3』の効果があります。コートは『久遠の道』、『金剛体+3』『金剛壁+3』『多重魔法+3』の効果があります。どちらも極めて珍しい効果のついた防具ですね」

見た目からして前者はマリシエール用であり、マリシエール自身も、

「これほど美しい鎧は見たことがありません。是非身に着けてみたいと思わせるものですわ」

ということで問題なく使い手が決まった。

コートについても、

「こっちのコートはドロツィッテに似合いそうだがどうだ?」

「さすがソウシさん、私の好みをよくわかっているじゃないか」

というわけですぐに使い手が決まった。

なおマリシエールについては、『金剛体+3』の腕輪がスキル被りをするので、腕輪をフレイニルに譲った。

さて、問題は兜だ。

前世地球のローマ時代の兜を彷彿とさせる頬までを守る形のもので、兜の頭頂部にはトサカのような飾りが、そして側頭部には水牛のツノのような突起が突き出している。見た目が非常に派手なのだが、明らかに今俺がつけている鎧『神嶺の頂』とマッチするデザインであった。

「『神嶺に輝く星』という防具ですね。『神剛壁+5』、『将星+5』の効果がありますが……」

「『神剛壁』はたぶん『金剛壁』の上位スキルだろうが、『将星』というのは初めて聞くな」

「はい。ギルドマスターはご存じですか?」

マリアネに問われて、ドロツィッテが顎に手を当てて考え込む。

「……どこかで聞いたことがあるね。確か、ソウシさんの持っている『将の器』と同じく、仲間を強化する効果があるんじゃなかったかな」

「それが本当ならかなり有用なスキルだな。今一番欲しい効果かもしれない」

「そうだね。もし『将の器』と同じく、パーティだけじゃなく一軍に効果があるようならその有用性は計り知れない。しかもそれがこの武具についたスキルとなると、これは国宝を超える価値があるかもしれない」

「これを軍が率いる将がつけるだけで軍の力が何割も増すとなったら恐ろしいな」

「もっとも、この重さの兜は誰でもつけられるものではないだろうけどね」

ドロツィッテが苦笑いをするが、確かにこの『神嶺に輝く星』は見た目以上に重い。

先ほど宝箱を開いたラーニが一度持ち上げて、すぐに「重い!」と言って持つのをやめたくらいである。普通の人間はもとより、並の冒険者でも装着するのはためらう兜だろう。

俺がそのど派手な――それこそ前世の映像作品で見たような兜を眺めていると、フレイニルが不思議そうな顔をした。

「ソウシさま、その兜がお気に召さないのですか? とてもお似合いだと思いますが」

「フレイはこれが本当に俺に似合うと思うか?」

「はい。ソウシさまのお力を象徴するような、見事な兜だと思います」

「そうか……」

まあ確かに、俺の持つ異常な力を示す武具としては、或いは「それもあり」なデザインなのかもしれない。

ただ、この『神嶺に輝く星』と、鎧『神嶺の頂』を同時に装着すると、見た目が完全に、前世で見たマンガの登場人物になってしまう気がするのだ。ちなみにこの大陸にも星座という概念はあるが、この防具がそれと関係ないことを今は祈るしかない。

「ソウシさま、今回の『王家の礎』踏破はここまでになりますね。これほど長くダンジョンにとどまって戦いを続けたのは初めてですが、とても強くなった気がします。装備もソウシさまのお陰で手に入りましたが、それ以上に自分自身の力が上がったようです」

「それは俺も感じるな。スキルレベルも一気に上がっただろうし。それに魔石も十分以上に手に入ったのも大きいな」

見渡すと、石畳の上には千個のAランク魔石が転がっている。そう、千匹のアナンタはそれぞれがすべて魔石を残したのだ。

「これなら『異界の門』を多く開くことができますね」

「しばらく魔石に困ることはなさそうだ」

今回、『王家の礎』で手に入れたAクラス魔石は数千に上る。それだけで国家予算に匹敵する価値があると思うと、俺たちの金銭感覚は完全に麻痺してしまいそうだ。

武力という観点から言えばすでに国家とも渡り合える『ソールの導き』だが、経済面でもすでに国家に匹敵するというのは空恐ろしささえ感じる。

今さらながらに自分がこの世界に来た意味などを考えたくなるが、その答えが誰かからもたらされることはあるのだろうか。それとも、それは前世と同じく自分で探すものなのだろうか。

そんなことを考えながら、俺は派手な兜を見つめていた。