軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

29. 膝が痛くて寝れない!

気がつけば、旅も後半になってきた。

とっくの昔に国境を超え、今はアグリ国内を進んでいる。

アグリ国に入ってからは、さらに目に見えて自然が多くなった。

それに、渓谷や川、湖が多く水が豊富なため、空気も澄んでいるような気がした。

故郷であるソル王国は乾いて砂っぽかったので、アグリ国は過ごしやすかった。

そんな環境の違いにも慣れてきた頃、なんだか喉がいがらっぽくて、声が掠れてしまうことが時々あった。

風邪でもひいたのかなと思ったけれど、喉が痛いわけではないし、咳もでない。

「にいに、おうた、うたって〜」

「クククー」

肩にメロディアを乗せたリュカがおねだりしてくる。

ふとしたいたずら心で、「メロディアはふわふわで可愛い、栗色でまんまるだ」といったことを歌ってみたら、リュカがものすごく気に入ってしまった。

ようは、前世の有名な童謡の替え歌だ。

それからことあるごとにせがまれて、もう何回歌ったかわからない。

僕が歌うのに合わせて、リュカも歌う。

それどころかメロディアも鳴くので、馬車はとてもにぎやかだった。

「にいに!もっかい!」

「えーしょうがないなあ〜、め”ー…こほんっ」

「う?にいに、だいどーぶ?」

「あ”ーあ”ー。こ”え”が…」

無理に声を出そうとすると、掠れてしまう。

痛くはないが、喉に変な違和感があった。

「ちょいと失礼して…。熱はなし。喉に痛みはありやすか?」

「(ふるふる)」

「うーん、こりゃあ、坊ちゃんの歳からすると、声変わりかと思いますぜ。ガキの頃、俺もそんな感じでしたな。しばらく無理に声は出さん方がいいでさあ」

「(なるほど)」

(あー、声変わりかあ。この感じ、確かにそうかも)

「にいに、おかぜ?」

「(ふるふる)」

「風邪ではないですが、しばらく歌えませんで。僭越ながら、このドニが代わりに歌いやしょう」

ちなみに、ドニはちょっとダミ声だが、低い歌声は意外と響きが悪くなかった。

そんなことがあった日から、今度は足、特に膝が痛むようになった。

夜に少し痛いなという感じがして、朝起きると何もないのだ。

万が一、何かの病気だったら嫌なので、自分を鑑定をしてみる。

「鑑定」

名前:ルイ・ヴァレー

年齢:14歳

性別:男

スキル:計算・鑑定・生活魔法

賞罰:なし

状態:健康(寝不足/成長期)

「状態は健康だけど、寝不足・成長期だって」

「十中八九、成長痛でしょうて。あまりにも痛むようなら、この村にちょうど旅の治療師が滞在しているそうなんで、念のため診てもらうこともできやすぜ」

(成長痛、しかもこのくらいの痛みで治療師に診てもらうのもなあ)

「うーん、そんなに強い痛みでもないから、ひとまずはいいかな」

「へえ。とはいえ、この村にもうしばらく滞在して、様子を見ましょうか。この先、ヴァレーまでは小さい村や集落しかありませんから、何かあった時のために治療師がいるこの村にいた方がいいかと」

「そうだね。ちょっと寝不足でしんどいし、2〜3日この村でゆっくりしようか」

なんて話をしていたその日の夜。

(体の下半分が痛くて、寝れない…!特に膝!めちゃくちゃ、痛い!)

みじろぎすると、強い痛みでうめいてしまう。

身体中にじーんと響いたり、関節の内側が爆発するような感覚だ。

あまりの痛さに、生理的に涙がでてくる。

(成長痛ってこんなに痛いものだっけ!?)

前世でもこんなに痛くはなかったはずだ。

世界や人種が違うからだろうか。

どうにも我慢できず、なんとか身を起こす。

そして、リュカは起こさないように注意しつつ、申し訳ないけれどドニを叩き起こした。

「(ふわぁ〜あ。坊ちゃん、こんな時間にどうしたんですかい)」

「(成長痛で、どうしても痛くて、寝れなくて…)」

「(この時間はさすがに診てもらうのは難しいですぜ。朝一にはお連れしますんで)」

こんなことなら、日中、治療師に診てもらえばよかった。

前世を含めるとだいぶ大人な年齢のはずの僕ではあるけれど、さすがに泣きそうになった。

そんな僕を見兼ねて、ドニが自警団仕込みのストレッチとマッサージをしてくれた。

普段なら、何が嬉しくておっさんに体を触られなきゃいけないのかと断固拒否するのだが、今は藁にもすがる思いだった。

最初は痛くて仕方がなかったが、ちょうどいい指圧と、関節や筋肉が痛気持ち良く伸びる感覚に、ほっと緊張が抜ける。

(気持ちいい〜)

痛みが軽くなり、体もぽかぽかしてきて、そう思ったのを最後にゆっくりと夢の中に落ちていった──

翌朝になると、少し違和感があるくらいで痛みは感じなかった。

けれど、念の為、ドニが治療師を連れてきてくれた。

やってきた旅の治療師は、痩せ型の丸メガネをかけた男性だった。30代後半くらいだろうか。

さっそく、問診と触診を受ける。

「ふむ。成長痛のようだけど、潜在的な病気の可能性もあるので、一応検査しましょうか」

「はい。お願いします」

「では。 検査(スキャン) 」

治療師の手がふわっと光って、病気がないか検査する。

(スキルで病気を探せるとか、ファンタジーだよな…)

その様子をぼんやりと見ていたが、すぐに検査は終わった。

「…ふむ。病気や炎症は見当たりません。成長痛ですね」

「ですよね…」

「湿布を数日分、お渡ししましょう。あまりにも痛んで眠れないようなら、痛みを鎮める薬や寝つきやすくなる薬もありますが、あまりおすすめはしません」

「どのくらい、痛みは続くんでしょうか」

「個人差はありますが、数日で治ると思います。可能なら、しばらくこの村に滞在された方がいいでしょう。私もそのくらいまではこの村におりますので。数日経っても、もし痛みが治らないようなら、また診せてください」

そうして、しばらくこの村で足止めが決定してしまった。

(身長を伸ばしたくて、毎日ミルクを飲んだからだろうけど、何も今成長期が来なくても…!ヴァレーまでもう近いのに…!)