軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17章 帝都への長い道  23

ガッシェラの街にはE、D、Bクラスのダンジョンが一つずつあった。

ドラゴン討伐の翌々日から、休みを入れて4日かけてそれらすべてを回った。なおEとDは一日で両方踏破。Bは一泊した。

E、Dクラスについては全員耐性スキルの新規取得かレベルアップにとどまった。

Bクラスでは俺は『誘引』のレベルアップ、フレイニルは『衝撃吸収』のレベルアップ、ラーニは『貫通』のレベルアップ、スフェーニアは『必中』のレベルアップ、マリアネは『 湧力(ゆうりょく) 』のレベルアップ、シズナは『鉄壁』のレベルアップ、カルマは『不動』の上位スキル『 不撓(ふとう) 』の新規取得、サクラヒメは『剣加速』のレベルアップだった。

レアボスも複数出現したが、宝箱は『オリハルコンインゴット』などの素材がメインで、残念ながら新しいアイテム類の取得はなかった。

なおダンジョン踏破にはドロツィッテ女史もオブザーバーとして参加をした。

「私の常識がすべて崩れるほどのダンジョン攻略だったね。『ソールの導き』がなぜこれほどまでに強いのか嫌というほど理解できた気がするよ。そしてギルドで預っている資産が地方領地の年間予算に匹敵するほどの額になっている理由もよくわかった」

Bクラスダンジョンから戻ってきた夜、もはや『ソールの導き』と共にいるのが当たり前のようになっているドロツィッテ女史が、宿の食堂で優雅に果実水を飲みながらそんなことを言った。

「普通のパーティとまるで違うというのは自覚しています。なにしろ私は最初にFランクダンジョンで会ったボスがレアボスでしたからね」

「ふふっ、本当に信じられない話だね。しかもその時はパーティは組んでいなかったのだろう?」

「ええ、一人で倒しました。『興奮』というスキルのおかげですね」

「そのスキルも珍しいものなんだけれどね。ところで『ソールの導き』はこれからどこに向かうのかな」

「サクラヒメの故郷であるザンザギル領に向かいます。その後ドワーフの里に寄って、武器を調達できたら帝都へと向かいます」

「それだとひと月以上はかかりそうだね。帝室にドラゴンはそのタイミングで到着すると伝えておこう」

「よろしくお願いします」

「3カ月後には帝都で武闘大会が開かれるから、それまでには必ず着いておかないといけないよ」

ドロツィッテ女史が意味ありげに微笑んで言うと、その言葉にメンバーの何人かが反応した。

ラーニとカルマは自分も出たいという感じだろう。フレイニルやスフェーニア、シズナが俺をじっと見ているのは、俺が出場するのかどうかが気になるからだろうか。

「その、武闘大会そのものは興味がありますが、別に自分が出場するつもりは……」

「ソウシが出ないはないでしょ」

「ないねえ」

「ないじゃろうなあ」

ラーニとカルマとシズナが俺の言葉をさえぎると、フレイニルとスフェーニアも同調して、

「ソウシさまのお力は、皆に伝えなければならないと思います」

「ソウシさんが出場しない武闘大会にはなんの意味もありません。ぜひお出になるべきです」

などとたたみかけてくる。

マリアネとサクラヒメも無言でうなずく中、ゲシューラだけが我関せずの態度だ。いや、彼女の場合『武闘大会』というもの自体よく分かっていないのかもしれない。『黄昏の眷族』には皆が集まってなにかするという感覚があまりないらしい。

「俺は大会みたいのはあまり好きじゃないんだよ」

今回のドラゴン戦でも第三者から見ると完全にイキったおっさんになっていたし、これで武闘大会などに出たら完全に痛いおっさんになってしまう気がする。

もっとも『英雄』なんて呼ばれてる以上この手のイベントに出ないということは許されないのも分かってはいるが……少しくらい抵抗してもいいだろう。

「その顔だと避けられないというのは理解しているんだろう?」

含み笑いをしながら、俺の考えを的確に突いてくるドロツィッテ女史。さすがにグランドマスターの目は誤魔化せないか。

「……皇妹殿下が出場されるというお話も聞きますし、流れ者が大会を荒らすのも問題があるのではと思うのですが」

「くふふふ、妙なことを気にするんだね。そもそも武闘大会の参加者の半分は流れ者だからなんの問題もないよ。それにマリシエール殿下がお出になるからこそソウシさんの出場は必要になってくると思うのだよね」

「どういうことでしょう?」

「もし『黄昏の眷族』が攻めてきて大きな戦いが起きるのなら、ソウシさんがどれほどの存在なのかというのは帝国の臣民に広く周知する必要があるからね。もし帝国最強の呼び声も高いマリシエール殿下を負かす者が現れれば、それだけで士気が上がるというもの。ソウシさんが戦いに関わらないというなら話は違ってくるけれど、ね」

そこでドロツィッテ女史はじっと俺を見つめてくる。それがこちらの本意を探っている視線であるというのはさすがに分かる。

「自分が強い力を持っているとは自覚していますので、人の存亡をかけた戦いから逃げるつもりはありませんよ。まあ『悪う……『天運』スキルを持つ以上、嫌でも関わると思いますし」

俺の答えに満足したのか、ドロツィッテ女史は屈託のない笑みを浮かべた。

「ふふふっ、それを聞いて安心したよ。ソウシさんが逃げるような人間じゃないのは重々承知はしていたけれどね。さて、そういうことなら武闘大会へは出るということで大会の運営の方には伝えておくよ。冒険者ギルドも大会運営に噛んでいるからね」

「あ、私も出るから」

「アタシも出るよ」

予想通りラーニとカルマも名乗りを上げた。

「いいね。『ソールの導き』から3人出場ということで申し込んでおこう。二人も間違いなく大会で上位に行ける力を持っているからすごく楽しみだね」

「やった。ところでドロツィッテさん、さっきの帝国最強のマリシエールってどういう人なの?」

ラーニの質問に他のメンバーも興味を持ったようだ。そういえばマリシエール殿下の話は皆には伝えてなかった。まあ話をすると確実にからかわれるから避けていたのだが。

「マリシエール殿下は皇帝陛下の 妹御(いもうとご) だね。冒険者としても非常に実力が高く、帝国中のダンジョンを回って力をつけた後は、複数の『黄昏の眷族』を倒したりと非常な活躍をしている人物さ」

「へえ、そんな人がいるなんて知らなかったわね。王国って意外と帝国の噂が入ってこないのかな」

「ところでそのマリシエール殿下は御年はいくつくらいなのでしょうか? ご結婚はされているのですか?」

その質問はスフェーニアがしたのだが、質問した瞬間その場に緊張が走った……ような気がした。

「年齢は19と聞いているね。まだ相手はいらっしゃらないようだけど、身分が高いことに加えて、冒険者として名をあげすぎてふさわしい殿方がいない、ということだろうね」

ドロツィッテ女史がそう答えると、メンバーのうち数名の目が俺に注がれる。なにを言いたいのかはわからないではないが、ここで反応したら 藪蛇(やぶへび) もいいところだな。

「ソウシさんが出場すると、たしかに別の意味で荒れるかもしれませんね」

あまりに意味深なスフェーニアの言葉にも、俺は無反応を貫きとおした。