軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三人寄れば文殊の知恵、四人寄れば……

キールズの部屋は、入って正面は中庭に面して大きな窓になっていた。掃き出し窓になっていてベランダに出られるようになっている。右手の壁は一面天井までの本棚になっていて、半分ほどが本で埋まっていて、空いた棚には小瓶や木彫りの置物なんかが置かれていた。

左手の壁にはドアがついていて、おそらく水場へ続いていると思われる。振り返って廊下側の壁にはお茶を入れるための道具が納められているキャビネットがあった。

「そうだ。なぁ、カイン。湯沸かしポットの魔石に魔力を込めてくれないか?魔力切れでお湯が沸かせないんだ」

キールズが振り向いて、茶道具の入ったキャビネットを指差しながらそんなことを言う。カインはあきれた顔をする。

「ポットの魔石なんて大した魔力じゃないんだから……自分でやればいいじゃん。やるけどさ」

カインは部屋の中程まできていたが、方向転換してキャビネットに向かう。入り口にいたキールズの侍従がサッとキャビネット前に移動して、扉を開けてポットを出してくれた。

「カイン様よろしくお願いします。キールズ様が魔力を込めてくださらないので、毎度厨房まで湯を貰いに行っていたんですよ」

そう言いながら恭しくポットをカインに手渡してくれた。

ポットの底にある魔石に手を当てて、自分の魔力を流し込んでいく。一度流れ始めれば意識をほかに向けてても勝手に魔力は流れ出ていく。

「魔法を使うのは苦手じゃないんだけどな。魔力だけ外に出すってのがどうにも苦手でさぁ」

「カイン~。後で私の部屋のポットも……」

キールズが言い訳を述べる脇で、コーディリアがおずおずと手を小さくあげてそんなことを言う。

「困った兄妹だな」

「コーディのポットは私が魔力をつめてあげるよ」

コーディリアの袖を引っ張ってディアーナがそんな提案をしていた。魔力を詰め終えたカインは湯沸かしポットを侍従に渡すと、本棚の前に設置されている応接セットのソファーに腰を下ろした。

「キールズ様、お茶はいかが致しますか」

「さっき飲んだからいらない。とりあえずその辺で控えておいて」

キールズの言葉に侍従が壁の前で待機する姿勢をとった。

部屋の中は、応接セットのソファーにカインとディアーナとキールズとコーディリア。

壁際にイルヴァレーノとサッシャとキールズの侍従とコーディリアの侍女が控えている状態になった。

「先ほど、伯父様から話があった。明後日我が城に王妃殿下と王太子殿下がいらっしゃる。それに伴って城内の使用人は一部を残して夏期休暇として城から出されるので、人手不足になることが予想される。お前たちも城の中で人が足りないって言われたら俺たちの世話よりそっち手伝ってやってくれ」

キールズがソファーの背もたれに腕を乗せながら上半身を捻って侍従たちに声をかけた。これから王族に関する話をするのに、前提条件となる話をしておくべきだと思ったのだろう。

「それは、僕らは城に残される側って事でしょうか?」

「当たり前だろ」

「ご信頼いただき、大変嬉しく思います」

「しらじらしい……」

ポンポンとキールズとキールズの侍従が会話しているのをカインは隣で聞いていた。キールズの侍従は、キールズの乳兄弟だと聞いたことがある。

乳母として城に来た人は、そのままアルディの侍女として城に勤めているらしい。

アルディが何でも自分でできる上に領民に交じって農作業したり領民の子どもの世話をしていたりするので、一緒にあちこち飛び回っているらしい。

やり取りが終わったのか、キールズはソファに座り直して妹と従兄弟に改めて向き合った。

「王族だけど、王妃殿下の子ではなくて、だけど王妃殿下と国王陛下の子として育てるってどういうことだと思う?」

「一番に思いつくのは、国王陛下の浮気の子って可能性だけど……」

「やっぱりそうだよなぁ」

キールズが早速ぶっちゃけ話を振ってきた。カインは一番無難で一番不敬な思いつきを口にするが、やはり思いつくことは同じなのか、キールズもコーディリアもディアーナさえ頷いている。

「『王家の血筋であることは確実』って言い方が何か引っかかるわね。現在の王家って、国王陛下と王太子殿下の他にどなたがいらっしゃるの?」

「国王陛下に王弟殿下がいらっしゃったハズだけど、すでに臣籍降下されてたような?」

「いや、ウチじゃない公爵家のどっちかに婿入りしたんじゃなかったっけ?」

コーディリアの質問に、キールズとカインが答えるが曖昧である。自分たちが生まれる少し前の事となると歴史の勉強で習う範囲でもないし、歴代王様を覚えよう!という王家に関する勉強でも他家に嫁入り・婿入りした人間についてはサラッとしか学ばないので仕方がない。

「国王陛下の弟君は、アルファディング公爵家に婿入りしたんだよ。それで、国王陛下にはお兄様も居たんだけど、お兄様については公式発表がなさすぎて今では居なかったことになってるって、イアニス先生が言っていたよ」

この中で、一番年下のディアーナが自信あり気に発言する。一番年下だからこそ一番最近王家関係の勉強をしたということになる。

「あとね、エルグランダーク家にも王家の血は入ってきてるんだよ。お父様のお祖母様が王女様だったって。この前お母様が言ってらしたよ」

「そこまで 遡って(さかのぼって) 『王家の血筋』って言っちゃうと、公爵家三家と血の古い侯爵家四家あたりは全部王家の血筋って事になっちゃいそうよね」

ディアーナの追加情報に、コーディリアが困った顔をして相槌を打つ。頬に手を添えてため息を吐く様子は貴族の子女っぽい。

「アルファディング公爵家に新しく女の子が産まれたとして、それを王家で引き取る意味ってあるか?」

「アル殿下がまだお生まれになっていなければ、あったかもしれないけどなぁ。公爵家令嬢なんて十分な身分だし、九歳差あるけどアル殿下に嫁入りさせれば将来の王妃殿下になるわけだし、世間に隠して引き取らせる意味なんてないだろうなぁ」

貴族の場合、愛人を作って外に子を作り養子として迎える……という事は時々起こる。法律で一夫一婦制と決められているからこそ第二夫人なんて名乗ることはできないが、家の存続が重要なので夫人になかなか子どもができなかったりすればそういう事もありえる。

もちろん、ただ好色なだけという理由で愛人を作る人もいる。

が、それが王家となると話は別になる。王家はどこよりも血筋を尊ぶので、堂々と愛人を作るというわけには行かないのだ。それはスキャンダルとなって王家の威信を下げることになる。

「やっぱり、国王陛下の不義理なのかなぁ」

情報が少ない状況で、子どもたちが額を突き合わせて考えた所で何がわかるということもなかったのである。