軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4章 新たな街へ  09

翌朝日が昇る前に宿を出て、町の外、街道のはずれにフレイニルと一緒に向かった。

もちろんトレーニングをするためであるが、自分を鍛えるのもおろそかにはできないため、フレイニルには俺と同じトレーニングを負荷を軽くしてやってもらうことにした。

彼女も『覚醒者』ということで身体能力はすでに並の大人よりも高い。ただ身体もまだ成長途中な感じであるので、鍛えるのはスキル中心になる。

とにかく『筋力』『体力』『走力』『視力』『動体視力』など意識させてトレーニングをさせる。やるのは基本的にひたすらの反復練習だ。どうやらこの手の作業は苦にならないらしく、フレイニルは黙々と言われた動きをこなしている。

「どうだ、急に武器が扱いやすくなっただろう?」

「はい、不思議な感覚です。こんなこと今までしたことなかったのに……」

フレイニルに与えたのは長さ2メートル足らずの槍である。俺と同じメイスでも良かったのだが、やはり少女に接近しての殴り合いをさせるのは気が引けた。

本当なら弓矢などがいいのだろうが、何となく勘で彼女はゆくゆくは魔法使い系になるのではないかと感じている。まあフレイニルは華奢な少女だし、ゲーム的に考えたらそれが自然だろう程度のアホな感覚でしかないのだが。

ともかくそうなれば杖を持つことになるだろうし、槍スキルの方がまだ無駄にならないだろうと判断した。

ちなみに今のところ彼女には、それまで着ていた白い簡易ドレスの上に軽鎧を身につけてもらっている。防具をつけて気が付いたのだが、胸当てがかなり窮屈そうで、彼女の体型の一部に年齢に似つかわしくない部分があることが判明した。いやだからなにと言うこともないのだが。

その日は一日トレーニングをし続けたが、彼女は弱音一つ吐かなかった。ただ俺が隣でダークメタル棒を振り回したりしているのを見て目を丸くしたりはしていたが。

ともあれ俺が持っている普通のスキル群と同じものを一通り身につけられたと思う。

身体の動きが朝までとはまるで違うと言って、フレイニルは少し嬉しそうな顔をしていた。自分に自信がつけばダンジョンに対する感覚も変わっていくだろう。彼女の場合はまずはそこからだ。

翌日も同じようにトレーニングを行った。

フレイニルのスキルも全体的に1段階あがり、どうやら明日にはダンジョンに向かえそうだ。

問題はモンスター相手に槍を突けるかだが、それについては荒療治を行うことにした。

「よし、突け」

「でも……っ」

槍を構えるフレイニルの前で、俺は防具を外した無防備な状態で仁王立ちになる。

なんのことはない、俺をモンスターだと思って槍を突きだすという訓練である。

もちろん刺し殺すつもりで突かないと意味がないので、それは強く言い聞かせてある。『鋼体』スキルがあるから効かないことも伝え済みだ。だからこれはむしろ精神的なトレーニングである。

フレイニルがなかなか思い切らないので、俺は段階を踏むことにした。

「じゃあまずは軽く突け。先が当たる程度だ。それならできるだろう?」

「は、はい、やってみます」

恐る恐る槍を突きだすフレイニル。震える槍先が俺の腹に当たり、『鋼体』スキルによって弾き返される。

「すごい……硬いです」

「これがスキルの力だ。さあ、効かないと分かったらもう少し強く」

「はい、行きます……」

そんな感じで徐々に慣らしていくと、最後には全力で突けるようになった。さすがに全力の突きだと先が1センチほど刺さるが、もちろんすぐに『再生』する。

傷が急速にふさがる様子を見てフレイニルは目を輝かせた。

「傷がすぐに治ってしまうんですね。まるで魔法みたい……」

「そうだな、スキルはまさに魔法だ。もちろん魔法が使えるようになるスキルもあるぞ」

「えっ!? それはどうやって身につけるのですか?」

「ダンジョンのボスを倒すんだ。そうすれば特殊なスキルを何か一つ得ることができる。運がよければそれで魔法が使えるようになる」

「ソウシさまは?」

「残念ながら俺は魔法に関するスキルは持ってない。多分魔法の神様に嫌われてるんだろうな」

と俺がふてくされて見せると、フレイニルはふふっと笑った。だいぶ心に余裕が出てきたようだ。

「俺の勘だとフレイニルはきっと魔法が使えるようになると思う。どうだ、明日一緒にダンジョンに入ってみないか? ボスを倒して特殊スキルを得るのを目標にしよう」

「本当ですか……? ソウシさまがそうおっしゃるなら、ご一緒させていただきます」

「ああ、今のフレイニルなら大丈夫。慣れればボスだって勝てるようになる。俺も手伝うからな」

「はい、頑張ります」

そう意気込むフレイニルの表情に、今までにない活力のようなものを感じた。もしかしたら『勇敢』とか、そんな精神系スキルが身についたのかもしれないな。こういった精神的なものは解決が難しかったりするものだが、スキルのおかげでそこが楽になるならありがたいことだ。

翌朝、俺とフレイニルはFクラス大岩ダンジョンへと向かった。

入り口で「いけるか?」と声をかけると、フレイニルは「大丈夫です」と力強く答えた。

その勢いのまま俺たちはダンジョンへと入って行った。

すぐに出てくるゴブリン1匹。さあここが運命の分かれ道だ。フレイニルが冒険者としてやっていけるかどうかの重大な分岐点。

棒を振り上げて突っ込んでくるゴブリンを前にしてフレイニルは少し固まってしまったようだ。俺はその肩に手を置いて「大丈夫」と声をかける。

するとフレイニルは「行きます」と力強く答え、一直線に向かってくるゴブリンめがけて鋭く槍を突きだした。

その槍先は見事にゴブリンの胸を貫いた。槍を引くとゴブリンの死骸が地面に崩れ落ち、素材を残して消えていく。

「ふぅ……これで倒したんですよ……ね?」

フレイニルが半分放心したような顔で俺を見上げた。俺が頷いて「よくやったな」と褒めてやると、その顔が安堵の表情に塗り替わった。

「よかった……できました。ソウシさまのおかげです」

「フレイニルが頑張ったからさ。しかしこれで終わりじゃないぞ。今日は4階まで行く」

「はい!」

というわけで、その後フレイニルと共に4階まで下りていった。

フレイニルは途中で冒険者レベルが上がったようで、外から見ていても見違えるように動きがよくなっていく。

ロックリザードの鱗も最初は貫くのに苦労したが、何匹かと戦ううちに槍先がしっかりと刺さるようになり、最後はフレイニルだけでとどめが刺せるようになった。

ボアウルフはさすがに正面から戦うのは無理なので、俺が突進を受け止めているところを横から滅多突きさせた。そこでレベルがさらに上がったらしく、フレイニルは自分の能力の変化に驚いていた。

「今日はここまでかな。この後またトレーニングをして町に戻る。戦いで得た経験を訓練に活かすんだ」

「はい!」

いい区切りがついたので、今日のところは引き上げることにする。

しかし自分のルーティンにフレイニルを付き合わせていると、冒険者としては結構ハードなことをやっているのではないかと思わないではない。

ま、俺は楽しくてやっているだけだし、フレイニルも辛くなれば何かアクションを起こすだろう。それまでは必要なことだと思って付き合ってもらうとしよう。