軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

問題は続く

グレイは暴力を振るわなかったし、クルムはそれ以上冒険者たちを追求しなかった。散々脅かした後の彼らの言葉は、真実を話しているように聞こえたし、何より十分にあり得そうな話だったからだ。

グレイは二十年以上の間冒険者をしていた。

その中である程度の地位と名誉を得た者はたくさんいたし、更なる栄誉を謳歌しようとして、商人や貴族と関わり身を滅ぼした者もたくさん見てきた。

所詮冒険者というのは、どんな身分の者でもなることのできる仕事であり、教養があるわけではないのだ。騙されるときはあっさりと騙される。

なにより、一人が思い出しながら話をしている間に、他の仲間たちがあの時はああだった、とか、こうだったとか、必死な様子で情報の伝え漏れがないように、必要のないことまで教えてくれた。

即座に見事な言い訳の連携ができる者など滅多にいない。

ちなみに、たくさんの冒険者を従えているファンファも、二人と同意見であった。

冒険者と言うのは単純で粗雑な者が多く、そしてかわいいというのがファンファの意見だ。

ドーンズとニクスは、その中でも特に腕が立つ上にスマートに頭が回るからこそ、どこへでも連れて回ることができているのだ。

ある程度腕の立つ冒険者でも、多くの場合、中身がこんな感じであることをファンファはよく知っていた。

三人の意見が一致したところで、軽く目で語り合って頷き、それじゃあ、ということで、優しい説得役であるファンファが前に出る。

「話は分かりましたの。望むなら、私があなた方を受け入れます」

「そ、それは、保護してもらえるってことですかね……?」

だいぶ卑屈になった冒険者の一人が、腰を低くして尋ねると、ファンファはにっこりと笑う。

「もちろん。でも頑張るのは、私よりもクルムかもしれませんわ。ねぇ、クルム?」

「……ええ、そうかもしれませんね」

彼らを守るためには先んじて色々と手を回す必要があるだろう。

雇用して金銭を払うのはファンファかもしれないが、具体的な行動を起こすのはクルムである。

ただ、二人の関係がさっぱりわかっていない冒険者たちにはその意味がよく分からない。

その呆けた顔を見て、クルムたちは改めて、冒険者たちが利用されただけであったと確信を得る。

「ハルシ王国には、王位継承争いなるものがあって、あなた方はそれに巻き込まれたんですの。今残っている主な勢力は三つ。二人の王子の勢力と、私も手を貸している、ここにいるクルムの勢力。だから、本当にあなた方を助けるのはクルムってことになるの。分かるかしら?」

ここまでくれば残るファンファの仕事は、厳しい対応をしたクルムの株を上げることくらいだ。彼らが自分の勢力に属しつつ、クルムを甘く見ないようにしつけをしておかないと、後々に不和が生まれる。

ファンファは意外と自分の配下の教育は上手にやっている。

王位継承争いであれだけ派手にクルムに負けた後も、ファンファから離れていった部下はいないし、ファンファを下したクルムを憎んだり、悔し紛れに馬鹿にするような者もいなかった。

「なるほど……? お世話になります」

なんとなく大枠の状況を理解したらしい冒険者たちは、深々とクルムたちに向けて改めて頭を下げる。

ファンファが最初に出会った時から、これは欲しいと思っただけあって、どうやら中々に素直で扱いやすい性格をしているようであった。だから商人にもうまいこと騙されて使われるのであるけれど。

さて、話が収まったところで、ファンファは彼らの代わりに、急いでスペルティアに金銭の支払いを済ませる。ここで時間を空けるとどんどん利息が発生してしまうのは分かっている。

スペルティアは残念そうにしているが、自分の部下にすると決めた以上、無駄に出費させ続けるのは哀れだ。我がままお姫様のように見えて、ファンファは意外と部下を大切にするタイプだ。

その間に、クルムはすぐ隣の建物で仕事をしているバミのもとを訪ねて事情を説明。そのまま騎士団まで足を運び、ハップスにも情報を共有して調査を開始してもらう。

商人を殺した犯人までたどり着くことはまずないだろうけれど、これで冒険者たちに罪を擦り付けることもできなくなるし、あちら側の暗殺者も多少動きにくくなるはずだ。

実力的にはドーンズとニクスを上回る四人組を手に入れた上に、相手陣営の思惑を一つ潰すことができたと思えば、大した手間ではない。

さらに、冒険者たちに詳しく話を聞いたところ、亡くなった商人とつながりのある商会や、隣国の貴族の名前もいくつか浮かび上がってくる。

その中には、当然のようにジグラ王子の母親の生家である、隣国の王族に繋がりそうな名も、ちらほらと出てくることになった。

何の証拠にもならない情報であり、はじめから推測はついていたが、改めて、ジグラ王子が何かを仕掛けようとしていたことがはっきりとした。

一つ問題が収まったから、今度こそ貧民街の再開発の方に集中するため、改めて各地域を回っていたクルムは、また一つの問題に遭遇することになる。

各地域にそれぞれ、取り壊しを邪魔するような者が出没するようになってきたのだ。例えば、壊すための道具を盗んだり壊したりしたり、重ねておいた廃材をばらまいたり、火をつけてみたりと、やり方は様々だ。

その上、誰かが唆しているらしく、一度立ち退いた場所に戻って、頑なにそこから退かない者まで現れ始めたのだ。

「正直、大っぴらになる前に、さっさと殺しちまったほうがいいと思いますぜ」

それがゾエからの、もっとも簡単で、最も手っ取り早く、効果の高い提案であった。他の各地域の者からも、似たような提案をされている。

「邪魔をしている者に関しては調査を進めてください。判断には……少し、時間をください」

クルムは珍しく即決せずに、難しい顔でそう答えるのであった。