軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

食う寝る遊ぶ は子どものお仕事!

リムートブレイク王国の夏は、気温は高くなるものの湿度はさほど高く無い。

石造りの建物の中や、森の木陰にいれば暑さをしのぐことができるし、風がふけば涼しいと感じることもある。

「だけど、やっぱり夏は太陽の下で遊ばないとねぇ!!」

そう言って城の裏庭へと飛び出して行ったのはティルノーアだった。

「意外……。魔法使いって薄暗い所の方が好きなんだと思ってた」

カインは飛び出してはしゃいでいるティルノーアを見て、続いて自分の後ろに立っているラトゥールとマクシミリアンを振り返った。

「師匠だけです」

「ティル先生だけ」

二人は口を揃えてそう言った。

「さぁ、今時の子ども達はどんな遊びをするんです? 教えてくださいな!」

「ティルノーア先生が子どもの頃はどんなことをして遊んでいたんですか?」

質問に質問で返すのは失礼な事だ、と淑女教育で教わることではあるのだが、ディアーナは素直に疑問を口にした。

ティルノーアの知っている遊びを教わることで、知らない遊びを教えることができると考えたからだった。

「うぅーん。ボクが子どもの頃ってもう四十年とか前だからなぁ」

「え?」

「え?」

ラトゥールとマクシミリアンが目を見開き、キールズやコーディリアが嘘だぁという顔をした。

ディアーナは「そういえば初めてお会いした時から見た目が変っていないわね」とつぶやいて首をかしげている。

カインとイルヴァレーノは、呆れた様な顔をしてケラケラと笑うティルノーアを眺めている。

「そんなわけないでしょう? ティルノーア先生は確かクリスとゲラントのお父上、近衛騎士団副団長とド魔学の同級生だったはずですよ」

「はっ! そうでしたわ!」

カインの言葉に、ディアーナもファビアン副団長のことを思い出した。

騎士の事を『棒振り』となじるティルノーアが、唯一『騎士である』と認めているのがファビアンで、そのファビアンとは学園時代に同級生だったという話をカイン救出作戦の時にディアーナは聞いていた。

アンリミテッド魔法学園には、家庭の事情などで入学年齢が前後している生徒も少なからず存在しているが、十も二十も違ったりはしていないはずだ。

「近衛騎士団副団長というのは、どういった人物だ?」

「僕の同級生にクリスという騎士を目指している生徒がいるんですが、その父親です」

「ふむ……では、我らの父上母上と同年代ぐらいか?……いや、そうだとしても若く見えるな」

「カインとディアーナ嬢のご両親もお若く見えますし、リムートブレイク人は外見が若いのかもしれませんね」

ジュリアンとジャンルーカがこそこそとそんな話をサイリユウム語でしている後ろで、キールズとコーディリアが複雑な表情で立っていた。

「うちの父さんと母さんは年相応よね」

「伯父様伯母様が若作りすぎんだよな」

コーディリアとキールズは、サイリユウムとの国境に接した土地で育っているため、サイリユウムの言葉が分かる。わざわざサイリユウム語で話している兄弟の会話に混ざったりはしないものの、一部の若作りの人々の為にリムートブレイク人全体が特殊な生態だと思われるのも困るよね、と頷き合っていた。

「子ども時代をいつ頃だと捉えるかの違いだねぇ」

「僕たちを子ども扱いしているのであれば、ご自分が僕たちぐらいの時のことを思い出してください」

「……うぅーん。学園時代は……ちょっと言うのははばかられるかな!」

にこやかに言われたが、ティルノーアの普段の言動からして何をやらかしているのかについては怖くて聞かない方が良いとカインは思ったのだった。

「さて、年齢の話は良いじゃぁないですか! 何をして遊びましょうか! 暴風竜ゴッコですか? ジャンウーですか? ポイポイですか?」

「なんですかそれ、一つも知らないんですけど」

「え! うそだぁ……」

提案してきた遊びの中に、一つも聞き覚えのある物が無かったカインが問い返せば、ティルノーアは大げさにショックを受けた顔をした。

「誰か知ってる?」

「いや……」

「聞いた事ないわね」

「ふむ、聞いた事は無いな。呼び名が違うだけで、知っている遊びの可能性はあるのではないか?」

カインが問いながら見渡せば、キールズとコーディリアは知らないと答え、ディアーナとジャンルーカも首を横に振った。カディナとアルガも顔の前で手を横に振って知らないとアピールしている。

外国の人間であるジュリアンだけが「名前を知らないだけ」の可能性を示唆した。

「確かに『かかしもどき誰だ』も、アイスティア領の方だと違う名前だって言ってたもんな」

「ティルノーア先生、暴風竜ゴッコはどんな遊びなんですか?」

はいっ!と手を上げて、ディアーナが代表して質問をした。

皆も、もしかしたら知っている遊びなのかもしれないとティルノーアの顔に注目する。

「まず、風魔法が得意な人が暴風竜役をします」

「はい」

「人間役の人達に向けて、思いっきり風魔法をぶつけます」

「……」

「人間役が全員倒れたら暴風竜の勝ち、人間が全員倒れる前に魔力がつきたら暴風竜の負けって遊びです」

「知らない遊びだった……」

「怖い!」

「それは、本当に遊びなんですか?」

カインとイルヴァレーノが困惑した表情を浮かべた。

一児の父となったキールズとしては、子どもには安全な遊びをしてほしいという思いがあるのだろう、心配そうな表情を浮かべている。

「うぅん。サイリユウムには自然発生しない遊びではあるな」

「お任せください、おん前に立ってお守りいたします」

「ハッセ、それはズルというものだ。遊びだぞ、それぐらい自らの足で立たなくてどうする」

「遊びといえど、ジュリアン様が倒れるなどいけません。倒れたときに、当たり所が悪かったらどうするのですか!」

「では、お前は私の後ろに立つがいい。倒れそうになったときに下敷きになれ」

「喜んで!」

兄とその護衛騎士兼側近の会話を、ジャンルーカは複雑な顔で聞いている。ハッセの過保護は昔からだが、遊びにまで口を出してくる姿を見るのは初めてだったのだ。

ディアーナが「人間側の反撃はアリですか!」と物騒な質問をしていて、ティルノーアが「もちろんさぁ!」と答えているのを聞いて、カインが慌てて手を上げた。

「ジャンウーっていうのは、どういう遊びなんですか?」

けが人が出そうな遊びは出来れば避けたかったのだ。

ティルノーアがくるんとカインに向き直る。

「ジャンラン役とウーラン役に分かれて追いかけっこをするんだよ」

「ジャンランとウーラン?」

「ジャンランっていうのは小鳥の名前で、ウーランっていうのは猛禽類の名前らしいよ。南西の方の国にいるらしいねぇ。ウーラン役がジャンラン役を追いかけて、捕まったジャンランはウーランに食べられちゃうんだ」

なるほど鬼ごっこの事か、とカインは頷いた。比較的安全そうな遊びだったのでホッと胸をなで下ろした。

「せっかくだから、魔法有り有りでやろう! 風魔法で加速したり、土魔法で落とし穴に落としたり、水魔法で足を滑らせたり!」

「全然安全じゃなかった!」

先生でも魔道士団員としてでもない、解放されたティルノーアは危険な人物だった。