軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

234.反動

進化先は全部で六つ。

とりあえずは質問権で調べてみるか。

『進化先』

・超人

人間の高位上位種。既存スキルの効果を爆発的に高める。

各種ステータスが大幅に上昇し、所有する既存スキルのLVを3上げる。

見た目は普通の人間と変わらない。

・仙人

人間の高位上位種(希少)。魔法に優れている。

HP、MP、魔力、耐魔力が大幅に上昇し、種族固有のスキルを得る。

寿命が大幅に伸び、老化も遅くなる。

食事を取らなくとも、MPが枯渇しない限り生活できるようになる。

見た目は普通の人間と変わらない。

・ 始源人(オリジン)

人間の高位上位種(希少)。力、耐久に優れている。

力、耐久、敏捷、器用が大幅に上昇し、種族固有のスキルを得る。

本来、人間には取得不可能なスキルを取得できるようになる。

・ 高位森人(ハイエルフ)

人間の高位上位種。魔法に優れている。

MP、魔力、耐魔力が大幅に増加し、種族固有のスキルを複数得る。

魔法系スキルの取得が容易くなり、熟練度も早く上がる。

耳がとがり、見た目が非常に麗しくなる。

寿命が大幅に伸び、老化も大幅に遅くなる。

・ 高位影人(ハイシャドウ)

人間の高位上位種(希少)。

五感、身体能力が大幅に強化され、種族固有のスキルを複数取得する。

MP、力、器用、敏捷、魔力、耐魔力が大幅に増加する。

影や闇がある限りその肉体は滅ぶことはない。

・ 半神人(デミ・ゴッド)

人間の高位上位種(超希少)。

全ステータスが大幅に上昇し、所有するスキルの効果が大幅に上昇する。

寿命が大幅に伸び、老化も遅くなる。種族固有のスキルを複数取得する。

あらゆる病気、毒、呪いを完全無効化する。

本来、人間には取得不可能なレアスキルを取得できるようになる。

うーむ、流石新しい進化先だな。どれもぶっ壊れ性能である。

中でも半神人が頭一つ抜けてる印象だな。超希少、固有スキルに、人間には取得不可能なレアスキルが取得出来るって部分が気になる。他の種族も気になる部分が多い。

すると一之瀬さんがひょこっと顔を覗かせる。

「クドウさん、何を見てるんですか? あ、もしかして新しい進化先ってやつですか?」

「ええ、とりあえずどんな種族があるのかだけでも確認しておこうと思いまして」

「へー、どんなのがあったんです?」

「候補は六つで、まず――」

俺は一之瀬さんや、みんなに進化先について説明した。

「……チートや、チート種族がおる」

で、一之瀬さんの第一声がこれである。

いや、俺も否定しないけどさ。

「あー、なんかクドウさんがどんどん遠い所に行く気がします……」

「いや、一之瀬さんももうすぐ進化できるじゃないですか。今、LV27ですよね?」

今回の戦いで一之瀬さんやモモもLVが上がっていた。

訓練やモンスターの討伐次第では、2、3日中には進化できるはず。

後で皆のLVやスキルも確認しといた方が良いな。

俺も今回でまたポイントもたっぷり入ったし、ステ振りが楽しみだ。

「それはまあ、そうなんですけど……むぅ」

一之瀬さんは口をとがらせると、モモをモフモフしだした。

あ、ちょっと、取らないで。俺だってモフモフしたいのに。

「はぁー、私もようやく追いついたと思ったのに、また引き離されちゃったなぁー。頑張んないと」

そう言う六花ちゃんは現在、LV13。

確かに差はあるが、それでもここ数日でペースを急速にあげ本当に強くなった。

「それを言うなら俺なんてまだ進化したばかりなんだぞ?」

西野君は溜息をつく。

まあ、ついさっき進化したばかりだもんな。

それでも天人のスキルボーナスを使えば、格上相手にも十分勝機がある。

それほど落ち込むことはないと思う。

とりあえず落ち込む西野君に代わって、魔剣を殴っておく。

『なんでだ!?』

うるさい、黙れ。お前が壊れないのが悪いんだよ。

あ、そう言えば気になる事があったのを思い出した。

「そういやお前、どうやって『安全地帯』の中に入ったんだ?」

俺も色々推測はしたが、本人――いや、今は本剣か?――に直接聞くのが一番だろう。

するとアロガンツははんっと鼻を鳴らすような音を出した。

『本当に危機感が足りていないんだな、君は』

「なに……?」

『そんなの協力者が居たからに決まっているだろう。人間であれば自由にここへ入れるのだから、適当に外に出た時に捕まえた人間を数名スキルで洗脳すれば済む話だ』

「……」

やはりそうだったのか。

俺も戦いの時にその可能性は考えていたけど、やはりアロガンツは『安全地帯』の抜け道を見抜いていたらしい。

「……誰を洗脳したんだ?」

『君が名前も知らない住民だよ。探索で外に出た時に洗脳しておいた。君たちはここ最近、随分と大きく動いていたからね。仕込むのは簡単だった』

「……」

確かに、ここ最近、俺たちが修行している間、藤田さんや二条たちは外の活動範囲を大きく広げていた。

その甲斐あって、『安全地帯』の効果範囲は広がり住民の数も増えたが、多くなればその分、チェックも甘くなる。

現状、鑑定持ちが五十嵐さんしかいない以上、どうしても漏れは出てしまう。

その隙をアロガンツに突かれたってことか。

『五人以下のパーティーであれば誰でもよかった。加入するのが私と葛木さやかだけでよかったからね。葛木さやかは狼王の『闇』を使って、モンスターをほぼ無尽蔵に収納出来る。そして『魔物使い』の使役するモンスターは、『安全地帯』においては特例扱いだ。君のパーティーメンバーのようにね。モンスターが入る事が出来ない『安全地帯』と謳う割には穴が多すぎだと思うがね』

「……確かにそうだな」

むかついたので魔剣を叩きつけるが、アロガンツの言っている事は正論だ。

『安全地帯』の穴をつく方法は、確かに存在する。

コイツのように考える力、見抜く能力があれば、『安全地帯』はいともたやすく崩壊してしまう。まあ、中にはペオニーやティタンのような力技もあるけど。

『そもそも完璧なモノなど存在しない。世界やシステムすら不完全だというのに、そのシステムから生み出されたスキルが完璧であるわけない。欠陥や抜け道なんてあって当然ともいえるね』

その通りっちゃその通りだけど、コイツにそれを言われるのは腹立つなぁ。

そもそもお前が襲ってきたせいで、俺たちはここまで大変な状況になってるんだ。

むかつくのでもう一回破城鎚で殴っておく。

「なあ、ついでにもう一つ、聞きたいんだが、なんでお前は死んだのに、葛木や他のアンデッドは生きてるんだ?」

二条からのメールによれば、アロガンツは葛木の他にも井上さんや市役所の元職員など、俺たちにゆかりのある人たちをアンデッド化して襲わせていたらしい。

悪辣極まりない戦法だ。戦った藤田さんや二条たちも相当つらかっただろう。

現在は拘束しているとの事だが、どう処分すればいいか判断に困るところだ。

『悪いが、それは私にも分からない。本来であれば、君が言う通り、主である私が死ねば、彼女達に掛けられたスキルも解除され、再び死ぬはずだった。だが私がこうして魔剣となって生きながらえている以上、彼女達にも何らかの異変が起きていると考えるべきだろうね』

「……」

これも後で質問権で調べてみるべきだな。

万が一、彼女達が暴走でもしたら厄介なことになる。

本来ならその前にもう一度殺せばいいんだろうが、その前に一度話し合いの席を設けるべきだろう。独断で決めるには、問題がありすぎる。

「それにしても随分、正直に答えてくれるんだな」

『……この魔剣の所有者が君である以上、私は君に嘘をつく事が出来ないようになっているんだよ。全く、忌々しい』

「そうか、そいつはどうも」

お礼に破城鎚をくれてやる。

すると、一之瀬さんがちょいちょいと裾を掴んでくる。

「クドウさん、クドウさん」

「なんですか?」

「事情は分かってますけど、今のクドウさん、傍から見れば独り言を呟いて剣を叩くヤバい人になってますよ」

「分かってますよ、言わないで下さいっ」

むかついたのでもう一度、アロガンツを殴っておいた。

その後、市長や藤田さんらと合流し、状況確認をした。

アンデッドとなった井上さんや元市役所の職員らが一箇所にまとめて拘束されているのも見た。

話をしていると、清水チーフや二条もやってきた。

そういや、二条の奴とまともに顔を合わせるのも久々だな。

「せんぱーい! ごわがったですー!」

「はいはい、頑張ったな」

と思ったら、いきなり二条に抱きつかれた。

非常に鬱陶しいので適当に引っぺがして清水チーフへと押し付ける。

「なんで!?」

「いや、だって鬱陶しいし」

「ッ――!? 清水チーフぅぅ……」

二条はこの世の終わりみたいな表情を浮かべて、清水チーフの胸に顔を沈める。

「うぅ、先輩に雑に扱われた……。私、頑張ったのに……。久々に先輩と会話したのに……うぇぇ……」

「クドウ君……君、もう少し彼女の気持ちも考えてあげなさいよ……」

「いや、そう言われても……」

普通に困るんですけど。

すると清水チーフは溜息をついた。

「別に彼女の気持ちに応えろとは言わないけど、命懸けで戦った仲間をぞんざいに扱うのはやめなさい。君はここの最高戦力なんだから、君がそんな態度だと周りにも悪い影響が出ちゃうでしょ。『力があればどんな態度も許される』なんて思われたらどうするの?」

「それは……そうですね、すいません」

「謝るのは私じゃなくて、こっち」

「……すまん、二条」

「……はい」

なんだかお母さんみたいなお説教をされてしまった。

でも確かに、最近、清水チーフたちとはずっと別行動が多く、その辺を全然意識してなかった。

「……ついでに私もパーティーに入れてくれると嬉しいんですけど」

「いや、それは無理。もうメンバー埋まってるし」

「がーん……」

涙目になる二条には悪いけど、メンバーはもう変えるつもりはないしなぁ……。

二条はめっちゃ涙目になるし、ついでに何故か一之瀬さんがドヤ顔していた。

するとアロガンツがはんっと鼻を鳴らすような音を立てる。

『くだらないな。力をどう扱おうが、そんなのは個人の自由だ。周りへの影響を考えろなんて、結局は弱者が自己防衛の為に体の良い方便を並べているに過ぎない。相手の態度が気に入らなければ、自分がその相手より強くなればいいだけの話だろう』

「……それは強者の理論だろ」

誰もが強くなれるわけじゃないし、我を通せるわけじゃない。

大半の人間は、集団の中で生きなきゃいけないし、周りの意見を無視する事なんて出来ない。……まあ、俺も世界がこうなって最初の頃は周りに流されるのが怖くて集団との接触を避けてたけど……。

でもこの世界を生き抜いていくうちに、結局人は他人が居なければ生きていけないって事を嫌という程思い知らされた。

「人は弱いから、誰かと一緒に居なきゃ強くなれない。隣に誰かが居てくれるだけで、人は強くなれる生き物なんだよ」

『群れる事自体を否定するつもりはない。いつまでも弱者のままで居たいという精神も分からなくはない。だが自らの立場に甘んじておきながら、権利だけ主張するなら、それはただの寄生虫だ。まあ、力で積み上げた者が、より強い力を持った者にねじ伏せられるのもまた摂理だがね。……今の私のように』

本当にコイツはぺらぺらと舌が回る。

うんざりしていると、清水チーフがアパートの見取り図のような物を渡してきた。

「……これは?」

「私達の住んでるアパートよ。君たちの居住区壊れちゃったから、ココを使ってちょうだい。部屋は私と二条ちゃんの隣になるけど、そこは勘弁してね?」

「いえ、凄く助かります」

アロガンツとの戦闘で、俺たちの住んでた居住区はボロボロになっちゃったからな。

最悪、テントで野宿かとも思ってたので、助かった。

「え、先輩、私の隣に住むんですか!?」

二条の顔がぱぁっと明るくなる。

「ああ、一之瀬さんや西野君たちと一緒にお世話になるよ。これからよろしくな」

「あ……そっか。パーティーメンバーも一緒ですよね。そうですよねー」

一転して暗くなる。

コイツ、こんな表情豊かだったんだな。

えーっと部屋は二つだから、俺と西野君、一之瀬さんと六花ちゃんで相部屋かな。

「わぁーい、またナッつんと一緒―♪」

「ちょ、リッちゃんくっ付かないでよぅ……」

六花ちゃんは一之瀬さんと相部屋で嬉しそうだ。

欲を言えば、俺だって一之瀬さんと一緒にとか思うけど、それはまあ……駄目だよな。

「クドウさん、よろしくお願いします」

「ええ、こちらこそ」

一方で、西野君は、俺と相部屋で過ごすことに不満はないらしい。

リベルさんはとりあえずリビングで寝かせればいいか。

モモは影に入るし、キキも適当に寝るだろう。

ソラは外で問題はないし、シロは勝手に布団の中に入って来る。

「え、先輩、その男の子と一緒に寝るんですか……それはそれであり……いや、でも――」

二条が何を言ってるのか分からないし聞こえない。

「それじゃあ俺たちは先にアパートに行かせてもらいます」

「ええ、ゆっくり休んでね」

「はい」

「えー、先輩、もう少し一緒に」

「……悪いけど、また後でな」

話し合いもほどほどに切り上げて、俺たちはアパートへと向かった。

二条の名残惜しそうな視線が気になったが、そろそろ時間が迫ってるんだよ。

「では西野君、すいませんが、後はよろしくお願いします」

「はい、任せて下さい」

西野君に後を頼むと、俺はベッドに横になる。

話しを急いで切り上げたのは、そろそろ『英雄賛歌』の効果が切れるからだ。

『英雄賛歌』は一度発動すれば、任意で解除する事は出来ない。

効果時間は一時間。

そして効果が切れると、とてつもない疲労感と激痛に襲われ、まともに動けなくなる上、全てのスキルが72時間使えなくなるという制約がある。

まあ、疲労もスキルの使用不可も発動者である俺だけなので、一之瀬さんやモモ達には影響がないのは幸いか。

(はぁー、進化やステ振りは二日後だな)

多分、明日はずっと寝込んでいるだろう。

念の為にアロガンツはアカや西野君たちが見張ってくれてるし、安心して気絶する事が出来る。

目が覚めたら進化しないと。

進化先の候補としてはやっぱりあれだろうか?

(あ、そろそろスキルの効果が切れ――……ぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!)

その瞬間、とてつもない疲労感と激痛に襲われ、俺は気絶した。