軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

255.前哨戦の終わり

立ち昇る火柱と黒煙。

その中から投げ出され、ボロボロになったシュヴァルツの姿を見て、俺は思わず目を疑った。

「シュヴァルツ!」

「なっ――嘘でしょ……」

リベルさんも信じられない様子で火柱の上がった方向を見つめている。

俺たちはすぐにそちらに向かった。

――辿り着いた場所は凄惨極まりなかった。

爆撃にあったかのように巨大なクレーターが出来上がり、周囲の木々は一本残らず焼きつくされていた。

その中心にシュヴァルツと、二回りほど体が小さくなった海王様の姿があった。

リベルさんの言ってた援軍って海王様の事だったのか。

でも海王様の力もかなり弱々しくなってる。

「おい、シュヴァルツ、大丈夫か!?」

「わんっ」

俺とモモが近寄ろうとする。

だが、その瞬間シュヴァルツが起き上った。

『問題ナイ。少々油断シタダケダ……』

「キシッ」

ふらりと、倒れそうになるが、その瞬間影から一匹の蟻のモンスターが現れ、その身を支えた。シュヴァルツの眷属のモンスターなのだろう。

『要ラン、不要ダ』

「キシッ……! キシッ……!」

体を支えようとする蟻のモンスターを引き剥がそうとするが、蟻のモンスターは頑として離れようとしなかった。

「ワンワンッ」「ギッシィィィ!」「ガルルル!」

「ワォォオオオオオオンッ」「シャーッ! シャァー!」

更に他のモンスター達も次々に影から飛び出し、その体を支えはじめた。

余程、シュヴァルツの事を大切に思っているのだろう。

シュヴァルツが群れを持っていたのは知っていたけど、これだけ強い信頼関係が築かれていたのは正直驚いた。

『フンッ……主ノ言ウ事ヲ聞カヌトハ。不敬ナ奴ラダ……』

そう言いつつも、シュヴァルツはどこか嬉しそうである。

「一体何があったんだ? 先遣隊の気配は消えてるけど……」

『……』

俺の質問にシュヴァルツは眼を背けた。

まるで答えたくないとでも言うように。

代わりに答えたのは海王様だ。

『……最後にランドルに介入された。奴はグレンが負けそうになった場合、自爆し戦った相手を道連れにするよう仕組んでいたのだ』

「なっ……」

『油断したよ……。まさかアイツが同胞を――親友だった男を切り捨てるような戦法を取るとはな。そこまで堕ちたか、ランドル……』

そう語る海王様はどこかやるせない様子だ。

一方でリベルさんは舌打ちをする。

「あの馬鹿が馬鹿なのはもうとっくに分かりきってんでしょーが。それよりも今は現状の確認が先よ。シュラム、その状態であとどれくらい結界を維持できる?」

『……安心しろ。最初に言った通り二時間は持つ。ただ戦線に復帰するのは厳しいかもしれん。私も、そっちの狼王もな』

「……治療は無駄なの?」

『ああ。グレンの炎は肉体だけでなく我々の魂そのものに激しい損傷を与えている。スキルでどうこう出来る傷ではない。少なくとも数日はまともに戦えないだろう。もしかしたらそれを見越して、奴はグレンに仕込んでいたのかもしれん』

……確かに海王様とシュヴァルツが戦線に復帰できないとなれば、俺たちの戦力は大幅にダウンする。

あのシュリって少女と戦ってみてよく分かった。

先遣隊の力は文字通り桁が違う。

そんな奴らがまだ八人も残っているのだ。

海王様もシュヴァルツも居ない状態で、本当に俺たちは勝てるのか?

そんな不安が鎌首をもたげる。

「わんっ」

「痛っ」

モモに手を噛まれた。

俺の不安を感じ取ったのだろう。

しっかりしろ、と言っている様だった。

「はは、ごめんな、モモ。そうだよな、勝てるかどうかじゃない。勝たなきゃいけないんだよな」

「わぉんっ」

モモは「そうだよっ!」と声を上げる。

全くモモには敵わないな。

本当に頼りになる相棒だ。

「ともかく連中が本格的に動き出すまで時間は残ってる。作戦を立て直しましょう」

「ええ、そうですね」

「わんっ」

シュヴァルツと海王様、それとちょっと離れた場所で犬神家になっていた五十嵐さんを回収し、俺たちは拠点へと戻った。

一方、先遣隊のメンバーも、結界の中から戦いの顛末を見届けていた。

「シュリとグレンは敗れたようですね。まさかあの二人が敗れるなんて……」

「そうだな」

先遣隊のリーダーランドルの後ろに控える槍を持った男――ベルドは驚きを隠せない様子だった。

シュリとグレンの実力を知っている彼からすれば、この結果は信じられないものだった。

あの二人が負けるなんて微塵も思っていなかったのだ。

彼は、シュリとグレンだけでリベルも含めた地球側の戦力を全て落とせるとすら考えていたのだ。

他のメンバーも多かれ少なかれ動揺している。

――ただ一人、リーダーのランドルを除いて。

彼だけはシュリとグレンの敗北に微塵も動揺していなかった。

それもその筈。

この結果は、彼にとって想定の範囲内だからだ。

――上手くいった。

内心、彼はそうほくそ笑んだ。

この戦いで、彼はカズト達のおおよその戦力を把握することが出来た。

その上で敵の主力である狼王と海王を落とす事が出来たのだ。

十分な戦果と言っていいだろう。

(『竜王』が居ない事も確認できた。おそらくもう死んでいるのだろう。その上、竜王の番いだったドラゴンも新たな『竜王』に成った様子も無い。実に好都合だ)

リベルに与する可能性が大きかった『海王』と『竜王』。

その二体が戦力から外れた。予想外だった『狼王』もグレンの自爆で片付ける事が出来た。

(残る戦力はリベル、そしてクドウカズトの二人だけ)

それ以外のメンバーはほぼ戦力として数える事が出来ないような連中ばかり。

精々気になるのは、竜王の番いとクドウカズトのパーティーメンバーくらいだろう。

(仮にクドウカズトが何かしらの固有スキルを持っていたとしても状況を覆す程ではない……)

シュリとの戦いで、クドウカズトが何かしらの切り札を持っている事は予想出来た。

もしそれが仮に自分やパーティーメンバー全員を大幅に強化するスキルだったとしても、『その程度』なら脅威にはならない。

元々の地力が違うのだ。それはスキルを使ったとしても到底埋める事が出来ない差だ。

もう他に六王クラスの相手が居ない以上、自分達の勝利は揺るがない。

海王シュラムの張った結界もあと数時間で消える。

たった数時間で、六王クラスの者が複数名現れるなど、それこそ奇跡が起ころうともありえない。

(前哨戦は終わりだ)

ここからが本番。

異世界の最高戦力――先遣隊の真の力がカズト達に襲い掛かろうとしていた。

そして――、

「ま、待ってよ、あやめちゃーん。走るの早いってばー」

「何を言ってるんですか、先輩。早く行かないと間に合わないかもしれないんですよ。私達がカズト君を助けるんです」

「みゃぅー」