軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21章 アルマンド公爵領  20

その後は馬車を飛ばしたが、時折悪魔が出てくることもあって、その日のうちに鉱山まで着くことはできなかった。

急ぎの移動とはいえ夜はしっかりとテントを立てて休むことにして、夜はゲシューラが作った『通話の魔道具』でドロツィッテに連絡を取った。

どうやら予定通り昨日の夕方に悪魔たちの来襲があったようだが、特に問題なく撃退できたようだ。

「大型が1匹しかいなかったからかなり余裕はあったね。それより事前に物見の兵がソウシさんたちの戦いを見ていて将軍に報告をしてたんだけど、あまりに荒唐無稽で将軍がなかなかそれを信じなくてね。私が口を出してやっと納得してもらったよ」

などと笑いながら言われてしまった。

なお急ぎのため悪魔が落とした魔石は一部を除いて回収していなかったので、それが俺たちの戦いの証拠にはなるだろう。

就寝中の警備は6体の『精霊』に任せたが、夜中に悪魔が襲ってくることはなかった。

どうやら『悪魔』も夜は活動しないらしい。というのも、朝早くに出発をしたら、街道の脇で眠っていた小型悪魔を何体か見つけたからだ。 性質(たち) の悪い夢を見せられているような姿をしているが、感情もあるようだし、中身はやはり生き物ということなのだろう。

昼前に、緑の山脈が眼前に迫ってくると、街道はふもとに広がる森の中に入っていった。そしてその森が急に開けたかと思うと、目の前に広大な採掘場が現れた。

まず目に入ってくるのは、すり鉢状に掘られた地面であった。その穴は直径500メートルくらいはあるだろうか。緩やかな螺旋を描いてすり鉢の底まで道ができており、一見すると露天掘りをしている採掘場に見える。

ただその螺旋の道の横にはいくつもの横穴が開いていて、入り口から中にかけて木の枠などで補強がされている。トロッコの線路のようなものも見えるので、そこが坑道の入り口ということのようだ。

すり鉢状の穴の周りには30くらいの木造の建物が並んでおり、小さな集落を形作っているように見える。ドワーフの鉱山もそうだったが、ここでは一つの生活圏が形成されているのだろう。

ただその建物の多くは半壊の状態にあった。中に人がいたとして、悪魔が襲ったというなら、残念ながらそこにいた人間はもう生きてはいないだろう。

採掘場の周囲は丸太で組んだ壁で囲まれていて、俺たちが入ってきたところには本来門があったはずなのだが、それらは悪魔によって完全に破壊されていた。

さらによく見ると、周囲には戦いの跡がいくつも見られた。残っているのは主に魔法が着弾したと思われる跡だが、血痕と思われるシミや、何頭か馬の死骸も見られた。人間の死体はないようだが、血にまみれた防具の破片のようなものが散らばっていて、悪魔との戦いが行われていたのは間違いないだろう。

さらに周囲を見回すが、『異界の門』は見当たらなかった。すでに消えてしまったのかもしれない。

すり鉢状の採掘場の中には3体の巨大クモ型悪魔と30体ほどの双頭の小型悪魔がうろついていた。そいつらは坑道の穴を覗いては別の穴に移動して、という動きをしきりに繰り返している。

悪魔たちは身体の大きさから坑道には入れないようで、坑道の中に逃げ込んだ獲物が出てくるのを待ち構えているという雰囲気だ。とすれば、生存者は坑道へと逃げ込んだと見てよさそうだ。

「とりあえずあれ倒しちゃわない?」

ラーニが採掘場を見下ろしながら言ってくるので、俺はうなずいて皆の方を振り返った。

「スフェーニア、シズナ、ゲシューラ、魔法で何体か倒してくれ。ただ坑道の中には魔法が入らないように注意して欲しい。人が隠れている可能性が高い」

「わかりました」

「うむ、任せるのじゃ」

「任せよ」

3人が前に出て、氷と岩の槍を採掘場へ向かって射出した。それぞれ3体ずつを仕留めたようだ。

ほかの悪魔が攻撃に気づいて一斉に俺たちの方に顔を向け、そして凄まじい勢いで駆けあがってくる。

そいつらが接近しきる前に、さらにスフェーニアたちの魔法が数体ずつを屠る。

もちろん悪魔が放ってくる岩の槍はすべて俺が受け止め、接近してきたものはラーニ達が一瞬で倒してしまう。

ほどなくして採掘場をうろついていた小型悪魔は一体もいなくなった。

「フレイ、なにか気配を感じたりするものはあるか?」

「お待ちくださいソウシさま」

俺が確認をするとフレイニルは側にやってきて、それから採掘場の方をじっと見つめながら気配を探り始めた。

「……どこかにひどく邪な気配があるのを感じます。しかしとても深いところにあるようで、どこかまではわかりません。ただこの周辺の、地下にあるのは間違いありません」

「とすると、やはりここにも『冥府の燭台』の拠点があるのかもしれないな。だが地下に潜っているならすぐには出てこないか。どちらにしろ今優先すべきは坑道に生存者がいるかどうかだ」

俺は振り返って全員を見渡した。

「4つのチームに分ける。俺とフレイニルで一つ、スフェーニアとラーニ、サクラヒメで一つ、マリシエールとシズナで一つ、カルマとマリアネ、ゲシューラで一つだ。それぞれ手分けして坑道に入って生存者を確認して、もしいたら外に連れてきてくれ」

「わかりました」

「りょーかいっ」

俺たちは採掘場の巨大なすり鉢状の縦穴の外縁に作られたらせん状の坂道を下りていきながら、順次横に開いた坑道に入っていく。俺とフレイニルは最後まで表に残り、4つ目の坑道へと入っていった。

坑道は入り口付近こそ狭かったが中はそこそこ広く、崩落防止用の木枠が壁に組まれていたり、トロッコ用のレールなども通っていたりと、歩くのにそこまで難儀はしなかった。灯火の魔道具が等間隔に並んでいて、視界も問題ない。灯火の魔道具は魔導具の中では安価だが、それでも安いものではない。それが使われているのだからこの鉱山はかなり予算がつぎこまれているのだろう。

当然ダンジョンではないのでモンスターらしき気配はない。声を上げようと思ったが、誰かいれば気配感知にひっかかるはずなので、そのまま黙って先に進んでいく。

途中で鉱石を乗せたトロッコがあったり、ツルハシなどが落ちていたりする。しばらく進むと奥に人の気配が感じられた。数はかなり多く、100人近くいるようだ。

いきなり俺たちが姿を見せても驚かれるかと思ったので、あえて声をかけることにする。

「生存者はいるか! こちらは冒険者パーティ『ソールの導き』だ! 外の悪魔はすべて討伐した。生存者がいるなら出てきてくれ!」

俺が二回同じ呼びかけをすると、奥の気配が一斉に動き出した。

立ち止まって待っていると、最初に姿を見せたのは、軽装の鎧を身につけた兵士たちだった。警戒をしながら歩いてきて、俺たちの姿を見ると10メートルほど先で立ち止まった。

そしてその兵士たちの奥から、身なりのいい金髪の中年男性と、銀髪の少女が現れた。

それは先行して鉱山の調査に赴いていたアルマンド公爵と、ミランネラ嬢に間違いなかった。