軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大集合

自室へ戻ったクルムはすぐにベッドで体を休め、翌朝からはグレイとの訓練から始まる、当たり前の一日を再開することになった。

やや溜まり気味の仕事を手早くこなしていると、大体いつも通りの時間にファンファが図々しくやってくる。

こちらは特別事前に声をかけておかない限り、顔パス状態で部屋までやってくるので、勝手にクルムの部屋の扉をバーンと押し開けて元気に入室だ。

クルムもいちいち筆を止めたりしないのだが、ファンファはそのまま近づいてきてクルムの顔を覗き込む。

「あら、元気そうね」

とても構ってほしそうだ。

クルムは仕方なく筆を置いて顔を上げて目を合わせる。

「お陰様で。色々と忙しいのも、一区切りつきました」

「良かったわ。クルムが苦労していると、私も困りますもの」

それはそうだ。

何せファンファの未来はクルムの双肩にかかっているのだから、できるだけ順調に事を進めてほしいに決まっている。

それが分かっているのならば、少しお喋りを控えてはくれないかなと思うクルムだ。

「お話するところがないと、退屈で退屈で……」

「そうでしたか……、すみません」

「いいのよ? お仕事も頑張ってもらわないと」

『そっちか』と思いつつクルムがジト目で謝罪をすると、ファンファはにっこりと花のように笑って激励してくれる。実に頼りになるお姉様であった。

そんな風に雑談を繰り返していると、扉がノックされて、客人の来訪が告げられる。

やって来たのは、ハップスだ。

しばらくの間は様子見でいようかと思っていたが、思っていたよりも随分と早く問題が解決してしまったため、クルムの方から使いを出してこちらへ来てもらった次第である。

「あら、お兄様、いらっしゃい?」

クルムの部屋であるはずなのに、我が物顔で迎え入れたファンファを見て、ハップスは一瞬、訪ねる場所を間違えたかと思う。だが部屋の中を見回せば、クルムが端の方で小さくなって仕事をしているし、グレイが当たり前のように茶をすすっているので、ここがクルムの居室であることは明らかだった。

「さて、お兄様もいらっしゃったことですし、状況の整理と共有をしましょう」

「そうだな。でなければ呼び出された意味が分からん」

ハップスは騎士団が忙しく活動をしていたことや、具体的に何が起こったか分かっているが、ジグやホワイトが忙しくしていたせいで、細やかな状況までは分かっていない。

各々が椅子に腰を下ろすと、それで四人掛けのテーブルはいっぱいだ。

「クルムとルミネ姉上が、何かしら関わっているところまでは聞いている。何があった」

「そうね、私も慌ただしい雰囲気は感じていたのだけれど、詳しいことは知りませんの」

兄姉から催促されてクルムは、ここ数日で起きたことについて、詳細を省きつつ共有しようとしたところで……、またも来客の知らせが来た。

今度はクルムの想定していないところである。

やって来たのはジグとルミネの二人で、そうなるとこの場所では少々手狭だ。

場所を移して食堂の方で話をすることとなった。

「これは、殿下方お揃いのところを失礼いたしました」

「いや、問題ない」

ハップスはキリリと答えたが、ファンファはこくこくと頷くだけだった。

どうやらルミネが、ジグの腕にそっと触れながらアルカイックスマイルで佇んでいるのが不気味であったようだ。

洗脳されていたという過去もあるし、そもそも話しかけてもろくに返事をしてもらえなかった相手が、突然クルムのもとを訪れてきたのだ。しかもなぜかやたらと穏やかな表情で。

驚くに決まっていた。

「ちょうど状況の説明をするところでした。お兄様、ファンファお姉様。ルミネお姉様も、今後は私に協力してくださることになりましたので、その点だけあらかじめお伝えしておきます」

「何をどうしたらそうなるのだ」

ハップスが呟いたところで、クルムはにっこりと笑って答える。

「私に任せて良かったでしょう?」

「……あまり無茶をするなよ」

クルムが見上げて笑えば、ハップスは僅かに表情を緩めたが、すぐに真面目な顔に戻ってクルムのことを心配する言葉を投げかけた。

「あら……?」

それを見てファンファが、『これは……』と反応する。

ファンファはハップスのことを、真面目一辺倒で融通の利かない兄だと思っていたが、どうやらクルムのことは甘やかしそうな雰囲気である。

これは上手くやれば自分も甘やかしてもらえるのではないか。

そんな雰囲気を察知したようであった。

さて、それぞれが席に着く。

ファンファの護衛である二人の冒険者、そしてルミネの護衛のつもりでいるジグは席に座らず立ったままだ。

そうなると座っているのは王族の四人、そしてグレイである。

当然グレイは王族たちの会談だからと言って遠慮して立って待つつもりなどない。

そして四人の王族の誰もが、それを期待してもいなかった。

「座って下さい」

「いえ、私は護衛ですから」

ルミネに手を引かれたジグは、断ってそのまま立っていようとしたが、ルミネの視線はじっとジグを見つめ続けて動かなくなってしまった。

意識が戻ってからずっとこんな調子である。

「ジグ殿も掛けてください。話が進みませんので」

「しかし……」

「くどい、さっさと諦めて座らんか」

クルムとグレイに促されて、ジグは仕方なく椅子を引いて腰かける。

ルミネは満足そうにジグの太ももに手を置くが、ジグの方は気が気ではなかった。

クルムとグレイは今更驚きもしないが、今までと違うルミネの穏やかな笑みに、ハップスとファンファはすっかり面食らっていた。