軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

カインからディアーナへの手紙

ディアーナへ

そろそろ冬も終わりに近づいてきていますが、まだまだ寒い日もあるかと思います。

風邪などひいてませんか?

寝るときには暖かくして寝ていますか?

去年編んだ腹巻きはまだ着れますか?

きつくなったら新しいのを編むから、遠慮なく言うんだよ。

〜中略〜

サッシャと仲良くなるために頑張るそうだね。

ディアーナは偉いね。

仲良くなるために、相手の事を知るのはとても大事なことだね。

そこに自分で気がついて行動が出来るなんて、ディアーナはとても素晴らしく気配りのできるレディだね。

サッシャの趣味は何だったのかな?ディアーナと共有できる趣味だといいね。

たとえサッシャの趣味がディアーナと分かち合えない内容だったとしても、否定せずに受け止めてあげてね。

受け入れる必要はないけど、そうなんだねって知ることが大事かもね。

お話のきっかけが出来るといいね。

仲良くなっていけば、いつか世を忍ぶ仮の姿を打ち明けられるかもしれないね。

〜中略〜

こちらには、花祭りというお祭りがあります。来たばかりなのにもう学校がお休みになります。

残念ながら、そちらに帰るには時間がギリギリすぎるので今回は帰れませんが、次のお手紙にはお祭りの様子を書きたいとおもいます。

ディアーナは花が好きだから、このお祭りも好きかもしれませんね。

色んなお家でお菓子を振る舞うんだそうですよ、一緒にまわってディアーナと色んなお菓子を食べられたらどんなに楽しいだろうって思います。

街中に布で作った花びらが舞うんだそうです。花びら舞う街をくるくると歩くディアーナはきっと可愛いと思います。

家に帰った時には花びらを作ってディアーナの周りに撒いてみようと思うので、一緒にダンスを踊りましょうね。

〜中略〜

先日、サイリユウム語で描かれた絵本を送りましたが届きましたか?手紙と小包は別便になると言われたのでどちらが先に届いているかわからないのです。

ディアーナの好きな「うさぎのみみはなぜながい」をユウム語で書いてある本です。

ディアーナはもうこの本は内容を覚えてしまうほど読んでいるから、ユウム語で書かれていても意味はわかると思います。

ディアーナは物覚えが良くて記憶力も良いのでユウム語もあっという間に覚えてしまうかもしれないね。

いつか僕より流暢に話せる様になってしまうかもね。そうしたら、国と国を飛び回る美人外交官なんて将来もあるかもしれないね。

〜中略〜

朝起きて、一人で走り込んでいるとつい隣に金色の髪がなびいているのではないかと目で探してしまいます。

寮のドアがノックされた時に、元気よく扉が開いてディアーナが入ってくるのではないかと期待してしまいます。

街でお兄様という声が聞こえるとつい振り返ってしまいます。

一日の終わりに、寮の部屋で勉強をしていると僕はこんなところで何をしているんだろうと考えて悲しくなってきてしまいます。

ディアーナ、元気ですか。

僕はディアーナが居なくて死にそうです

〜後略〜

「ディアーナ様、カイン様はお元気そうですか?」

「死にそうだそうよ」

ディアーナは、両手で持たないと落としてしまいそうな枚数の手紙をトントンと机で揃えると、大切そうに封筒にそっとしまった。

夜寝る前、一人になった時にまた読み直す。そのために机の引き出しではなくベッドサイドのライトテーブルの小さな引き出しに手紙をしまった。

「お兄様は、お休みはあるけど帰って来られないみたい」

「それはがっかりされてるのではないですか」

「お兄様の次のお休みっていつかな?お兄様が帰れないなら、ディが遊びに行ったら良いよね」

「旦那様と奥様がお許しにならないと、隣の国に行くのは流石に難しいですよ」

イルヴァレーノは苦笑いをしながら机の上に出しっぱなしになっていたペーパーナイフをペン立てにかたづける。

ベッドサイドに手紙をしまったディアーナが勉強机に戻ろうとしているところで、部屋の戸がノックされた。

「どなたでしょうか」

「サッシャです。お嬢様宛にカイン様からお荷物が届きました」

イルヴァレーノが入り口まで行ってドアを開ける。胸の前に小包を抱えたサッシャが立っていた。イルヴァレーノが体をずらして道を開けると、サッシャが入ってきてディアーナの前に小包を置いた。

「お手紙に書いてあった物かもしれませんわね。イルヴァレーノ、開けてくださる?」

「かしこまりました」

サッシャの前なので、ディアーナとイルヴァレーノは令嬢と使用人として会話をする。

イルヴァレーノが片付けたばかりのペーパーナイフを取り出して小包の封を切っていく。中から出てきたのは、一冊の絵本だった。

タイトルは外国の文字で読めないが、表紙の絵はとても見覚えのあるものだった。

「あ『うさぎのみみはなぜながい』だ」

先程読んだカインの手紙に書いてあった、サイリユウム語で書かれた絵本だった。

「サイリユウム語ですね」

「サッシャは、サイリユウム語が読めるの?」

ディアーナが椅子に座ったまま、横に立つサッシャを見上げて問いかけた。首を少し傾けて、上目遣いでジッと見つめる。

サッシャはディアーナと目が合うと少し頬を赤くして、慌てて視線を絵本の表紙へと移動した。

「学校で習いますので、基本的な文章であれば大丈夫だと思います。…教科書以外で読む事ができる本を入手したことが無いので、実践したことはないのですが…」

サッシャは、すました顔を作っているがチラリチラリと視線がディアーナの肩あたりと絵本の表紙を行ったり来たりしている。

「じゃあ、この本はサッシャに貸してあげる。お兄様がくれたものだから大切にしてね」

そういってディアーナが絵本をサッシャに差し出した。

サッシャは目を丸くしてディアーナの顔をジッと見つめてきた。淑女にあるまじき態度であるが、ディアーナはニッコリとわらって視線を受け止めた。

「私はまだサイリユウム語は勉強中なので、きっとまだ全部読めないと思うの。サッシャが先に読んで、私の持っている『うさぎのみみはなぜながい』とちゃんと同じだったか教えてくださいな。同じだったら、教科書として使えるでしょう?」

頬に指先を添えて、斜め四十五度の角度からサッシャの顔をのぞきこんで目を見つめる。ディアーナの必殺おねだり角度である。

サッシャが読書好きなのは調査済みのディアーナ。サッシャがこの本を読んでくれれば、うさぎのみみはなぜながいという共通の話題が出来る。

「わ、わかりました。この絵本と、この国の絵本が同じ内容かどうか調査いたします。お嬢様のご指示であれば致し方ありませんわね」

サッシャはそう言うと、ディアーナの手から絵本を受け取った。

小包の中には、他にもアクセサリーやお茶の葉などが入っていた。

「イルヴァレーノ。お手紙の中で、このお茶が美味しかったとお兄様が言っていたわ。後でお茶の時間に入れてちょうだい」

「かしこまりました。入れ方の注意などお手紙に記載はありましたか?」

「お湯もカップもとにかく熱くして淹れるようにって書いてあったわ」

「承知いたしました。ではその様にお淹れしましょう」

「時間になったらサッシャも一緒にお茶にしましょう。本を読んだ感想も聞きたいわ」

サッシャは小さく頷くと、一度失礼しますと言って部屋を出ていった。こころなしかその足はステップを踏みそうに軽かった。