軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

翌日。

しっかりと寝て起きたアルマークは、自分の身体の中から力がみなぎり、それとともに頭も働き始めていることに気付く。

部屋でマルスの杖を持って集中すると、研ぎ澄まされた魔力がたちまち杖の先端に集まった。

灯の術を使ってみる。

杖の先端に、もはや炎とは言えない眩い光が発現した。

「よし」

アルマークはひとり頷く。

休む前よりも、魔力が格段にコントロールしやすくなっている。

もう今日からイルミス先生に補習を再開してもらいたいくらいだが、焦りは禁物だ。

イルミス先生も焦るなと言っていたし、それに昨日のセラハの言葉。

セラハは、僕のことを焦らない人間だと言っていた。

自分ではよく分からないが、それが周りから見える普段の僕の姿だということだろう。

やはり、ここのところ、普段の自分を見失っていたということなのだ。

それがようやくアルマークにも分かった。

先生やウェンディたち、みんなの言うとおりだった。

補習の休みは今日で最後だ。

アインと一緒にザップの疑問を解決して、明日からまた全力で頑張ろう。

「おはよう」

校舎へ向かう道。

ほら、体調がいいと朝からいいことがある。

アルマークは小走りでウェンディに追いつく。

「おはよう、アルマーク」

ウェンディは振り向いて微笑むと、アルマークの顔を覗き込む。

「今日は顔色がいいね」

「よく寝たからね」

アルマークは頷く。

「今日、もう一日休んで、明日からまたイルミス先生の補習なんだ」

「うん」

ウェンディは笑顔で頷く。

「知ってるよ」

「そうか、話したね」

「補習、楽しみだね」

ウェンディはまるで自分のことのように嬉しそうに、そう言った。

「あ、うん」

アルマークは少し驚いて頷く。

「楽しみだよ」

アルマークはそう答え、マルスの杖をウェンディに見せた。

「これも、朝ちょっと使ってみたんだけど、魔力の調子がすごくいいんだ」

「そう」

ウェンディは微笑む。

「それならよかった」

ウェンディは手を伸ばしてマルスの杖を受け取った。

「本当に、ただの棒にしか見えないのにね」

「うん」

「不思議だね。これが、鍵」

ウェンディは杖を振る。

杖は何の反応も示さない。

「やっぱり私には使えないみたい」

苦笑してアルマークに杖を返す。

「僕もちゃんとは使えない」

アルマークは返された杖を軽く振った。

「早くちゃんと使えるようになるよ」

そしてもう、君を傷つけない。

誰にもこの杖を自由にはさせない。

「うん」

ウェンディは頷いた。

「とりあえず、試験に向けて頑張ろうね」

「うん。頑張るよ」

そう。そのとおりだ。

アルマークも頷いた。

その日最後の授業は、3年3組の担任であるデミトルの担当だった。

温厚でマイペースなことで知られるデミトルの授業は、案の定長引いた。

他のクラスの生徒たちがもう授業を終えて、アルマークたちの教室の前の廊下を通っていく声がする。

まずいな。

授業の終了を告げる鐘が鳴ってもペースの変わらないデミトルの話を、アルマークはそわそわしながら聞いた。

ようやく授業が終わると、アルマークはデミトルの後を追うようにして教室を飛び出した。

ネルソンが一瞬、声をかけたそうにアルマークの方を見たが、アルマークもそちらに構っている時間はなかった。

他のクラスの生徒たちを走って追い越し、校舎を出る。

昨日と同じ場所に、すでにアインとザップが待っていた。

「遅いぞ、アルマーク」

アインが言う。

「ごめん」

アルマークは謝った。

「デミトル先生の授業が少し長引いたんだ」

「ああ」

アインは頷く。

「確かにあの先生の授業はよく長引くな」

「それよりも、フィタたちは」

アルマークはザップを見る。

「大丈夫」

ザップは頷いた。

「二人ともまだ出てきてないよ」

「よかった」

アルマークはほっと息を吐いて、それからアインを見た。

「アインは早かったんだな」

「フィッケに余計なことを言われる前に教室を出たからな」

アインは澄ました顔で答えた。

「みんなが試験勉強態勢に入ったせいで、あいつは退屈してるんだ。知ったら間違いなく面白がってついてくる」

「フィッケは勉強しないのかい」

アルマークの質問に、アインは肩をすくめる。

「しなければまずいはずだがな。極力勉強をしなくてもすむ方法を見つけた、とかなんとか言ってたな」

「ああ、そういえば……」

アルマークは昨日のフィッケの様子を思い出してアインに話して聞かせる。

「ターニャだな」

アインは顔をしかめた。

「あの占いかぶれめ」

「占い?」

「アルマーク。フィッケに話したいことがあったら、今年のうちに伝えておけよ」

その言葉に、アルマークはきょとんとする。

「え、どうしてだい」

「決まってるだろう」

アインは呆れ顔で言った。

「あいつは僕らの学年の落第の第一候補だ」

「え」

「あっ」

アルマークの声とザップの声が重なった。

「来たよ。ミシェルだ」

「む」

アインが校舎の出口に目を向ける。

昨日フィタと笑顔で話していた女子が出てきたところだった。

足早に、昨日と同じ方向に消えていく。

「フィタはまだだね」

アルマークの言葉に、ザップは頷く。

「うん。まだ来てないよ」

「ザップも早かったね」

「僕も授業が終わった瞬間に走ってきたからね」

ザップは少し照れくさそうに言った。

「アインよりも先に着いたよ」

しばらくして、校舎の出口にフィタが姿を現した。

「来た」

ザップが囁く。

フィタが早足で、ミシェルと同じ方向に消えたあと、なかなか動き出さないアインを見て、ザップがじれた声を出す。

「まだ行かないのかい」

「行く場所は分かってるんだ」

アインは言った。

「慌てて行く必要もないだろう」

「それはそうだけど」

「ところで二人とも」

アインは二人を見た。

「あの道が、元々どこへ行く道だったのか知っているのか」

「どこへ?」

アルマークとザップは顔を見合わせた。

「どこにもつながってなかったよ。あの道は途中で途切れていた」

ザップが答える。

「ちょっとした丘みたいなところで」

「そうか」

アインは頷く。

「そこから獣道になっているんだったな」

「ああ」

アルマークも頷く。

「背の高い草むらがずっと続いてるんだ」

「ふむ」

アインは目を細めて、フィタの消えた先を見た。

「そろそろ行くか」

そう言うと、先に立って歩き始める。

アルマークとザップもその後ろに続く。

寮へも森へも通じていない道。

学院には、そんな道がいくつもある。

時には、もう使われていない古い農地や建物に通じていることもあったが、大抵の道は途中の草むらや茂みの中でふっつりと消えてしまっていた。

アルマークは、この道もそんな道の一つだと思っていた。

「この道がどこへ行く道だったのか、アインは知ってるのか」

アルマークは尋ねた。

「知っているわけではないが」

アインは答える。

「予想はつくな」

「予想?」

「ああ」

アインの言葉にアルマークは首をひねった。

「君にしてはやけにもったいぶるな。はっきり言ってくれないか」

「端的に言えば」

アインは前を向いたまま答える。

「闇の穴に続いていたのさ」

「闇の穴?」

不穏な響きにアルマークが眉をひそめた。

「闇、だって?」

「ああ」

アインは頷いた。

「かつて、闇の湧き出した場所だ」