軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔王討伐隊 3

「がぁっ」

クリスがその場で地面に叩きつけられ、動かなくなる。

「クリス!」

クリスに駆け寄ろうとするアルンディラーノを、開いた扇子を振って風圧で吹き飛ばした。

「あぁっ!」

吹き飛ばされたアルンディラーノは木の間を抜けていき、五十メートル程離れた下草のあたりに落っこちた。

前衛二人が潰れた事で、ジャンルーカは女の子二人の前にでて剣をぬいた。

「時間を稼ぐので、逃げてください」

ジャンルーカが振り向かずに言うが、アウロラとディアーナは動けない。クリスとアルンディラーノを置いて行く訳にはいかなかった。

「王太子殿下を置いて行く訳にはいきません」

「じゃあ、二人でアルンディラーノが落ちた方へ走って、回収してそのまま逃げて。私はなんとかクリスを拾ってから逃げます」

出来るかどうかはわからないが、そうすれば少なくともディアーナとアウロラとアルンディラーノは逃げ出せる可能性がある。

「カインから教わった魔法剣を使います。それを合図に走って!」

ジャンルーカは振り向かないが、後ろで頷く気配はしっかりと感じ取れた。

じりじりとすり足のようにしてクリスに向かって移動するジャンルーカは、じっと黒いドレスの女性から目を離さない。視線は女性に固定したまま、グッと腰を落として上半身をねじる。

「女の子二人を逃がす気ね? すてきね、騎士の鑑だわ。でも、私はそっちの金髪の子に用があるの」

黒いドレスの女性が、すっと手をあげて指をさした。その瞬間、ジャンルーカが勢い良く剣を抜く。

「ジャンストラッシュ!」

抜刀すると同時に、ねじっていた体を戻すように大きく剣を振り抜いていく。剣の長さからすれば到底届かない距離ではあるが、ジャンルーカの剣からは衝撃波が刃の様に鋭く飛び出していた。

それと同時にアウロラとディアーナが走り出す。ジャンルーカもクリスに向かって重心を下げて駆けだした。

「くっ! このっ!」

襲ってきた衝撃波を避けるため、大きくバックステップした女性は扇子を下から上へとふりあげ、衝撃波を空へと流してしまう。

「クリス、しっかりしろ!」

衝撃波を避けた為に、女性とクリスの間に距離が出来た。ジャンルーカは麻袋のようにクリスを肩に担ぐとアウロラとディアーナの後を追う。

「逃がさないわ! あの人の依り代だけはいただくわ!」

黒いドレスの女性は胸の谷間に手を突っ込むと、小さなネズミの姿をした黒い塊を取り出した。ネズミを扇子の上に乗せると、思い切り振りかぶってディアーナへ向かって投げつけた。

アウロラとディアーナでは、ディアーナの方が足が速かった。クリスを拾った上に担いで走るジャンルーカでは猛ダッシュしているディアーナには追いつけない。アウロラはとっさにかばうにも位置取りが悪かった。

ディアーナの背中に向かって黒いネズミが飛んで行く。

「ディアーナちゃん!」

「ディアーナ!!!」

アウロラの悲痛な叫びと、もう一つ。

その場に居る皆が聞き慣れた声が重なった。

走るディアーナと手を伸ばすアウロラ。

その間を走り抜け、ディアーナを背後からかばうように抱きしめたのは。

アウロラの目の前で、金色の三つ編みが背に揺れた。

カインだった。