軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17章 帝都への長い道  06

セーフティゾーンは、『ソールの導き』以外ではもう1パーティが野営をしていた。

Aクラスダンジョンは当然ながらAランクパーティしか入ることはできず、王都といってもAランクパーティはそれほど多くない。しかも今は例の『悪魔』襲撃があったばかりで高ランクパーティが調査や防衛の依頼に狩りだされていて、ダンジョンに入るパーティはほとんどいない状態らしい。

俺たちがティタノボアの高級肉で焼き肉を堪能していると、そのもう1パーティのリーダーらしき若い男性が声をかけてきた。赤い短髪の、真面目そうな青年である。

「すまない、俺はAランクパーティ『ファントム』のリーダーでクレイグという。貴方たちは『ソールの導き』だろうか?」

「ええそうです。私がリーダーのソウシです。初めまして」

「ああ、初めまして。と言ってもこちらは貴方たちのことは見知っているのだがな。城門前の戦いはすさまじかった」

そう言って青年は俺の近くに腰を下ろした。

「ああ、あの時城門の守りについていたのですね。余計かとは思ったのですが、手を出してしまいました」

ちらと見ると、男3人女2人のパーティのようだ。リーダーのクレイグ青年もそうだが、いずれも見るからに手練れだとわかる雰囲気を放つ冒険者たちである。

「あの大型はこちらも面倒に思っていたところだ。しかしアレを正面から受け止められるというのは驚きだ。Aランクの盾役が5人揃ってなんとか……とウチの盾役も言っている」

「強力な盾が手に入ったのと、多少スキルに恵まれていまして。とどめを任せられる仲間もいますからね」

「ああ、あの後のとどめもさすがだったな。一撃で首を落とすのは見ててスッキリした」

そこでクレイグ青年はニッと笑った。それから『ソールの導き』のメンバーを見回して、再び俺に顔を向けた。

「しかし近くで見ると本当にその……メンバーが 揃(・) っ(・) て(・) い(・) る(・) な(・) 。それとそこの薙刀使いは『至尊の光輝』の一人ではなかったか?」

「ええ、自慢のメンバーたちです。それとサクラヒメは確かに『至尊の光輝』の一員でした。どうやら『至尊の光輝』は解散したようで、彼女は縁があって入ってもらいました」

「縁……ね。知ってるかもしれないが『ソールの導き』と『至尊の光輝』については色々と比較する連中もいてな。教会が『救世の冒険者』なんて打ち上げたせいで、どちらがそれに相応しいか、なんて話もでてたくらいさ」

「ああ……我々はそんな大層なものではないんですが。ただ自由に旅をしてるだけですし」

「今は自由に旅をする冒険者っていうのも少ないからな。それに加えてあちこちで名前が聞こえてきたら、そりゃ噂になるってものだ」

クレイグ青年が言うように、冒険者と言っても地元を中心に活動する者が多いのは確かではある。知り合った『銀輪』や『フォーチュナー』や『黎明の雷』はすべて地元型の冒険者だった。違ったのはカルマ率いる『酔虎』くらいのものか。

「その上そちらのお嬢さん、フレイニル嬢だったか、次の聖女だとか言われてるだろう? それに獣人族の長の娘やハイエルフ……そんなメンバーがいればもう、な」

「まあ……たしかにそうですね。リーダーが一番地味なのは自覚してますよ」

「ははっ、ソウシさん面白い人なんだな。次の『救世の冒険者』が貴方たちでよかった。ところでこのダンジョンはどこまで潜る気なんだ?」

「最下層を目指しています。まだ攻略されてないということなので、慎重にいくつもりですが」

俺の言葉に、クレイグ青年は目を見開いた。

「それは本当か? 貴方たちなら攻略はできそうな気がするが……くれぐれも気を付けてくれ。この間のアンデッド騒ぎといい『悪魔』といい、今いろいろとおかしな感じになってるからな。『ソールの導き』になにかあると困ることになりそうな気がするんだ」

「もちろん全員で帰るつもりですよ。そちらはどこまで潜るつもりなんですか?」

「俺たちは20階までの予定だったんだが、『ソールの導き』が下まで行くつもりなら15階で退く。もともと間引き目的だったからな。そちらがいるなら俺たちはいらないだろう」

「間引き」というのはダンジョンからモンスターがあふれないようにするために、モンスターを定期的に狩っておくことを言う。なるほどAクラスダンジョンだと「間引き」を意識的に行う必要があるわけか。

「そうそう、ところでソウシさんに頼みがあるんだが、さっきの風呂の準備してたよな? あれ俺たちにも貸してくれないか。もちろん礼はする。どうもこっちの女性陣が頼んでくれって怖くてさ」

そこで急に両手を合わせてお願いポーズを始めるクレイグ青年。

こういう交流も冒険者ならではだろう。リーダーとしての辛さが分かる身として快諾し、女性陣だけでなく全員『ソールの導き』名物の風呂に入ってもらった。

ちなみにこの野営風呂だが、商人のトロント氏が感動して冒険者用の軽量浴槽を試作するという話がでていた。それをクレイグ青年に伝えると、「ダンジョンから出たらすぐ話を聞いてくる」と言っていたので、もしかしたら彼らが顧客1号になるかもしれない。