軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6章 護衛依頼とアンデッド討伐  05

朝起きるとなぜかフレイニルが俺の腕に抱き着いていた。

「昨夜騒ぎで起きたらソウシがいなくなっていたからフレイニルが慌てちゃったの。少しは考えてあげてね」

とラーニに言われたが、言われてみれば確かに不安にさせてしまったかもしれない。彼女はまだ幼いところがあるし、その辺りは今後対応を考えておこう。

集合の号令がかかったので、装備を整え集合場所へと向かう。

俺たちはCランクパーティ『フォーチュナー』の隣に並ぶ。今日ももちろん総隊長付きだ。

「よう、昨夜は活躍したみたいだな」

『フォーチュナー』のリーダー、ジールが俺に声をかけてくる。後ろには昨日俺を洗浄してくれた女魔導師レイラと、身長ほどもある盾を持ったゴツい戦士のドルノ、そして忍者みたいな格好をした獣人族の女性ケーニヒがいる。

「ゾンビの肉まみれになりましたけどね。レイラさんのおかげで助かりましたよ」

「ゾンビはなあ。数が多いと誰かが汚れ覚悟で突っ込まないと終わらない時とかあるからな。フレイニルのお嬢ちゃんが『浄化』を使えてよかったじゃねえか」

「いや本当にそうですね。あのまま臭いが取れなかったら最悪でした」

「ククッ、女の子二人連れなんだから身だしなみには気をつけねえとな」

などと話をしていると号令がかかり、アナトリアが演説を始めた。

「昨夜は皆よく奮戦してくれた。疲れている者もいるだろうが、ここで日を延ばせば奴らはそれだけ数を増す。今日ここでアンデッドの根城を完全に破壊し、人々の憂いを絶たねばならん。諸君の奮闘を期待する!」

「おう!」と声を上げたあと、討伐部隊は森に向けて進軍を開始した。

いつもの通り冒険者100人が前、その後に200人の領軍が続く形である。

遠目にはまだアンデッドの城は見えないが、冒険者のうち数名は森の先になにかがあるのを感じているようだ。仲間内で「確かになにかある」というようなことを話している。

森まであと200メートルというところでアナトリアは進軍を一旦止めた。

そのまま自分だけが前に進み出て、水晶の付いた短い杖を掲げる。水晶が鋭く光ったかと思うと、森の奥に城のようなものがはっきりと見えるようになった。どうやら今のは幻覚の術を破る道具のようだ。

「ええ、あんなものが建ってたの!?」

「あんなに大きな建物が隠れていたなんて……。ソウシさまがおっしゃっていた通りですね」

ラーニとフレイニルが驚いたような顔をする。他の冒険者もざわついているが、さすがにCランクの『フォーチュナー』の4人は黙って城を睨んでいる。

「ここから先は敵地だ。警戒しつつ進軍!」

『フォーチュナー』の女獣人ケーニヒを先頭に森の中に入る。彼女は感知スキルに極めて長けていて、罠などを見つけるのも得意らしい。なるほどゲームで言う『 斥候(せっこう) 』というわけだ。

城の前までは何事もなく進むことができた。テラーナイトの一体すら出てこないのだから城の中で待ち受けているということだろうか。

アンデッドの城は、間近で見るとやはり巨大な建物であった。壁には窓一つなく、正面に両開きの大きな扉があるのみである。

「魔導師前へ。 礫(つぶて) 系魔法で扉を破壊する。魔法準備せよ」

アナトリアの指示で各パーティの魔導師総員25名ほどが前にでて精神集中を開始する。

「撃てっ!」

大量の石弾や岩の槍が扉に命中、扉は砕けて奥に吹き飛んだ。

扉の奥からモンスターが出てくるかと思ったがその様子はない。代わりになにか絡みつくような妙な気配が、ポッカリあいた入り口から流れ出てくる。

フレイニルが緊張した顔で俺の隣に来る。

「ソウシさま、非常に強い気配を感じます。力を持ったアンデッドが3体いる気がします」

「わかるのか?」

「はい、この間のリッチより強いと思います」

「ふむ……」

アナトリアに知らせようかとも思ったが、フレイニルの感覚がどこまで正確かは経験が少なすぎて保証ができない。知らせたとしても信憑性不明の情報では、何も知らせてないのと結局は同じことだ。

しかし誰にも言わないのも問題がある気がするな。誰か実力者には知っておいてもらった方がいいだろう。とすれば彼が適当か。

「すまないジール殿、ちょっといいだろうか」

「どうした?」

入り口を睨んだままジールが返事をする。

「ウチのフレイニルが、リッチより強力なアンデッドが3体いると言っています。一応気に留めておいてください」

「それは信用できるのか?」

「フレイニルはアンデッドに対して鋭い感覚を持っているようです。なにかのスキルかもしれません。ただ経験が少なく、どの程度信用できるかはまだ不明です」

「……わかった、覚えとく」

これでいいだろう。余計な事言うなと文句を言われても仕方のない話なのだが、ジールはその辺りも呑みこめる男のようだ。さすがというべきか。

俺がフレイニルたちのところに戻ると、アナトリアが指示を出し始めた。

どうやら冒険者の部隊を半分に分け、自分を中心とした部隊が城内に突入し、残りの部隊は城の外で待機、なにかあったら援護という形を取るようだ。

城内に100人が入って行っても渋滞するだけだし、外で待機する領軍を守る冒険者も必要だろう。

「よし、突入する。付いてこい!」

なんと総隊長のアナトリアが先頭になって入り口に向かっていく。確かに強力なモンスターがいきなり出てきたとき、Aランクが先頭にいれば被害は抑えられそうだが……。

俺たち3人は『フォーチュナー』に続いて城に足を踏み入れる。

そこはガランとしたロビーになっていた。奥に階段があり、左右には2本ずつ通路がある。

50人の冒険者が全員城に入ると、左右の通路から多数の気配が迫ってくるのが分かった。

左右に広がった冒険者たちが気配を察して構えを取ると、通路から『テラーナイト』がぞろぞろと歩いてきた。

「Dランクを前に、Eランクは補助!」

即席の部隊なのだが、それなりに連携して冒険者たちはモンスターに対峙している。『テラーナイト』の硬い鎧もDランクのアタッカー相手だと分が悪いようだ。次々と切り裂かれ、叩き潰され、貫かれて崩れ落ちる。

俺たちは中央にいるので今のところ出番はない。しかしアナトリアが階段の上を睨んでいるところからして、楽ができるわけではないようだ。

「ソウシさま、来ます……!」

フレイニルも階段の上を見て言う。

その直後、俺でも分かるほど強力な気配が階上から吹き下ろしてきた。

「フレイニル、聖光!」

「はいっ!」

階段を滑るように下りて来たのは、一際立派な鎧を身につけた戦士だった。いや、見た感じその黒い鎧の中身は空だ。要するにテラーナイトの上位版だろう。

特徴的なのは剣を持つ手とは反対の脇に兜を抱えていることで、結果としてその戦士には頭がない。ゲームで有名な『デュラハン』みたいだが、コイツは馬には乗っていないからその亜種だろうか?

「『ヘッドレスアデプト』、Bランクだ。手を出すな!」

アナトリアは鋭く叫ぶと、その首無しの鎧戦士に斬りかかっていった。といっても一瞬の後に剣と剣がぶつかる音が響き、アナトリアと鎧戦士の位置が変わっただけだ。残念ながらEクラスの俺にはまだ見切ることは叶わないらしい。

「っと、やべえぞ別のが来やがった。二体だ!」

ジールが目を向ける先には、同じく首無しの鎧戦士が二体いつの間にか階段を下りて来ていた。鎧が多少格落ちするところから見て『ヘッドレスアデプト』の下位モンスターだろう。

「『ヘッドレスソーディアー』か。俺たちで片づけるぞ」

ジールたち『フォーチュナー』が戦闘隊形を取る。

「ソウシさま、『聖光』撃てます!」

「待てフレイニル。『聖光』は中断、『後光』を用意してくれ。『充填』を使って強力な奴を頼む」

「あ、はいっ!」

フレイニルが再度精神集中に入る。

『フォーチュナー』が戦っているところに横から魔法を食らわせるのはマズいだろう。ただ補助魔法なら問題はないはずだ。

見た感じ、アナトリアと『アデプト』、『フォーチュナー』と2体の『ソーディアー』、どちらも今の俺たちに手を出せる戦いではないようだ。

アナトリアの戦いはレベルが高すぎてどちらが優勢かもわからないが、『フォーチュナー』の方は劣勢に見える。『ソーディアー』の剣は『 翻身(ほんしん) 』スキルの効果があるらしく攻撃に全く隙がない。

なおボスの登場と同時に『テラーナイト』の出現数も増えている。このままだとジリ貧の可能性もありそうだ。

「ねえソウシ、『後光』使っちゃっていいの?」

ラーニが聞いてきたのは、多数の冒険者の前で恐らく激レアスキルの『神属性魔法』を使わせていいのかという心配からだろう。フレイニルの争奪戦が始まったりしたら困る、というのは俺も同じだ。だが……

「ここは仕方ないだろう。出し渋って死人でも出たらフレイニルも悲しむだろうしな」

「まあそうなんだけど……」

「ソウシさま、『後光』いけます!」

フレイニルの合図を聞いて、俺は大声を張り上げた。

「弱体化の魔法を使う! 光注意! やれっ」

俺の合図を聞いてフレイニルが『神の後光』を発動。広いロビーが一瞬光に包まれる。

「なんだよ今の……って、コイツら動きが鈍ってねえか!?」

ジールが一瞬の隙をついて、『ソーディアー』の胴を薙ぐと、上下に別れた『ソーディアー』は床にガランと転がった。

あと一体は……と思っていたら、フレイニルを脅威と感じたのか急に方向転換をしてこちらに向かってきた。

俺は 咄嗟(とっさ) に盾を構え『ソーディアー』に向かう。そいつは滑るように走ってきたかと思うと、剣を叩きつけるふりをして俺の脇を通り過ぎようとした。

『翻身』スキルによるフェイント。だが残念、俺もそのスキルは持っている。

物理法則を無視した動きで俺はメイスを『ソーディアー』に叩きつける。

『剛力』『重爆』そして鍛えた『腕力』による高エネルギーの暴力。弱体化した『ソーディアー』の鎧は紙細工のようにひしゃげて吹き飛び、そのまま動き出すことはなかった。

「しいッ!」

離れたところで鋭い呼気。アナトリアの長剣が閃き『アデプト』を縦に両断した。

どう見ても剣が当たってないんだが、果たしてあれはスキルなのか彼女の腕なのか。

3体のボスが倒されたからか、『テラーナイト』の出現も収まったようだ。弱体化の効果もあってあっというまに残りは駆逐された。

直後に小刻みな震動が地の底から響いてきた。これはあれか、この城も同時に崩壊するとかいうやつか。

「撤収! 急いで城から出ろ!」

アナトリアの指示にしたがい、俺たちは速やかに城の外へと出たのであった。