軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20章 『龍の揺り籠』、そして獣人の里へ  01

「ソウシ・オクノ名誉伯爵を名誉侯爵とし、また終身護帝将軍の称号を与える。また帝国として、オクノ名誉侯爵を『黄昏の庭』の総督と認め、当地における一切の権限を彼に与えるものとする」

『黄昏の眷属』との戦から約二週間後、未曽有の戦いの勝利にいまだに酔う帝都プレイオーネの帝城において、戦の論功行賞が 厳(おごそ) かに行われていた。

最大の功労者は言うまでもなく、と自分でいうのはいささか口幅ったいが、言うまでもなく俺であり、その褒賞は前代未聞をいくつも重ねたものとなっていた。

『名誉侯爵』などというものが帝国で初の地位である上、『終身護帝将軍』などという称号も新しく作られたもので、さらに言えば『黄昏の庭』の総督などという地位は人類の歴史上初、というより誰も想像しえなかったものである。

要するに今回の戦いで帝国軍が勝ち、『黄昏の庭』を植民地としたという仮の扱いにして、その上で総督という地位につけて、俺が『黄昏の庭』で『黄昏の眷族』たちを統べるという形にしたわけだ。ちなみにこれはかなり帝国の内部でも扱いが揉めたらしいが、皇帝陛下によると「揉めたというより誰も案を出せなかったというのが正しいでしょうね」とのことだった。

正直なところ俺としては『黄昏の眷族』や『黄昏の庭』などとは無関係でいたかったのだが、あのミギティマたちとのやり取りは多くの冒険者や、なによりマリシエールとドロツィッテに聞かれていることもあり、うやむやにできるものではなかった。

一説では俺を『黄昏の眷族』の王として扱う案もあったらしいのだが、さすがにそれは俺の性格などを考えて皇帝陛下が却下したらしい。

ともかく『終身護帝将軍』という称号とともに、実態は別として「オクノ名誉侯爵はあくまで帝国に 与(くみ) するものである」というイメージを持たせておいて、貴族たちの心配を逸らそうという狙いもあるようだ。このあたりのバランス感覚は庶民出身の俺にはまったく理解できないので、すべてプロフェッショナルに任せるしかない。

「謹んで拝領いたします。この恩に報いるため、今後も皇帝陛下、そして帝国のためにこの身を尽くす所存でございます」

と形式通りの挨拶を述べ、若き皇帝陛下自ら手渡してくれた書状を手に、俺は陛下の御前から身を下げた。

その後フレイニルもその働きと、次期聖女という肩書から個人として褒賞を下賜され、また『ソールの導き』もパーティとして賞せられることになった。なおフレイニルは、戦場で使った『神霊の猛り』の効果と、戦いの後に使った『生命魔法』の強力な回復力の強さが冒険者の間で話題になり、彼らの間では完全に『聖女』と認識されるようになっている。

すべての典礼が終わり、夜の祝賀パーティで多くの帝国貴族たちの挨拶攻めにあい、帝都の自宅に戻ることができたのは夜も更けてからであった。

翌朝、ルーティンであるトレーニングは欠かさず行い、その後全員で朝食をとる。

帝都にある我が家の食堂は、20人ほどが掛けられるテーブルが中央に置かれ、主人席の後ろには暖炉まで 設(しつら) えられたいかにも貴族の食事場所といった感じの部屋である。最初は慣れなくて尻のあたりが落ち着かなかったが、今は9人で席に着いて食べるのもすっかり当たり前になってしまった。

なお、料理については結局家にいるときは使用人の3人に作ってもらっている。本来なら料理人を雇うところらしいが、俺たちは外に出ていることも多いので今のところは先送りしている。

「ねえソウシ、そういえば私たちって、お城にあるダンジョンに入る権利を持ってたんじゃなかったっけ?」

食事が一段落してお茶が出てくるタイミングで、狼獣人少女のラーニが耳をピクピクさせながらそんなことを口にした。

「『龍の揺り籠』だったか、たしかに入るにはいいタイミングかもしれないな」

俺自身すっかり忘れていたが、この帝国に来た時に『カオスフレアドラゴン』討伐の褒賞として、帝城の地下にある、限られた者しか入れないクラスレスダンジョン『龍の揺り籠』への入場1回の権利をもらっていた。実は今回の褒賞でもさらに3回の入場権をもらっている。なんにせよ一度は入ってみたいダンジョンであるし、攻略するなら今がベストのタイミングかもしれない。

そううなずいていると、スフェーニアやカルマが反応した。

「武闘大会や先の戦のこともあってすっかり忘れていましたね。冒険者として活動するなら強力な武具や道具などは手に入れておきたいですし、いいのではないでしょうか」

「『黄昏の眷属』との戦いもちょっと物足りなかったし、珍しいダンジョンならぜひとも入ってみたいもんだよ。これは楽しみだねえ」

ほかのメンバーも乗り気なので、『龍の揺り籠』に挑戦するのは決定となった。

「数日後に城へ呼び出される予定だから、その時に皇帝陛下に申請してみよう。ただこの後、『冥府の燭台』を追わないといけないから、あまり長い時間はかけられない。ダンジョンに入るのは最長で3日間ということにしておくか」

「それがいいと思います。3日あれば私たちならかなり奥まで行けるでしょう。Aランク以上の難易度があるダンジョンだと聞いていますので、無理はしないようにしたほうがいいと思います」

マリアネが久しぶりにパーティの専属職員らしく注意をすると、ラーニがニヤッと笑った。

「でも私たちなら余裕で一番奥まで行けそうじゃない? 踏破されてないダンジョンなんだよね?」

「そうですね。王国の『王家の礎』もそうですが、クラスレスダンジョンが踏破されたという情報は伝え聞いていません」

「だったらまた『ソールの導き』の伝説が増えるかもねっ」

ラーニのお気楽さはいつもの通りだ。だが一度地下5階まで入った『王家の礎』の感じだと、決して楽観視できるダンジョンではない。どこまで潜るかは入ってみてから考えることになるだろうが、この世界にまだ面倒ごとが残ってる以上、あまり長期間入っているわけにもいかない。それくらいに責任のある身になってしまったのはさすがに感じているところである。