軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23章 異界と冥府の迷い姫 06

『オットソノ技ハ勘弁ジャノゥ! グククククッ!』

笑いながら大きく飛びずさり、そのまま『悪魔』の群れの中に姿を消した人型『悪魔』のワーヒドゥ。

俺は『圧潰波』を放つために振ろうとした『万物を均すもの』を構え直して、メンバーの方を振り返った。

「戦うしかないようだ。『悪魔』たちは問題ないだろうが、あのワーヒドゥは注意をしよう」

「はいソウシさま。あのような邪悪な者はすぐに滅しなければなりません」

「要するにこっちを皆殺しにするって言ったんだろ? だったら返り討ちにしてやるだけさね!」

フレイニルとカルマが真っ先にやる気を見せ、他のメンバーもそれに続く。

スフェーニアが目を凝らして遠くを見ているのは、ワーヒドゥを探しているのだろう。

「ソウシさん、ワーヒドゥについては私のほうで捕捉をして、牽制をしてみます。まずは他の『悪魔』を倒してしまいましょう」

「助かる。よし、ではいつもの通りでまずは回りの『悪魔』を倒す。正面は俺がやるから、散った奴らを頼む」

「了解! ワーヒドゥだけ注意ね」

「『精霊』は守りに回すので、ラーニ達は自由にやってよいぞえ」

ラーニとシズナがそう付け足すと、俺たちの方は自然と陣形が決まってくる。

正面は俺、右にラーニとカルマとマリアネ、左にマリシエールとサクラヒメとライラノーラ、俺の後ろに『精霊』の鉄人形に守られたフレイニル、スフェーニア、シズナ、ドロツィッテ、そしてゲシューラ。

あまりに強力な布陣であり、リーダーとして不安はない。

俺が正面に向き直ると、数百の『悪魔』たちが一斉にこちらに突進を開始した。

同時に凄まじい数の魔法の槍が飛来してくる。俺はそれは『圧潰波』でまとめて相殺し、残ったものは『不動不倒の城壁』で受け止める。

お返しとばかりに後衛陣の魔法が炸裂し、瞬時に数十体の『悪魔』が消滅した。

正面から来るものは『圧潰波』で……と構えていると、『悪魔』たちは途中から左右に広がり、こちらを半円形に包囲するように陣形を取ってきた。しかも『圧潰波』の射程の外で足を止め、そこから一斉に魔法攻撃を開始してきた。

「戦術を考えている……いや、ワーヒドゥが指示を出しているのか」

『悪魔』が広がって密度が薄くなり、正面奥にいる人型悪魔・ワーヒドゥの姿が俺の目にも確認できるようになった。両腕を組んでただ立っているだけに見えるが、なにかをしゃべっている声がかすかに耳に届いてくるので、『悪魔』たちに命令をしているようだ。

「ソウシは守っててね! わたしたちがやってくるから!」

ラーニがそう言って、離れた場所から魔法を放ってくる『悪魔』たちに突撃していく。同時に他の5人も魔法の槍を避けながら、あっという間に『悪魔』たちの中に飛び込んでいった。

俺は後衛陣の前で、ひたすらに『悪魔』の放つ魔法を受け止めていた。もちろん半円に包囲されていて十字砲火にさらされているので、受け止めきれないものも多くある。しかしそれはフレイニルの『絶界魔法』による半透明の壁とシズナの『精霊』の鉄人形が盾となって防いでくれる。

一方、ラーニ達は、凄まじい勢いで小型『悪魔』たちを駆逐していっている。カルマなどは大剣の一撃で胴体ごと真っ二つ、ラーニやマリシエールたちも的確に急所の首を切り裂いている。ライラノーラの『装血術』による技は、人を超えた動きで『悪魔』を串刺しにしている。

「させませんよ!」

鋭い声とともにスフェーニアが矢を放つ。『悪魔』の群れの奥でワーヒドゥが動きを見せようとしていたようだ。矢は命中する寸前にワーヒドゥの腕に払いのけられたが、それによって動きを止めることには成功する。

他の後衛陣、フレイニル、ドロツィッテ、シズナ、ゲシューラは継続的にそれぞれの魔法を放って、『悪魔』たちを確実に倒していっている。特に背の高い八本足のクモ型は狙いやすく、ドロツィッテの光魔法『レーザー』やゲシューラの透明な真空刃を飛ばす魔法が有効で、すでに数体を屠っていた。

しばらく魔法を凌ぐことに徹していた俺だが、次第に弾幕が急に薄くなっていくので、じわじわと前に出られるようになった。

左右の包囲網はラーニ達によってすでに崩壊しつつあり、一部の小型『悪魔』は逃げようとしてワーヒドゥに命じられて戻ったりもしている。

俺がさらに前に出ようとした時、正面にいたケンタウロス型悪魔が3体、ワーヒドゥを守るように集まった。

「ソウシさん、ワーヒドゥはなにかを仕掛けてくるつもりでしょう!」

背中からスフェーニアの声が届いてくる。同時に矢が閃光となって飛んでいくが、ケンタウロス型に阻まれてワーヒドゥには届かない。同時に放たれたゲシューラの真空の刃がケンタウロス型の胴を半ばまで切り裂いたが、その時にはすでにワーヒドゥのいたあたりから黒い靄が大量に立ち上っていた。

「ソウシさま、ワーヒドゥは新しいモンスターを召喚したようです。『悪魔』のようなアンデッドのような、奇妙な力を感じます」

「この世界でも召喚できるのか。面倒な奴だな」

フレイニルの言葉に応じつつ正面を見ると、確かになにかが『悪魔』たちの後ろに出現したようだ。

数は6体……いや7体か。それは以前戦ったAランクアンデッド、『リッチレギオン』に似ていた。五メートルを超えるいびつな球体の身体、その上の方に複数の顔が横に並んでいる。

ただそれと異なるのは、本体はピンク色で、多くの人間の体を集めて形作られていることと、円周上に並ぶ灰色の顔は無表情な『悪魔』の無表情な人面ということだ。

その不気味な姿に、近くにいたメンバー全員が息を呑むのがわかった。

真っ先に言葉を発したのはドロツィッテだ。

「あれはなんだい? 多くの『悪魔』を固めて作ったモンスター……いや、フレイニル嬢はアンデッドに近いと言っていたね。とすると、もしかして『悪魔』のアンデッドということかな」

「そんな感じもするが、しかし『悪魔』のアンデッドというのも頭が痛くなる存在だな」

「『悪魔』が『神』の作った人間の失敗作であれば、アンデッド化してもおかしくはないのかもしれないけどね」

そういえば、ワーヒドゥたち『冥府の燭台』は、この『異界』を『冥府』、即ち死後のの世界だと考えているようだが、実際には『神』の実験設備でしかない。ワーヒドゥがもしアンデッドを召喚したというなら、逆説的にこの『異界』が『冥府』ではないという証明にもなるのだろうか。

ワーヒドゥたち『冥府の燭台』がそれを理解しているのかどうか――はもはやどうでもいい問題か。

いずれにしろすべて叩き潰すだけである。