軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

秘密兵器その2

「えーっと、次の道具なんですけど」

「まって、まって、イル君!」

サッシャから手渡された綿菓子を、恐る恐るつまんで食べたエリゼとディアーナはその甘さと食感に驚き、感動していた。

その間にもう一つ分の綿菓子を作ったイルヴァレーノは、握りこぶし大の塊を作ってティーカップの上に載せ、「お茶の熱で溶けていき、砂糖代わりに入れることができる」というデモンストレーションもやって見せた。

カインが見たかったであろう驚いて喜んでいるディアーナの様子をみながら、そろそろ次の道具の説明をしようとした所だった。

「私にもやらせてくださらない? それはお兄様からの贈り物なのでしょう?」

言いながらディアーナがビシッと手を上げた。カインから言われていたとおりだ。

イルヴァレーノは「多分ディアーナは自分でやりたがるから、言われたらやらせてあげて。やけどに気をつけてあげてね」とカインから言われている。

また、参加型アトラクションのあるお茶会であれば噂になりやすく、流行に敏感な若い女の子が参加したくなるだろうというもくろみもあるので、まずはディアーナに『楽しい⁉』と思ってもらう事が重要だった。

「では、サッシャがハンドル回してやって。その間に僕は次の準備をするから」

「任されました。お嬢様、私と一緒に作りましょう」

実際に、お茶会に提供するのであれば綿菓子機を使える使用人がイルヴァレーノだけという訳にはいかない。モーターの無いこの世界で綿菓子機を再現するのにカインが取り入れたのは歯車を使って回転させる方式で、手動でハンドルを回す必要がある。このハンドルを回すというのが意外と難しく、一定の速度で回し続けなければならない。早すぎても遅すぎても駄目で、速度にムラが出来てもうまくいかない。

イルヴァレーノもサイリユウムを出立するまで何度も練習をしてきたのだ。

「ではお嬢様、お砂糖を入れますね」

「準備良しですわー。サッシャ、回して回して!」

楽しそうに、綿菓子作りに挑戦するディアーナ。いつの間にかエリゼも近くにやってきていて後ろからのぞき込んでいる。

うまく興味を引けている様子に、イルヴァレーノは胸をなで下ろしつつ次の道具の準備を進める。

今度の道具は、木製の台の上面に鉄製の板が張り付けられている物だった。今度は氷の魔石を箱の中に設置したイルヴァレーノは、上面の鉄板が冷えるのを待ちながらカップ一杯の牛乳にガムシロップを注いでかきまぜていた。

「イルヴァレーノ、それは何です?」

声をかけてきたのはパレパントルだった。いつの間にか温室に来ていたらしい。イルヴァレーノの背後に立ってその手元をのぞき込んでいる。

「この透明のですか? 砂糖を水で煮詰めて冷ました物です。冷えた牛乳に砂糖を入れても混ざらないので、先にお湯で溶かして水分を飛ばす為に煮詰めて置いたんです」

「カラメルの手前みたいな物か?」

「そうですね、やり過ぎるとカラメルになってしまうとカイン様も言っていました」

そう言いながら、器に残っているガムシロップをパレパントルに差し出した。主人であるエリゼとディアーナが口にする物なので、透明でとろみのある液体の正体を疑っているとイルヴァレーノは思ったのだ。

パレパントルは小さなさじで掬って手の甲に垂らすとペロリとなめた。

「あまっ」

小さく舌を出して顔をしかめたが、それ以上何も言わずにまた一歩下がって様子見の姿勢に戻った。

一通り綿菓子機で遊んだディアーナとエリゼは、席にもどらずにそのまま次の道具の前へと移動してきた。

もう、その場で面白お菓子を作る道具なのだと気づいたのだろう。次のお菓子が出来る瞬間を間近で見る気なのだ。

「では、次の道具の説明をいたします。まず、こちらは氷の魔石を使って鉄板を凄く冷たくしています。触ると肌がくっついて最悪皮膚が剥がれますから気をつけてください」

「ひぇっ」

イルヴァレーノの言葉に、ディアーナとエリゼが半歩下がった。

「こちらにあるのが、砂糖で甘くした牛乳です。これをこの鉄板の上に垂らしまして」

説明しながら、イルヴァレーノはコップ一杯の牛乳を鉄板の上にざばっとこぼした。鉄板に触れる先から牛乳がみるみるうちに凍っていく。

「どんどん凍っていくので、こちらのへらでこそいでいきます」

お好み焼きのコテのような鉄製のヘラを、鉄板のはしから反対側の端までググーっと滑らせるように押していく。すると、コテの先にめくられた牛乳がくるくると筒状に丸まっていった。

イルヴァレーノはそれをもう一つのヘラで挟むようにして持ち上げると、用意してあった皿へと載せてジャムを添えるとディアーナとエリゼへと差し出した。

「このように、あっという間に氷菓が完成しました。こぼすのを果汁入りのミルクにする事で色々な味の氷菓を作る事ができますよ」

カインが考案した茶会用の目玉となる茶菓子第二弾。それはコールドプレート式アイスメーカーであった。