軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24章 異界回廊 23

魔石や素材回収に時間がかかったこともあり、また全員の体力のことも考えて、この地下25階で野営をすることにした。

とはいえ、もともと一日10階層ずつを踏破する予定だったので、これが本来の形である。

夕食では、デザートとして今まで封印していた「アイスクリーム」を遂に作ることにした。まあ単に、子どもの頃に母親と作った記憶が急に蘇ったというだけなのだが。ともあれ材料はこの世界でも揃うし、生クリームも冒険者の力を使えば簡単にできる。

問題は凍らせることだが、これはスフェーニアの魔法を利用した。ちなみにアイスクリームは混ぜながら凍らせるのが重要なので、氷結の魔法をかけてもらいつつ耐性スキルで耐えながらかき混ぜるという力業を用いた。混ぜている間にみるみる凍っていくので前世地球より作るのが楽だったが、このやり方だと作れるのは高ランクの冒険者だけになりそうだ。

しかしそのおかげもあってキメが細かい市販品みたいなアイスクリームができたので俺自身かなり驚いた。ちなみにこの世界にもシャーベットのような氷菓はあるが、アイスクリームはまだ見たことはない。

食べてみると、材料がいいこともあって俺が食べても十分以上に美味しいものであった。俺が作る日本の料理はメンバーによって多少の好き嫌いはあるのだが、このアイスクリームだけは絶賛の嵐だった。

「ちょっとこれ美味しすぎ! ソウシ、もっと作って。これの10倍くらい!」

「手伝っている時はどのようなものができるのかと思っていましたが、これは驚きました。定期的に作って食べたいですね」

「定期的どころか、毎日でも食べたい甘味じゃのう。母上にもセイナにも食べさせてあげたいものじゃ」

「これは帝城の料理人も目を見開くほどのものですわね。しかし作るのには冒険者の助けが必要そうです。冷凍の魔導具を使えば似たものができるのでしょうか?」

「ふむ……。重要なのはかき混ぜながら冷凍することだな。回転運動の魔導具を組み合わせれば作れるかもしれん」

という具合で、結局ラーニだけでなくマリアネやライラノーラまでがお代わりを求めたので、2回追加で作る羽目になった。まあ、喜んでもらえるのは料理人冥利(?)に尽きるのでいいだろう。

カルマの、

「これって酒をかけると美味いんじゃないか」

という鋭い意見に、

「アイスにかけるならブランデーだな」

と答えたら、

「ソウシさん、そういう情報を口にしたからには、そのブランデーって奴も出しておくれよ」

などという藪蛇もあったが、食事も睡眠もたっぷりと取り、俺たちは『王家の礎』攻略三日目に備えた。

今日は『王家の礎』、地下26階からのスタートだ。

「ここからは事前情報はない。昨日までより慎重にいくぞ」

と声を掛け、階段を下りていく。

地下26階も、それまで同様大理石のような石で作られたダンジョンであった。

通路の幅は10メートルほど。警戒しながら進んでいくと、人型のモンスターが出現する。

人型と言ったが、首から上はドラゴン、背中にはドラゴンの羽根と尻尾、全身が鱗に覆われたモンスターだ。身長は2メートルほどで、幅広の片手剣と円形の盾を持っている。

「あ~、あれって『龍の揺り籠』に出てきた奴だよね」

ラーニが気の抜けたような声を出したが、初見のモンスターでないと分かればそんなものだろう。

実は事前情報を聞いた時点で感じてはいたのだが、『王家の礎』と帝国の『龍の揺り籠』は、同じクラスレスダンジョンだからか、出てくるモンスターは同じものが交るようだ。

この『ウェアドラゴン』は『龍の揺り籠』の21階で出てきたモンスターだ。もちろん数は倍の30匹になっていて、難易度は同じではない。

以前見た時は大型モンスターを超える威圧感を覚えたウェアドラゴンも、今の俺には何も感じない。

ウェアドラゴンたちの全身がうっすらと光るのは、身体能力アップのスキルを使った証拠だ。彼らはさらに自らの剣に付与魔法をかけると、『疾駆』スキルで一斉に突っ込んできた。

もちろんカウンター気味に、まずは後衛陣の魔法が炸裂する。

フレイニルの『聖光』は、『多重魔法』スキルによって発射数が7本にまで増えている。

スフェーニアとシズナが放つ氷の槍は2人で300本に近く、ドロツィッテの『レーザー』と、ゲシューラの巨大な『エアカッター』、そしてライラノーラの『血槍』が、30匹のウェアドラゴンを一瞬で5匹にまで間引いてしまう。

「いつものことだけど酷い戦いだねえっ!」

苦笑いするカルマを先頭に前衛陣が斬りかかると、俺の出番はまったくないままに戦闘が終了してしまった。

サクラヒメが、

「『龍の揺り籠』で戦った時はまあまあ手応えがあったが、今のそれがしには物足りぬ気がいたす」

と言っていたが、それが全員の感想となるだろう。

地下28階からは、『ウェアドラゴンリーダー』という、さらにドラゴンに近い姿のウェアドラゴンが出現する。

『リーダー』が30匹も出てくるのはどうかと思うが、それでも俺たちを阻むにはあまりに足りていない。唯一面倒なのは吐いてくる火球ブレスだが、これも俺の『不動不倒の城壁』の前では豆鉄砲ほどの意味もない。

ウェアドラゴンリーダーが落とす素材は小さな龍の鱗なのだが、『スケイルメイル』という、鱗を並べて作ったような鎧にすることができるそうだ。ザコとはいえAランクモンスターが落とす鱗、その物理耐性、魔法耐性はかなり高く、高性能の鎧になるらしい。思えばこういった素材を大量に卸すのも、『大いなる災い』対策になるのかもしれない。

地下30階は通路が恐ろしく広くなり、天井も高くなる。こういうロケーションは大型のモンスターか大量のモンスターが出てくることになっている。

果たして出現したのは、緑色の鱗を持つ細身のドラゴンだった。

「あれは『ウインドドラゴン』ですね。最下級ですが、成体のドラゴンです。『龍の揺り籠』で戦った『フレアドラゴン』と同格のモンスターです」

というマリアネの説明からすると、俺たちの相手にはならなそうだ。

ただ、最初から飛行してこちらに迫って来るのは少し厄介だ。その数10匹となれば、小さな町一つを簡単に壊滅できる数である。

「『エアカッター』のようなブレスを吐いてきますので注意してください」

とのことなので、俺は最初化から『誘引』と『吸引』を発動して、『不動不倒の城壁』を構えた。『エアカッター』は風属性の真空の刃を飛ばす魔法だが、視認しづらいのが厄介だ。それを10匹から一斉に吐かれたら、さすがに俺たちでも危険である。

ウインドドラゴンはその名の通り風のように高速で飛翔しながら、その口から何かを吐き出す動作をした。よく見ると、わずかな景色の歪みとして認識できる、三日月型の刃がこちらに超高速で飛んでくるのがわかる。ゲシューラのそれほどではないが、かなり大型の『エアカッター』である。

もちろんそれらはオリハルコン製の盾に阻まれて、メンバーの元に届くことはない。逆に後衛陣から魔法が、前衛陣も『飛刃』スキルで斬撃を飛ばしてウインドドラゴンを一匹、また一匹と撃ち落としていく。意外と難儀しているのはウインドドラゴンの飛行速度が速いからだ。とはいえフレイニルの『聖光』、そしてドロツィッテの『レーザー』という、ダンジョン内では事実上無限速となる飛び道具の前では全滅は免れなかった。

「しかし、飛行するモンスターはやはり厄介だな。ダンジョン内だからよかったが、これが地上なら苦戦しそうだ」

「本当にそうだね。『大いなる災い』では現れないことを祈ろう」

ドロツィッテの言葉は、いわゆる『フラグ』という奴になりそうで怖い。俺の『天運』スキルが聞き逃してくれることを秘かに祈っておく。