軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18章 帝都 ~武闘大会~  33

次のカルマ戦は一瞬で終わってしまった。

相手は片手斧と盾のオーソドックスな戦士だったのだが、暴風のようなカルマの連続攻撃の前に、為すすべなく場外まで押し切られてしまったのだ。

カルマは大剣使いではあるが、虎獣人特有の動体視力と反射神経の良さをトレーニングで十分以上に伸ばしていて、さらに『剛力』の上位スキルまで得ているため、相手の攻撃を潰しながら連撃が繰り出せる。しかも『獅子吼』という自己強化スキルまで併用しており、その恐ろしさは対戦相手でないと分からないだろう。

「あの虎の姉ちゃん間違いなく強いな。なんだよあの連続技は」

「しかも的確に相手の攻撃を潰すからな。力とスピードだけじゃあねえ」

「今年はちょっと番狂わせが多すぎんよ。賭けが荒れるぜこりゃあ」

なんていう観客の声が聞こえてくるのも楽しい。番狂わせの一人としては少々申し訳ない気もするが。

前半4試合が終わり、少しインターバルが入る。

いつの間にか力の入っていた肩を休ませていると、カルマが貴賓席にやって来た。

「いや~、やっぱ武闘大会は楽しいねぇ。あそこまで剣が振れることもそうはないからなおさらだよ」

「いい戦いだったな。一方的に見えたが、実際はどうだったんだ?」

「あ~、多分見た目よりは結構拮抗はしてたと思うよ。相手だって只者じゃないからね。ちょっとだけ危ないところもあったよ」

「やっぱりそうか。それでも圧倒しているように見えたんだからカルマの腕は確かだな」

と褒めると、カルマは「ソウシさん褒め過ぎだよ」と言いながら、恥ずかしそうな顔をして俺の肩をバーンとはたいた。

「ところでカルマは、その前の試合は見ていたの?」

その後もニヤニヤしていたカルマだが、スフェーニアに声をかけられて真顔になった。

「あれもすごい試合だったねえ。途中で勝負ありかと思ったら、あそこで魔法が出るとは思わなかったよ」

「あの魔法、カルマはどう思った?」

「ちょっと嫌な感じがしたね。こう首筋にゾクッとくるっていうか。かなり油断できない相手だね、あの男は」

「私たちも同じ意見よ。明日は気を付けてね」

「もちろん。ソウシさんに当たるまでは負けるつもりはないしね」

少し嫌な雰囲気になりつつも、インターバルが終わり、後半戦の開始が告げられた。

第5試合はラーニの出番だ。

舞台上の彼女は完全にいつも通り。相手は長身の女戦士で、柄の長いハンマーが武器のようだ。ラーニは2試合連続で女性相手になる。

『始めよ!』

コールと同時にラーニは『飛刃』を飛ばす。

ほぼ同時に『疾駆』で距離を詰めるが、そこで相手の女戦士がハンマーを大振りした。

当たらない間合い。だが、その瞬間ラーニの身体が何かに弾かれたように後ろに飛ばされた。

「『衝撃波』ですね。珍しいスキルですが、ソウシさん以外でも当然持っているものはいます」

とはマリアネの説明だ。なるほど他人が使っているのを初めて見たが、想像以上に厄介なスキルだな。

なにしろ『衝撃波』自体はまったく見えないのだ。その上効果範囲は扇状に広がるため、回避するのも難しい。唯一の救いは武器の振りで察知だけはできるということか。

ラーニは何度か接近を試みるが、その度ごとに『衝撃波』に阻まれて飛ばされる。といっても、自分から後ろに飛んだりしてダメージは最小限にはしているようだ。

ラーニが『飛刃』を飛ばし、相手が避けたところに『疾駆』で迫る。しかしそこを『衝撃波』で押し返されてまた距離が開く。そんなやり取りを10回ほど繰り返したあと、ラーニの構えが微妙に変わった。

「ここで決めるつもりだね、ラーニ」

カルマがそう言うと同時に、ラーニが動いた。

『飛刃』で三日月の斬撃を飛ばし、その後ろを『疾駆』で追いかける。

相手は横に逃げ、ハンマーを振りかぶる。

ラーニは『翻身』で瞬時に進行方向を修正、正面に女戦士をとらえる。

女戦士がハンマーを水平に振る。微妙に空間が歪んで見えるのは『衝撃波』を使った証拠だ。

そこでラーニが飛ぶ。『疾駆』『跳躍』を使った超高速の跳躍。一気に衝撃波の範囲を脱し、そこからさらに『空間蹴り』で地面に戻る。

女戦士もラーニの立体攻撃は考えていたようで、飛び上がったラーニを迎撃しようとハンマーをすぐにひきつける。しかしラーニの動きはそれよりも速かった。

地に足を着けた瞬間再度『疾駆』。しかも先ほどまでより動きが段違いに速い。相手の目を慣れさせての奇襲という頭脳プレー。申し訳ないが、ラーニがそんなことをするとはと少し驚く。

女戦士は距離を取ろうと後ろに下がるが、さすがに純粋なスピード勝負では相手にならない。接近を許し、ラーニの連撃にさらされる。

それでも重いハンマーでよく渡り合っていたが、ラーニの『紫狼』に腕を数カ所斬られるとハンマーを振れなくなり、女戦士は両手をあげて降参した。

「ラーニが本気で動くとキツいねえ。相手もよく対応してたけど、接近戦だと手数の勝負になるからねえ」

カルマが腕を組んでうんうんとうなずいている。2人は幼馴染なので、やはり嬉しさもひとしおといったところか。

「『衝撃波』をああやって避けるの初めて見たわ」

「普通は遠距離での差し合いか、体力切れを待つかのどっちかだもんな」

「あそこまでスピードが速くて、しかも剣技まで強力な冒険者ってそうはいねえもんな。いやぁ、今日もいい試合が多いぜ」

観客の満足度も高そうで、リーダーとしても一安心だ。

その後『ポーラードレイク』のジェイズも危なげなく二回戦を勝ち上がった。

相手は魔法も使うトリッキーな短剣使いだったのだが、完全に正面から破ってみせた彼の実力は本物だろう。

「やっぱジェイズは安定してんな。さすが毎回4強に残る男。しかし毎回マリシエール殿下のいる山だから決勝までいけないという不運の男でもある」

と観客が言っていたのが耳に残った。