軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

65.ヤンデレと病んでるは違う、凄く違う

とりあえずモンスターも去った事だし、イチノセさんと合流するか。

改めて周囲を見回す。

「うわっ、酷いなこりゃ……」

ショッピングモールはもちろん、周辺の建物もかなり悲惨な事になっていた。

先程ダーク・ウルフの放った木や廃車が、建物の壁を突き刺さり地面を抉っている。

まるで暴風災害の後みたいだな。……いや、それでもここまで酷くはならないか。

「凄い威力だな……」

改めてあのダーク・ウルフが、どれだけ恐ろしい存在だったか思い知らされる。

『闇』に取り込んだ物を、弾丸の様に全方位に飛ばす力。

俺の『アイテムボックス』の攻撃に似てるけど、その本質が違う。

『アイテムボックス』による攻撃は質量の自由落下だが、奴の放った物には明らかに『速度』が加わっていた。

つまりは上位互換。現代版ゲートオブ◯ビロン。

それは俺が思い描いていた理想的な攻撃手段だ。羨ましい。

なんとか俺も使える様にならないだろうか?

アイツは『影』を操るシャドウ・ウルフの上位種だ。

だったら『影法師』や『操影』を伸ばしていけば似たような攻撃手段が発現する可能性は高い。検討してみる価値はあるな。

そんな風に考えながら、入口の方へ向かうと、イチノセさんを発見した。

五体満足だ。大した怪我もしていない。

アカがちゃんと攻撃を防いでくれたらしい。

「……モンスターたちはどうしたんですか?」

「多分、逃げました。さっきのアレを目くらましにして」

「逃げた……?痛っ、あんな無茶苦茶な攻撃をするモンスター、初めて見ましたよ。このスライムちゃんが居なければ、死んでたかもしれないです……」

アカを擦りながら、震えた声を出すイチノセさん。

確かに俺もアカが居なければ大怪我を負っていただろう。

偉いぞ、アカ。凄いぞ、アカ。

「…………(ふるふる、ふるふる)」

心なしかニット帽に擬態したアカがドヤ顔をしているように見えた。

まあ、それだけの働きはしてるしね。

緊張の糸が解けたのか、イチノセさんはその場に座り込む。

「はぁー……疲れました」

「お疲れさまです」

アイテムボックスからお茶を取り出し、彼女へ渡す。

ついでに俺の分も出す。

「わんわん!」

「はいはい、ちゃんとモモの分もあるから」

影から出てきたモモの前に取り皿をだし、水を注ぐ。

舌を出して必死に水を飲むモモ可愛い。

「……ずっと気になってましたけど、クドウさんのそれって『スキル』なんですよね?」

お茶を飲みつつ、じぃっと俺とモモのやり取りを見つめるイチノセさん。

「ええ、『アイテムボックス』ってスキルです。物を自由に出し入れする事が出来ます」

もう隠す意味も無いので素直に答える。

「うわー、便利ですね。羨ましいです」

いいでしょ?あげないよ。

お茶を飲みつつ、そう言えばと、彼女は続ける。

「私まだクドウさんの職業やスキルを聞いてなかったんですが?」

「あー、そうですね……」

別に隠すつもりはなかったんだけど、言う前にモンスターが襲ってきたからね。

ここまで来たら素直に話そう。

「えっと、俺の職業とスキルなんですが―――」

俺はイチノセさんに自分の職業とスキル、モモやアカの能力を教えた。

手の内を晒すことになるが、彼女なら問題ない気がする。

彼女も自分のスキルや職業を正直に教えてくれたし、こちらもきちんと教えるのが誠意というモノだろう。これからパーティーでやっていくんだし。

尤も、他に盗み聞きしている奴がいないかどうかには細心の注意を払うけどな。

全ての説明が終わった後、イチノセさんは茫然としていた。

「え……ニンジャ?職業ニンジャ?」

「ええ、そうです」

正確には、『忍者』、『狩人』、『影法師』の三つだけど。

「獲得してるジョブが三つ、使える『忍術』が五つ、それにスキルが三十種類以上……?え、嘘でしょ……えぇ?」

俺の職業やスキルを聞いたイチノセさんは予想以上に混乱していた。

時折、口に手を当てて、「うわっ、私のスキル少なすぎ……?」とか呟いている。

うーん、やっぱり他人に比べれば多いんだな、俺のスキル。

今まで比較対象が居なかったからそんなに実感わかなかったけど。

やっぱ『早熟』の効果はデカいな。SPとJPの獲得ポイントが普通の人の十倍だし。

「……クドウさん」

「はい、なんですか?」

「とりあえず、『チート野郎』って呼んでも良いですか?」

「却下で」

「何でですかッ!」

「当たり前じゃないですか!嫌ですよ、そんなあだ名」

断じてお断りだ。

するとイチノセさんは自分の足元を見つめながら、

「うわーないわーこの人ないわー私は『引き籠り』なんてネタ職なのに忍者なんてカッコいい職業についておまけにモモちゃん(可愛い)やスライムが仲間ってどこのなろう主人公だっつーの十分チート野郎でしょうがというか私だってもっとカッコいい職業に就きたかったわよついノリでネタ職選んじゃっただけでそれに可愛いペットだって欲しかったのにそれを全部手に入れてああなんて羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい―――」

「……あのイチノセさん?」

あれ、イチノセさんの様子がおかしい。

「だいだいガチャの出が悪いのよもっといい景品出してくれればいいのにそうすれば私ももっと楽にレベル上げ出来たしモモちゃんとも早く会えたしカズトさんのことだって偏見無しで見る事だって出来たのにいやそりゃ初めはモモちゃんのついでくらいに思ってたけど今はちゃんと認めてるわよ頼れるし私がゲロ吐いても引かなかったし良い人だしていうかそもそも引き籠りには何もかもハードルが高いんだってばああもうホント嫌もう無理胃が痛いしまた吐きそうになってくるしホントもう最悪―――」

何言ってるの?

ねえ、なに言ってるの、この子?

目に光が宿ってない。

「イ、イチノセさん!戻ってきてください!イチノセさん!」

「ッ……あ、はい」

強引に肩ゆすると、ようやくイチノセさんは現実に帰って来たらしい。

俺と顔を合わせるやいなや、バッと逸らす。ショック。

「……その、すいません。お見苦しい所をお見せしました」

「あ、はい」

「実は私、昔からつい考え事に没頭しちゃう癖がありまして……えへへ」

いや、そう言う次元じゃなかったよ、今のは。

笑って誤魔化せねぇよ。

なんだろう。

メールの件といい、今のといい、この子ちょっと病んでないか?

仲間にするの早まっただろうか?

「えーっと、とりあえずこの場を離れましょうか。お昼も近いですし、どこかに移動して、ご飯でも食べましょう。んで、食べながら、今後の事を話しましょう。良いですよね、イチノセさん?」

「は、はい、そうですね!そうしましょう」

捲し立てる様に言葉を紡ぐ俺に対し、コクコクと頷くイチノセさん。

黙っていれば美少女なのに、なんだろうかこの残念感は。

いかん。俺がもっとしっかりせねば。

「よし、モモ、アカもそれでいいよな?」

「わん」

モモが元気よく返事をする。

だが、アカの返事がない。

「……アカ?」

服に擬態したアカに触れると、アカは突然擬態を解除して元のスライムの姿に戻った。

「きゃ、なに?」

イチノセさんのニット帽になっていたアカの分身も擬態を解除し、本体へ戻る。

そして、アカは激しく震えだした。

「アカ、どうしたんだ、そんなに震えて?」

「……」

アカは答えず、ずっと震えている。

一体どうしたんだ?

いや、待てよ?

前にもこんな状況あった様な―――。

「あっ、まさか―――」

ハッとなって、ステータス画面を確認する。

……やっぱりそうだ。

アカ

レッドスライムLV10

アカのレベルが10になっていた。

さっきのシャドウ・ウルフとの戦いでレベルが上がったんだ。

という事は―――

「~~~ッ!!(ふるふるふる)」

アカはより一層激しく震えだす。

そして、まばゆい光に包まれた。

「これは……まさか進化か?」

モモと同じ。

レベルが上限に達したことによる成長。

数秒の後に、光が収まる。

そこには進化したアカの姿があった。