作品タイトル不明
17章 帝都への長い道 01
とにかく情報の多すぎる会談であったが、一通りの話が終わって俺たちは城を出ることができた。
なお会談の最後に、褒賞として『王家の礎』ダンジョンへ入る許可を得ることができた。しかもこちらの好きなタイミングで3回入ることができるという。さすがに毎回『不動不倒の城壁』レベルのものは手に入らないだろうが、それでも一冒険者パーティとしてはとてつもなく大きな話である。
その後俺たちは、郊外にゲシューラを迎えにいってから宿へと戻った。
「じゃあ明日からは残りのダンジョン攻略と『王家の礎』だねっ! ここのところ欲求不満だからめちゃくちゃ楽しみなんだけど!」
「まっことその通りじゃのう。どうもこのところ鍛錬も十分にはできておらぬしな」
「ソウシさんの盾みたいな強力な武具が出てくるんだろ? 強いモンスターをぶった切るのもいいけどそっちも楽しみだねえ!」
ラーニが尻尾をブンブンとふりながらはしゃぐと、オーズの巫女シズナと虎獣人カルマが同調する。この3人はかなり祭り好きな感じだな。
ギルド専属職員のマリアネも「ギルド職員が『王家の礎』に入るのは初めてのことなので力が入りますね」とやる気を見せている。
そんな中で宿の従業員から「ソウシ様にお客様がお見えです」との声がかかった。先日の教会の件もあって部屋に緊張が走ったが、さすがに今回はそうではないだろう。
俺がロビーに向かうと、そこにはなんと灰色の髪をポニーテールにした、和風の女武者、サクラヒメ嬢の姿があった。
「おやサクラヒメさん、お久しぶりです」
「おおソウシ殿、お会いできて嬉しく思います。なにやら先日は王都で大変な事件があった由、そしてそれを『ソールの導き』が見事収めた由聞いております。さすがとしか言いようがございませぬな」
サクラヒメ嬢の顔には以前のような疲れた様子がない。『至尊の光輝』との縁が切れて彼女も心労がなくなったのだろう。
「サクラヒメさんも教会に戻ってからが大変だったと聞いておりますが、そちらの方は片がついたのですか?」
「うむ、一通りの話は済み申した。『至尊の光輝』での活動はそれなりに意味はあったと思うのだが、それがしも 此度(こたび) は一旦家へ帰って出直すつもりなのでござる。ついてはソウシ殿にはエリクサーの礼をしたいのだが……」
「それは家にお帰りになってからお考えいただければ結構ですよ。我々もこの後帝国に向かう予定ですので、その時にザンザギル家の方にお邪魔させていただきますから」
「おお、そうであったか。しかしそれならば、それがしもご一緒させてもらえぬだろうか? もし可能ならば道中でもなにか恩返しができればと思うのだが」
「あっ、それならウチのパーティに入っちゃえば?」
俺の後ろから声をかけて来たのは『ソールの導き』スカウト担当のラーニだ。どうやら様子をうかがいに来ていたらしい。
「サクラヒメは別にこの後決まった予定はないんでしょ?」
いきなりやってきてグイッと迫る狼獣人娘に、サクラヒメはのけぞる感じで答える。
「う、うむ。特にこれとって予定はないが……。しかしソウシ殿たちはすでにパーティメンバーが多いと思うのだが」
「大丈夫大丈夫。ソウシは可愛い女の子なら誰でもオッケーだから。それにウチのパーティなら長旅も楽だし、強くなれるし、伝説の冒険者も目指せるからお得よ。その代わり逃げられなくなるけどねっ」
「よく分からぬが……もしそれがしがパーティに加わることで恩返しの一つとなるなら、加えさせてもらえるとありがたい」
「だってソウシ。あっ、皆の了解はもう取れてるから大丈夫よ。どうせあのスキルもレベル上がってるでしょ?」
一気にたたみかけてくるラーニ。俺は両手を待ての形にしてその攻勢をさえぎった。
「待て待て、そういきなり言われても困るだろう。サクラヒメさんも落ち着いて考えてください。ウチのパーティはかなり活動が多くて大変ですよ。ダンジョンもすべて踏破していきますし、その踏破スピードも普通の倍でいきますから」
俺は忠告したつもりだったのだが、サクラヒメ嬢は逆に興味津々な様子で上半身を乗り出してきた。
「やはりソウシ殿たちは鍛錬に熱心なのだな。それがしも武者修行のつもりでこちらへ出てきた身、むしろその方がありがたい。『至尊の光輝』はダンジョンを嫌がってあまり入らなかったのでな」
「な~んだ、やっぱりサクラヒメも『ソールの導き』にぴったりなんじゃない。じゃあ決定ねっ」
ラーニがそう言って止める間もなく部屋に戻っていく。
俺はその後姿を溜息まじりに見送ってから、サクラヒメに向き直った。
「サクラヒメさん、本当によろしいのですか? パーティに入っていただけるならこちらとしてはありがたいですが」
「それがしがパーティに入ることが恩返しになるのであれば、喜んで入らせていただく所存でござる。それにただいまの話を聞いて、それがしも是非『ソールの導き』に入りたくなり申した」
「わかりました。『ソールの導き』はサクラヒメさんを歓迎します。これからよろしくお願いします。ただしさきほど言ったこと以上にいろいろと大変なパーティですので、覚悟はしておいてください」
なんというか、まあ正直なところサクラヒメを最初に見たあたりで縁がある気はしたのだが、結局はこうなってしまったか。
しかし9人パーティとなるともう誤魔化しも効かなくなるだろう。
先日の会談の様子を見ても国王陛下やギルマス、そして教皇猊下も『ソールの導き』については完全に普通の扱いをするつもりはないようだ。
フレイニルの『神属性』も明らかにしたことであるし、俺の『将の器』スキルについても隠す必要はないのかもしれない。
しかしそうなると、ますます俺たちの扱いが大げさになってしまうのは避けられないだろう。俺自身すでに異常な力があることは自覚して久しいが、そろそろ自分が特別な な(・) に(・) か(・) であると強い自覚を持った方がいいのかもしれないな。
そんな感覚は一度捨てきったおっさんとしては、なんとも抵抗のある話ではあるが。