軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

266.VS先遣隊 総力戦 その7

――安全地帯にて上杉市長は残された者達と共に戦況を見据えていた。

「……歯がゆいな。ただ待つだけの身とは」

「仕方がありませんよ。我々にはただ見守る事しか出来ませんから」

老齢の女性がお茶を出しながら答える。

上杉市長は『安全地帯』の要だ。たとえどんな戦場であっても前線に出ることは出来ない。

彼に万が一のことがあれば、それはすなわち『安全地帯』の消滅を意味するのだから。

だが常に見送り、結果を待つ事しか出来ない状況に、いつも彼は歯がゆい思いをしていた。

(何故、私はいつも見ている事しか出来んのだ……!)

今回の戦い、彼は前線に出るつもりでいた。

その為のスキルが手に入ったからだ。

――スキル『委任』。

自身のスキルの一部を他人へと受け渡すスキル。

これを使い、『町づくり』のスキルを他の者に預けて、彼も戦うつもりでいた。

彼は『委任』の他にもう一つ『支持率』という新たなスキルも手に入れていた。

どちらも市長のレベルが上がったことで手に入ったスキルだ。

『支持率』は『安全地帯』の住民の数に応じて、上杉のステータスを上げるスキルだ。

これを使えば、一時的とはいえ狂化した六花並みの力を得ることが出来る。

しかし結局は、藤田らが反対したため、使う事は無くなった。

共に戦う事が出来ない無力感に上杉は拳を握りしめる。

(何か、どんな些細な事でもいい。私に出来ることはないのか……!)

ただ仲間の無事を祈るだけの日々にはもう耐えられなかった。

何か一つでもいい。

死地で戦う者達の為に出来る事はないのか?

≪――メールを受信しました≫

「……ん?」

不意に頭に響いたアナウンス。

何かと思って確認すれば、それは今も戦っている仲間からのメールであった。

「……なんだ、これは?」

その内容に彼は酷く混乱した。

メールの送り主は一之瀬奈津であった。

『これからカズトさんより上杉さんをパーティーメンバーへ誘うアナウンスが流れると思います。必ずイエスを選択してください』

文面は無駄に長かったが、要約するとこんな内容だ。

カズトはメールを打つのが遅いため、代わりに彼女が代筆ならぬ代理メールを送ったのだろう。恐ろしい程のタイピングと送信速度である。

≪クドウカズトからパーティー申請が届きました。受理しますか?≫

直後、また脳内にアナウンスが響いた。

「……」

戦力外であるはずの自分を仲間に入れるなど本来なら愚の骨頂だ。

それも主戦力であるクドウカズトのパーティになんて。

事前にメールが送られてこなければ、彼はこの申請を拒否していただろう。

足手まといにはなりたくなかったからだ。

それを見越して、カズトは事前にメールを送ったのだろう。

(……何かあるのか? この私にも君たちの力になれることが……)

力になりたい。どんな些細な事でもいい。命を懸けて戦う仲間たちの力になりたかった。

彼はイエスを選択した。次の瞬間、彼の脳内にまたアナウンスが流れた。

≪パーティーメンバー ウエスギ ケンセイ固有スキル『上下一心』を取得しました≫

「これは……」

そして彼は知る。

己の持つ固有スキルを。

その破格にして最高の性能を。

第一結界にて――。

「……まさか上杉市長がこんなとんでもない固有スキルを持ってたなんてな……」

俺は上杉市長の固有スキルの効果に驚愕していた。

アロガンツから念話を受けた時は、何の冗談かと思った。

戦力にならない上杉市長をパーティーメンバーに加えろだなんて。

だがそれも納得の理由だった。

そもそも『英雄賛歌』で誰にどんな固有スキルが発現するかは、訓練が終わった後に検証する予定だった。

パーティーメンバーの入れ替えに応じて固有スキルが発現するかどうかも分からなかったし、一度発動すれば俺は三日間、何も出来なくなるからだ。

それにもし検証していたとしても、おそらくは戦闘に参加するメンバーだけでしか試さなかっただろう。

非戦闘員――特に上杉市長なんかはレアなスキルを持っているんだし、もっと可能性を考えるべきだったのだ。

≪パーティーメンバー モモ 固有スキル『漆黒走破』を取得しました≫

≪パーティーメンバー キキ 固有スキル『反射装甲』を取得しました≫

≪パーティーメンバー アカ 固有スキル『完全模倣』を取得しました≫

≪パーティーメンバー ソラ 固有スキル『蒼鱗竜王』を取得しました≫

≪パーティーメンバー シロ 固有スキル『白竜皇女』を取得しました≫

≪パーティーメンバー スイ 固有スキル『緑皇領域』を取得しました≫

パーティーメンバーの固固有スキルの取得を告げるアナウンス。

だが、通知はそこで終わらない。

≪パーティーメンバー イチノセナツ 固有スキル『流星直撃』を取得しました≫

≪パーティーメンバー アイサカリッカ 固有スキル『羅刹天女』を取得しました≫

≪パーティーメンバー ニシノキョウヤ 固有スキル『絶対遵守』を取得しました≫

≪パーティーメンバー オオノケイタ 固有スキル『劣化大罪』を取得しました≫

≪パーティーメンバー クジョウアヤメ 固有スキル『光闇ノ剣』を取得しました≫

≪パーティーメンバー ハル 固有スキル『輪廻操作』を取得しました≫

≪パーティーメンバー ニジョウカモメ 固有スキル『聖癒賛歌』を取得しました≫

≪パーティーメンバー シミズユウナ 固有スキル『綺羅綺羅』を取得しました≫

≪パーティーメンバー フジタソウイチロウ 固有スキル『離婚調停』を取得しました≫

≪パーティーメンバー リベル・レーベンヘルツ 固有スキル『廻向転換』を取得しました≫

≪パーティーメンバー アイヴァー 固有スキル……≫

鳴り止まぬパーティーメンバーと固有スキルを告げるアナウンス

上杉市長の固有スキル『上下一心』。

その効果はパーティメンバーの人数制限解除。

誰でも、何人でもパーティーを組むことが出来る。

ただそれだけの効果なのだが、俺の『英雄賛歌』との相性は最高だった。

これでこの戦場にいる全員が俺のパーティーメンバーとなり、その全員が固有スキルを取得するに至った。

「……凄いな力が溢れてくる……」

俺は自身のステータスが爆発的に上昇していくのを感じた。

『安全地帯』にいる非戦闘員すら固有スキルを得ている。

その中にはパーティーメンバーのステータス、スキルレベルを上げる効果のある固有スキルを会得した者も居たのだろう。

まさに戦えずとも力になりたいという上杉市長の想いが形になったような固有スキルだ。

「戦力は整った……!」

いける。これならランドル相手にも互角に戦える。

「いや、まだだよ」

すると俺の言葉にかぶせるようにアロガンツが姿を現した。

「向こうは済んだ。こっちの応援に来たよ」

「ああ、ありがとうな。それでまだだよってのはどういう事だ?」

「……以前、私が君と手を組まなかった理由を話したのを覚えているかい?」

――君は人で、私はモンスターだ。決してその存在は相容れる事はない

――私は人を騙すのも、人を汚すのも、人を殺すのも好きで好きで堪らない。そんな存在が、どうして君たち人間と手を組み、戦う事が出来る?

「……覚えてるよ。今もはっきりとな」

「不思議なものだ。そんな私が、こうして共通の敵を前に手を取り合っている」

次の瞬間、脳内にアナウンスが響く。

≪アロガンツが仲間になりたそうにアナタを見ています。仲間にしますか?≫

「共に戦おう、クドウカズト。今こそ、この世界に生きる者として、この世界の『敵』を討つ」

「……ああ」

脳内でイエスを選択。アロガンツがパーティーメンバーに加わる。

更にアロガンツが復活させたネームド達からの申請も受け入れる。

これで本当にこの戦場に居る全ての者が俺のパーティーメンバーに加わった。

≪パーティーメンバー アロガンツ 固有スキル『魔軍進撃』を取得しました≫

「なっ……!?」

おいおい、ちょっと待て? 新しい固有スキルの取得だと?

「やはりね。『傲慢』で得た固有スキルと、『英雄賛歌』の効果は重複しない。おかげで二つも固有スキルが手に入った」

「お前、こうなるって分かってたのか?」

「ああ、つい先ほどそういう情報を手に入れたからね。どうやらこの世界はよほど彼らが……いや、目の前の男が嫌いなようだ」

再びアナウンスが鳴り響く。

≪パーティーメンバー モモが犬王に進化しました≫

≪パーティーメンバー キキがオル・テウメウスに進化しました≫

≪パーティーメンバー アカがエンシェント・スカーレットに進化しました≫

≪パーティーメンバー ソラが蒼竜神に進化しました≫

≪パーティーメンバー シロが白皇竜に進化しました≫

≪パーティーメンバー スイがエンシェント・トレントに進化しました≫

≪パーティーメンバー ハルが蜃猫に進化しました≫

≪パーティーメンバー ルーフェンがディザスター・オークに進化しました≫

≪パーティーメンバー ティタンがエンシェント・ゴーレムに進化しました≫

≪パーティーメンバー アルパがオル・ミュルガルドに進化しました≫

≪パーティーメンバー ペオニーがワールド・トレントに進化しました≫

≪パーティーメンバー フランメが赫竜神に進化しました≫

「こ、これは……」

「『魔軍進撃』……パーティーメンバーに居る人間以外の仲間を進化させるスキルだ。大野やリベル、アイヴァーが進化しなかったのは意外だが、どうやらシステムは彼らを 人間(・・) と認識しているようだね。……いや、人として生きて欲しいのか」

影から現れたモモ達から爆発的な光が溢れ出す。

「ワォ……ワォオオオオオオオオオオン♪」

「きゅー♪ きゅきゅー♪」

「……(ふるふる)♪」

その光景にランドルすら唖然としていた。

『英雄賛歌』による固有スキル、そしてアロガンツによる進化。

まさかこの土壇場でここまでパワーアップするだなんて思わなかった。

だがこれで戦力は整った。

アロガンツが魔剣を構える。

「さて、それじゃあラストバトルといこうか。後れを取るなよ、クドウカズト」

「それ、俺の台詞だろ!」

先遣隊ランドルとの最終決戦が始まった。