軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【人形遣い】の正体?

ホワイトとグレイが並んで現れたのを見て、ジグはまた一つ賭けに勝利したことがわかった。

ホワイトが教皇と言葉を交わし、捕まえていた者たちを解放する。

教皇が【人形遣い】に指示を出すことで、彼らは薬物兵たちによって捻り殺される。 彼らは、教皇が周りにいる子供たちをちゃんと殺すことができるというデモンストレーションのために殺されたに過ぎない。

聖職者であるのに甘い汁を吸って生きてきたのだから、当然の報いではあった。

ここでもジグがこれまで吹き込んできた嘘が、教皇の中に余裕と油断を生んだ。

彼らを殺すのは元から決まっていた事項であるから、本来は教皇が手を上げる必要等なかったのだ。普段から人の前で大げさなふるまいをすることに慣れている教皇だからこそ、パフォーマンスの一環としてこんな行動をとったのだろう。

ジグはすぐ近くにいたからこそ、教皇が一瞬屋根の方を気にするような動作をしたことに気が付いた。

ホワイトはともかく、老獪なグレイならば気づくかもしれないという希望が生まれる。

もし仮に、二人が【人形遣い】の存在に気付かずにこちらへ向かってきた場合、ジグは即座に教皇を殺して、二人に【人形遣い】の存在を知らせなければならない。

そうなると慎重な【人形遣い】は、すぐさまスカベラを囮に逃亡を図ることだろう。

あの慎重な老婆のことだから、いつだって自分一人が逃げ出せる準備くらいはしているはずだ。

はたしてその賭けにも、ジグは見事に勝利した。

何事か話し合った後、グレイが人間離れした挙動で屋根の上へと上がっていくのが見えた。

ほんの少しだけ、教皇を殺すのを我慢する。

殺すならば、グレイが屋根の上で戦闘を開始してからだ。

そうすれば、【人形遣い】がこちらを気にすることができなくなる。

場合によっては、ルミネにかけられた自死の呪いもおろそかになることだってあり得る。

焦る気持ちを抑え込んで、心の中で数秒数え、それから何気ない仕草で歩き出し、教皇の首をボキリとへし折った。

ここからは時間の問題だ。

残念ながらルミネ王女の自死の呪いは問題なく発動されたようだった。

ルミネ王女を抑え込んだジグにはもはや、ホワイトとグレイが全てを終わらせてくれることを祈るしかできなかった。

「ってことはなんじゃ? あの教皇のよく分からん自滅はなんだったんじゃ?」

「……教皇様にも何か呪いが掛けられていたのではないでしょうか。例えば……、死んだ時点で目の前にある者全てを攻撃するように、などと。元々は有能な魔法使いで知られた方ですから」

「それで聖魔法を放ったら自分も燃えたという事か。笑い話じゃな」

そこの真実は分からないが、少なくともあの魔法によって、大聖堂の奥にある屋敷一帯は浄化された。死んでいる者はその場に倒れ、呪いは弾かれた。

ろくでもない思想の持主であった教皇であるが、皮肉なことにその聖魔法の実力は確かなものだったのだろう。

話をしていると、スペルティアが大きな鍋いっぱいに水を汲んできて、テーブルの上に乗せ、じろりとジグを睨みつける。

「すべて飲む」

「……こんなに飲めません」

「飲めなくなったら吐け。腹の中を空にする。それから治癒魔法をかける」

「私のことはいいのでルミネ王女殿下のことを……」

「やらないと見ない」

「…………わかりました」

根負けしたジグが鍋を両手に持ってとぼとぼと厠へ向かっていく。

「……ジグ、話はまだ終わっていない。吐いたらちゃんと戻れ」

「わかっています。……と言っても、信じていただけるかわかりませんが」

「さっさと行け」

ホワイトは自嘲めいたセリフには付き合わず、手を振ってジグを追い払った。

それからじろりとグレイを睨む。

「そうなると【人形遣い】とやらを逃がしたのはまずいな」

「なんじゃこの、儂が悪いとでも言いたげじゃな」

グレイは額に血管を浮かべながら引きつった笑いで言い返す。

「そんなことはあまり言ってない」

「あまり? あまりと言ったか今! このクソガキが、【人形遣い】が屋根の上にいることすら気付かなかったお主が、儂に向かってよくもそんな……!」

「グレイ、うるさい」

「お、なんじゃ、お主も儂の敵か?」

スペルティアに文句を言われ、グレイは今度はそちらを睨む。

「そんなことより【人形遣い】に心当たりがある。グレイもあるはず」

「そんなこととはなんじゃ」

「エルフ、だったんですよね。先生、心当たりというのは……?」

クルムから真面目な疑問が飛び出したところで、グレイは眉間に皺をよせながらも、深くため息を吐いて心を鎮める。

そうして立派な顎鬚を指でさすりながらしばし首を捻って考えてから、「まさかのう……」と言った。

「何も思いつかない?」

「失礼な。あれじゃろう? エルフの森を魔物に襲わせた大罪人……、名は何と言ったか」

思わせぶりなことを言うことをよく知っているスペルティアが突っ込みを入れると、グレイがむっとした顔で言い返す。

「覚えてた。名前はインヴェディア」

「禁忌の研究をして五百年以上前にエルフの森を追い出された糞婆じゃろ。まだくたばっておらんかったのか」

「エルフは七百年くらい生きることもある」

「何だそいつは」

クルムが情報をかみ砕いていると、ホワイトが眉間に皺をよせながら尋ねる。

ホワイトからしても、犯人の情報らしきものを聞き逃すわけにはいかない。

「五十数年前に、【呪い谷】と【竜食山】の魔物がエルフの森になだれ込んだんじゃ。その時にエルフの森から連れてきたのがスペルティアじゃ」

「攫われてきた」

「助けてやったんじゃろうが、ぶっ殺すぞ」

スペルティアがグレイを指さしながら言うと、グレイはまた額に青筋を立てて言い返す。

「……魔物が自然にエルフの森になだれ込むことはありえないのですよね?」

「ありえない。守り人が殺されて、結界が破られていた」

「その犯人ってのが、昔々に王族の癖にやらかして追い出された、その馬鹿じゃないかって話だったんじゃ。行方をくらませておったんじゃが、【人形遣い】の話を聞く限り、十分に同一人物の可能性はある、ということじゃな」

ホワイトは腕を組み、クルムも難しい表情のまま黙り込む

グレイが行って逃げられたということは、もう仕方がなかったのだろうとクルムは思う。

ただ、これからも暗躍されることを考えると、楽観視することはできなかった。