軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

243.訓練の日々

≪経験値を獲得しました≫

≪熟練度が一定に達しました≫

≪スキル『剣術』がLV8から9に上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫

≪スキル『忍耐』がLV6から7に上がりました≫

≪熟練度が一定に達しました≫

≪スキル『騎乗』がLV4から5に上がりました≫

頭の中に響くアナウンス。

それを聞きながら俺は地面に倒れ込んだ。

「終わったぁーーー! あぁー、疲れたぁー……」

天を仰げば、眩しい日の光と共に、大きな影が下りてくる。

『フン、軟弱だな。たかが三時間程度の飛行でそこまで疲れるとは』

「……無茶言うなよ。エンシェント・ドラゴンに進化したお前の飛行速度で三時間だぞ? ジェット機にしがみついて東京から沖縄までフライトするようなもんだぞ? 訓練と言うより拷問だって」

『その例えはよく分からん……』

まあソラには東京とか沖縄とか、この世界の地名を言っても分からんか。

それよりも問題は――、

「うっぷ……おえええええええええええええええええ。おげっ……うっぷあぇ……んごぁがぎぃぃ……」

『お、おい、これは大丈夫なのか?』

「い、一之瀬さん? 大丈夫ですか? 話せますか?」

「無理です。死にます。私、もう死んじゃうんです、きっと……」

俺の隣で一之瀬さんは盛大に吐いていた。

もうなんかゲロだけでなく涙とか鼻水まですっごい出てる。最後の方なんてもはや吐いているのか、悲鳴を上げているのかよく分からない声が出ていた。

『Aaaaaaaa……?』

すると先程まで戦っていたリベルさんの召喚獣――オーディンさんが一之瀬さんの背中を擦る。ついでにどこから取り出したのか、ハンカチのようなモノで顔を拭いてあげると、ようやく一之瀬さんは見られる顔になった。

「あ、ありがとうございます、オーディンさん」

「Auoooo……♪」

多分、気にしないでと言っているのだろう。

どうにもこのオーディン、他の召喚獣と違って多少自我があるらしい。

見た目は隻眼マッチョのおっさんだけど、その性格は凄く紳士なのだ。特に一之瀬さんと五十嵐さんに優しい。でも俺には厳しい。何故だ? 石を投げて来るぞ? 何故だ?

「うっぷ……『乗り物酔い耐性』のレベルが一気に2から6まで上がりましたよ、ふふふ」

「そ、そうですか……」

「それと『遠距離射撃』も5から7に上がりましたね。正直、これ私にとって地獄の訓練ですがその分、効果はありますね」

「……ええ」

俺達が今、行っていたのはソラとの飛行訓練だ。

ソラに乗った状態で、リベルさんの召喚獣と空中戦闘を行い、経験値とスキルのレベルを上げているのである。

レベルの方は全然上がらないが、その分スキルのレベルは上がっている。

普段とは違う訓練はその分、スキルの熟練度にも影響するのだろう。

『我としては後半日は飛び続けても問題ないぞ?』

「無茶言うなよ……」

ここ最近、ソラは随分流暢に念話を飛ばせるようになった。

おかげで聞き取りやすく、以前よりも円滑に会話が成り立つ。

「でも本当にモンスターを倒しに行かなくていいんですかね?」

「まあ、今更ゴブリンの一匹や二匹、倒したところで大して意味はないですからね……」

ここ最近はずっとリベルさんの召喚獣が相手で、モンスターとの戦闘は一切行っていない。

今、安全地帯でモンスターを主に倒しているのは藤田さんや二条たちだ。

この間、進化したばかりのメンバーである。

彼らが主力となって周囲のモンスターの掃討に当たっている。

とはいえ、蛇と蜘蛛のネームドを倒して以来、この周辺には強いモンスターは殆ど居なくなったので、もっぱら雑魚狩りのような状態になっているけど。

「リベルさんはそろそろ新しい訓練をするって言ってましたけど、何をするんでしょうね?」

「……正直、想像したくないです。うっぷ……」

今しがたの訓練ですら地獄なのだ。

これからの訓練を想像するだけで、一之瀬さんは既にグロッキーである。

ちなみにオーディンさんは手持ちの槍でストレッチをしている。自由だな、おい。

(しかしレベルが全く上がらないのは確かに気になるよなぁ……)

半神人に進化してからもう二週間以上経つが、俺のレベルは全く上がっていない。

リベルさんや召喚獣との戦いで得られる経験値が少なくなってきたのだろう。

……まあ、一之瀬さんは俺とは別の理由でレベルを上げていないのだけど。

「……こんな調子で本当に私達、異世界人に勝てるんですかね……?」

「……」

一之瀬さんの呟きに、俺は何も言えなかった。

リベルさん曰く、先遣隊の強さは今の俺が三人居てようやく一人と互角。

それが十人。あまりにも圧倒的な戦力差だ。

シュヴァルツや海王様が力を貸してくれるとは言え、それを加味しても総合的な戦力は向こうが上だとリベルさんは言っていた。

先遣隊がこの世界に来るまであと数か月しかないのに、本当にこれで大丈夫なのだろうか……?

「……」

ふと、俺は自分の掌を見つめる。

アロガンツとの戦いの後、俺はカオス・フロンティアシステムサーバーなる場所で謎の白い少女から『管理者権限』なるモノを与えられた。

あの少女曰く、システム由来の事象であれば、あらゆる介入、改竄、上書きが可能という余りにもチートな力。

ただし、その発動は一回のみ。

たった一度でも発動すれば、俺の体と精神に甚大な被害が出る上、二回目以降は確実に命を落とすと言われているからだ。逆に言えば、死んでも構わなければ二回までなら発動できるって事なんだろうけど……。まあ、俺は死にたくないのでそれは絶対にしない。

(……この力を使えば、先遣隊や異世界の介入をこれ以上させないって事も出来るのかな?)

この戦いそのものを無くする事だって出来るかもしれない。

でも……なんだろうな。根拠はないんだけど、使うタイミングは『今』じゃないような気がするのだ。

もったいぶってるわけじゃなく、必ずこの力に頼らなければならない時が来る。

そんな気がするのだ。こういう時の俺の勘って妙に当たるから、素直に直感に従っておこう。

「クドウさん、じーっと手を見つめてどうしたんですか? 生命線でも気になりました?」

「いや、違いますよ。それよりそろそろリベルさんが来るころですね」

「あ、本当だ。うへぇー、次はどんなことをさせられるんですかね」

俺達にソラとの飛行訓練を指示した後、リベルさんはすぐに別のメンバーの訓練へ向かった。立場が立場だから仕方ないとはいえ、ここ最近の彼女は本当に忙しそうだ。

「まあ、地獄のような訓練なのは間違いないでしょうね」

「ですよねー」

「Uoooo……」

一之瀬さんと、ついでにオーディンさんも頷く。

それからしばらくしてようやくリベルさんがやってきた。

その後ろには六花ちゃんと五十嵐さんの姿もある。

「待たせてごめんなさい」

「いえ、構いませんが……」

ちらりと後ろに控える二人を見る。

「ああ、今度の訓練はこの二人も一緒にやろうと思ってね。戦力的にはアナタや奈津に次ぐ実力だし」

「という訳だから、よろしくねー、おにーさん、ナッつん」

「よろしくお願いします、カズトさん、一之瀬さん」

軽く挨拶を交わすと、リベルさんが全員を見渡す。

「それじゃあ挨拶も済んだことだし、早速出発しましょう」

「出発ってどこかに出かけるんですか?」

「そうよ。はい、これ着替え。全員分あるから」

そう言われて、リベルさんに渡された物を見る。

これは……水着?

ちらりと後ろを見れば、一之瀬さん達にもそれぞれ水着が渡されていた。

「これってもしかして……?」

「ええ」

リベルさんはこくりと頷くと、

「海に行くわよ♪」

……嫌な予感しかしなかった。