軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22章 異界の門への道標  19

メンバーと相談の上、ライラノーラにかなえてもらう二つ目の願いは決まった。

俺は、艶然として立つライラノーラに向き直った。

「ライラノーラさん、もう一つの願いとして、『異界の門』を開く魔道具を稼働させるための知識と技術をいただきたいのですが、可能でしょうか?」

「そうですわね……。知識は可能ですが、技術は難しいかもしれませんわ。『根源』と同等の糧を得るのに必要なのはモンスターから採取できる『魔石』ですが、それを『根源』と同質のものにするのはわたくしにしかできませんので」

「そうですか……」

「ですが、もしソウシ様たちがこの魔導具を任意の場所で使いたいというなら、それをお手伝いすることは願いとして聞いて差し上げることができます」

「どういうことでしょう?」

「簡単なお話ですわ。わたくしがソウシ様たちの旅路にお付き合いいたします。ソウシ様の願いの一つによって、自由に動ける身体が再構築されましたから」

そう言いながら、両腕で自分を抱くような仕草をするライラノーラ。

それ自体はドキッとするほどの妖艶さを醸し出しているのだが、こちらとしてはそれどころではない情報が今の言葉には含まれていた。

「一つ目の願いはお話を聞かせていただくことだったと思うのですが……」

「ええ。その為には身体が必要ですから、自動的に再構築がなされたのです。今までにないイレギュラーな再構築だったので、この身体はこのダンジョンに縛られないようなのです。多分ダンジョンの外に出ても話ができるように配慮されたのでしょう」

一瞬「誰が配慮したんだ?」と聞きたくなったが、ライラノーラ自身『神』が作ったシステムなので、そのシステムの配慮なのだろうと勝手に理解することにした。

それに問題はもう一点のほうである。

「ライラノーラさんは、私たちと共に来ることは気にされないのですか?」

「もちろん。それよりわたくしは地上のことはそれほど知識もありませんし、共に行動させていただいたほうが助かるのです。そもそもソウシ様の願いによって再生された身体ですから、この身体の存在はソウシ様の生死と連動いたしますし」

「え……」

さらに重い事実をあっさり口にするライラノーラに、俺は一瞬凍り付いてしまった。

「それはもしかして、私が死ねばライラノーラさんもその身体を失うということですか?」

「そうです。ですがわたくしの場合肉体が失われるだけですから、ソウシ様が気にされる必要はありませんわ」

と言われても、こちらの感覚としては肉体の消滅はそのまま死である。自分の命とつながる命なんて、そんな重いものを背負わされるとは予想外もいいところだ。

俺が固まったままでいると、スフェーニアが溜息をつきながら腕を組んでうなずいた。

「なるほど、ここでもソウシさんのスキルが作用したのかもしれませんね。ライラノーラさんまで巻き込むというのも面白いところですが」

「なるほど、そう考えると、スキルというのは『神』が作った上位の存在までを対象にするわけか。まあ冒険者のスキル攻撃がライラノーラさんに通用するのだから当然なのかもしれないね」

ドロツィッテがそう応じながら、俺の方に目を向けてくる。

「それでソウシさん、彼女にお願いをしないのかい? そこまでの話なら、むしろ一緒に来てもらったほうがいいと思うのだけれど」

「ああ、まあ……そうだな。ライラノーラさん、では我々と共に来ていただいて、必要に応じてこの魔導具を起動していただけますか」

改めてそう願いを言うと、ライラノーラは微笑みながらうなずいた。

「かしこまりましたわ。ソウシ様のパーティの一員として、ソウシ様の命令を聞くという形にいたしましょう」

「そうしていただけるならありがたいですが、よろしいのですか?」

「ええもちろん。それにこの後も皆さまは『大いなる災い』にも対処されるのでしょう? その時も多少はお力になれると思いますわ」

またいきなり新しい言葉が出てきて、スフェーニアやドロツィッテが俺の背中をつついてくる。

「ライラノーラさん、その『大いなる災い』というのはなんでしょうか?」

「この大陸に時折出現する強大なモンスターのことですわ。以前にも申し上げましたが、わたくしはもともと『大いなる災い』が現れる時に、このダンジョンを作り出して人間に力を与えることを使命として与えられているのです」

「なるほど。では、次に来る『大いなる災い』がどのようなものなのかはご存じですか? 確か古には、『邪龍』という強力なドラゴンが現れたと聞いていますが」

「いえ、詳しくはわたくしも知る権能を与えられておりませんの。それよりこのダンジョンはそろそろ消滅いたします。まずは地上へと参りましょう」

ということで、まさかのライラノーラのパーティ加入となってしまった。

実はなんとなく、本当になんとなくだが、こうなるような予感はあった。メンバーたちの様子を見ても誰も驚いたり焦ったりはしておらず、むしろ当然のような顔をしている娘ばかりである。俺としてはフレイニルにまでそんな態度でいられるのは、少しばかりショックではあるのだが……。

もっともこれで『ソールの導き』はますますその存在感が高まってしまうだろうし、各国の代表者も俺たちの扱いにさらに苦心することになるだろう。

その心労に比べたら、俺の悩みなどちっぽけもいいところだが。