軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45.俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!

……現代社会の闇を見た気分だった。

メール怖い。

というか、この女、怖い。

いや、男か女か分からないけど、多分こいつ女だ。

やべぇ、やべぇよ……。

頭おかしいだろ、コイツ。

なんだよ、一時間でメール45件って!

かるいホラーだよ。

狂気を感じたわ。

一分おきくらいに、頭の中に響く≪メールを受信しました≫の天の声。

頭がおかしくなるかと思った。

今までで一番精神的にきつかったかもしれない。

どれぐらい辛かったかって?

『ストレス耐性』のレベルが上がる程度です。

LV5からLV6になった。

おかげでだいぶ楽になったよ。こんちくしょう!

「あー……最悪の気分だ……」

しゃがみこんで、頭を抱える。

えらい奴に眼ぇつけられたなぁ……。

これ、ホントどうすんだよ……。

どう転んだって、ヤバい予感しかしないんだけど。

ああ、逃げたい、無視したい、無かった事にしたい。

遠距離攻撃の仲間が手に入るかも、なんて軽く考えてた自分を殴りたい。

この三日間で、一番必死こいてモンスター狩ったかもしれない。

モンスターを探している合間も、戦っている合間も常に鳴り響く≪メールを受信しました≫の天の声。

レベルが上がった瞬間、迷いなく『メール』スキルを習得した。

んで、一番最初に『ブロック機能』探したよ。

着拒出来ないかなぁって。

無かったよ、こんちくしょう!

色んな意味でヤバかった。

モモのモフモフが無ければ即死だった。

「くぅーん?」

モモが首を傾げる。

ああ、可愛い。

その仕草だけで、癒される。

俺は今日も頑張れるよ……。

「……(ふるふる)」

ああ、ごめんな、アカ。

別に忘れてるわけじゃないって。

うん、良い着心地だ。

慣れれば、意外と悪くないじゃないか、スライムも。

「はぁー……悪い奴ではなさそうなんだけどな……」

頭がおかしいだけで。

あ、いや、それが致命的か。

≪メールを受信しました≫

また来たよ……。

検討させてくれって言ったばかりじゃんか。

一体なんだよ?

頭をガシガシ掻きながら、メールを開く。

『そう言えば、お伝えし忘れていたことがありました。メールのレベルを2に上げると、チャット機能が解放されますよ。タイムラグも少なくなりますし、お互いの事をよく知れると思いますし、おすすめです』

ヒェッ……。

知りたくも無かったその情報。

今でこの状態だ。

チャット機能なんて解放された日には、えらい事になるのは目に見えてる。

……よし、メールは今のままでいいや。

『そうですか。貴重な情報、ありがとうございます。パーティーメンバーの件はもう少しお待ちください。あと、メールはそう頻繁に送らなくても大丈夫ですよ。きちんと読んでいますし、アナタのお気持ちはちゃんと伝わっております』

はい、送信っと。

検討させてくださいと返信してからも、こうしてちょくちょくメールが送られてくるんだよなぁ……。

こいつ、非常識にも程があるだろ。

もう少し相手の事も考えなさいよ。

しかもこれ、本人は無自覚にやってるっぽい所が更に性質が悪い。

たまに居るんだよな、こういうの。

自分では別にそんなつもりないのに、無自覚に他人に迷惑かけてるタイプ。

こういうタイプの人種ってホント苦手だわ。

もう少し他人の事も考えろよ。

「わふぅ……」

「……(ふるふる)」

なにやら物言いたげな視線を送るモモとアカ。

なんだよ、俺は別に普通だろう?

にしても、このイチノセ ナツって一体どんな奴なんだ?

レベルや職業、スキル、そして銃。

気になる事が多すぎる。

特に銃なんて、一体どこで手に入れたのか?

エアガンならともかく、この法治国家の日本で本物の銃を、それも長距離狙撃用の多分ライフルを手に入れる方法なんてまずない。あるとすれば非合法な闇ルートだろう。やのつく自由業とか。

レッサー・ウルフを一撃で、しかもあの距離で仕留めた事からも、その威力は相当高い。

対物ライフルって言うと、バレットやヘカートみたいなヤツだったけ?

銃の事は、詳しくないから殆ど分からんけど。

そんな銃を楽々使いこなす技術。

レベルも高そうだ。

それとも武器が手に入る、もしくは『造り出す』スキルでもあるのか?

あり得るな……。

『メール』なんてスキルが有るんだ。

『ネット』や『通販』なんてスキルもあるかもしれない。

「考えても埒が明かないな……」

本人に直接聞けば一番いいんだろうけど、素直に聞いて教えてくれるわけないし。

「とりあえず時間は稼いだんだし、ゆっくり考えるか……」

遠距離サポートは確かに魅力だが、もし裏切られれば後ろからズドンだ。

簡単に結論を出すわけにはいかない。

こいつが本当に信用できるかどうか、見極めなければいけない。

しばらくは『メール』を使って交流を図るか。

嫌だけど。気が進まないけど。

その中で、少しずつ相手の情報や人となりを確認していけばいい。

直接会うのではなく、『メール』を使ったのだから、向こうもそのつもりだろうし。

「これもある意味メル友になるのか?」

そんなどうでもいいことを考えながら、俺たちは再び街を探索するのだった。

≪メールを受信しました≫

……だから、早いよ!メール来るのが!

どんだけこらえ性がねぇんだよ!

こうして俺たちの探索に、怪しげなメル友が加わるのだった。

一方その頃、ホームセンターにて―――。

眼鏡をかけた学生、大野は無事に拠点に帰還していた。

仲間たちが笑顔で迎え入れてくる。

「大野、戻ったか!無事でよかった!……他の皆は?」

「う、うん……その、途中でモンスターに襲われてはぐれちゃって……」

「……そうか、分かった。とりあえず、お前だけでも無事に戻って来てくれて嬉しいよ。本当に良かった……」

大野の言葉に、西野は全く疑う様子を見せない。

自分を心配するその姿に、大野は心が痛んだ。

「そう……だね。あの、これ、少ないけど、食料……手に入った」

誤魔化すように、大野は食料を詰めたリュックを西野に渡す。

それを見て、西野だけでなく後ろに居る学生たちも顔をほころばせた。

「ありがとう。ゆっくり休んでくれ」

「うん。……あ、柴田君たちは?まだ、戻って来てないの?」

「ああ、予定の時間を大幅に遅れてる。何かあったのかもしれない」

「そう……なんだ……」

「ああ。あと一時間して、帰って来なければ、捜索隊を出そうと思ってる。人数は少ないから、大野と一緒に行った奴らの方は後回しになるが……そこは、理解してくれ」

「……」

仲間を心配するその姿に、大野はどうしようもなく胸が痛んだ。

はぐれたなんて嘘だ。

自分は、彼らを見捨てて逃げたのだ。

(……悪くない。僕は悪くない……!アイツらが勝手に行動して。それに、僕の言う事無視して……そうだよ。僕は悪くない。何も悪くないんだ……!)

彼は何度も何度も、心の中で呟くのだった。

それから数十分後、柴田が帰還する。

彼のもたらした情報は、西野たちに大きな波紋を生じさせる事になるのであった。