作品タイトル不明
OL女の愚痴
「…………ハァ。いいわ。話を聞くわよ」
「おや?」
諦めた様な顔でため息を吐くOL女。意外と簡単に説得できたね。
「……なによ。あなた達が声を掛けてきたんでしょ?」
「いやまぁ、そうなんですけどね」
う〜ん……話が早すぎると今度は逆にこっちが警戒しちゃうね。なにか企んでんじゃないかってさ。
我儘でスマンけど、こっちは無力なお子様コンビだからね。
「随分と聞き分けがよくないッスかね?」
「あぁそういう事。そうね。キミの言う事も分かるわ。でも大人には事情があるのよ」
「ほぅ、例えば?」
「藁にも縋る思い、破れかぶれ、もうどうにでもなれ。……そんな感じ」
OL女はくたびれた顔で告げる。たぶん、酒に酔ってるのもあって判断が鈍くなってるな……。しめしめ、上手く丸め込めるんじゃない?
「それは困ってるってことでオケ?」
「子供に不満を吐き出して気を紛らわせようとする位にはね」
「あはぁ〜、損はさせませんよぉ」
――――――――――――――――――――――
「お持ち帰り用のピザも二枚ほど注文して良いっすかね?」
「好きにしたら?」
「……ごち」
OL女が取っているホテルに招かれた。メシをくれるならどっかの居酒屋でも良かったんだけど、女が嫌がった。持ってる物を店の中で出したくなかったらしい。
酔っ払ってる癖にそう言った判断はできんのね。
だからホテルのルームサービスで食事をすることになった。腹減ってたから助かるわぁ〜。
「はふはふ、それで食べながらでもいいなら、ブツを見せて欲しいんすけどね?」
「……んぐんぐ……わたしにお任せ」
「言っとくけど、私は君達がどうにか出来るなんて思ってないわよ」
「その割にはアッサリと私達を自分のホテルに招き入れましたね」
「そうね。グチを聞かせるのが枕か子供かの違いよ……まぁ、数を当てられたから万が一ってのもあるけどね。あと子供くらいなら最悪なんとでも……」
なんか怖いこといってらぁ。決め手は、襲われても子供なら腕力で何とでもなるってことね。
まぁ、こっちは真っ当に取り引きするつもりだから杞憂だけどね。
「……キミ達の言っていたのはこれね」
そういってOL女がアタッシュケースから取り出したのはノートパソコンみたいな形のケース。それを開けると色とりどりの『宝石』が並んでいた。
なるほど、幼女ちゃんの見立て通り呪いの元は宝石だったか。
「触れちゃダメよ……呪われてるから」
「おっとっと、触るとどうなるんです?」
「かぶれるわ」
「地味!?」
アレルギー物質か! とたんに呪いがショボく感じるわ。
「まぁ、一例よ。カブれる物もあるけど、呪いによって様々だから触らないようにね。このケースに入れておけば問題ないけど」
入れ物で呪いを抑えてるのか。なるほどね。そういう対処はできると……。
「んでぇ、これどうしたんすか?」
「クライアントに押し付けられたのよ……。ダンジョンから見つけた宝石を買い取ってくれって言われたんだけどね。わざわざこんな所まで足を運んだのに、ことごとく呪われてたのよ……アイツ絶対に知ってたわ」
おぅ……顔が怖くなってますよ姉さん。この姉ちゃんは宝石商とかかな。
「呪われた宝石は価値がないって事ッスかね?」
「そう言う訳じゃないわ……呪いを解けば中々の代物が揃ってる。けど呪われてちゃ価値は暴落よ。売れないし」
「なんで、んなもん買い取ったんすか……」
「仕方なかったのよ! 断れない相手だったし! 本当なら突き返したかったわよ! 呪いを防ぐケースだってタダじゃないのよ。維持するのにも金は掛かるし」
んでヤケになって酒を飲んでると……。
「呪いって解けないんすか?」
「簡単に言わないでよ。呪いを解くのにも専門の業者に依頼しないといけないし、時間も掛かるわ……それくらいなら、その資金で新しく宝石を買った方がマシ……。別にね、お金は最悪どうでもいいのよ。女と思って舐めたことされたのが腹が立つのよ……」
あらら、大変ねぇ。カワイソ。
まぁ、だからこそ私達が交渉出来るんだけどね。
「それ……今すぐ解こうか? ……出来るよ幼女ちゃんなら」
「は、それはそれは、感謝しますわ。……舐めんなよ。なんなのよ……店に泥棒は入るわ呪物は押し付けられるわ……ついてない」
あー、だいぶ参ってんねこれは。当たり前だけどコッチの言う事も信じてない。本当にグチを聞かせるくらいにしか思ってねぇな。
早いとこ話を纏めよ。
「それじゃあ。宝石の呪いを解いたら、こっちのお願いも聞いて貰えますかね?」
「いいわよ〜。好きにしたらいいわ……」
なんか酒飲み始めたわ。仮にも商談中に失礼だこと。
でもちゃんと条件を言っとかなくちゃね。あとで踏み倒されても困るわ。
「じゃあ呪いを解いたら、情報とお金……あと少しの間、衣食住も保証して欲しいッスね」
「好きにしてって言ってるでしょ……」
あ、コレもうちょっと引っ張れるな……。
「あとは、定期的に呪いの物があったら解くよ。だから私達を雇うって形にしないかな? その分、色々と融通利かせてほしいな」
「解けたらね……」
これは私達の価値を高めて裏切られないようにする為でもある。呪いをといたら用無し、約束なんてしてないとか言われたら困るからね。これからも利用したいなら切り捨てられないだろってこと。
「オッケー……商談成立! 幼女ちゃん! やっちゃって!」
「……もう終わってる」
そう言って幼女ちゃんはメシを口いっぱいに頬張った。仕事早いわ〜この子……。
こう、余韻とかないかね。
「姉ちゃん姉ちゃん……終わったってよ……」
「はいはい、すごいわね〜。……ッ!」
全然信じてなかったOL女が、視線だけ宝石に向ける。すると突然、グッタリとソファーにもたれ掛かっていた体をガバリと起こして、手袋を嵌めた。
「……濁りが……」
宝石を光に透かして呟いたOL女は、次に機械を取り出して宝石に当てる。
「嘘でしょ……本当に呪いが無くなってる……」
ソファーの後ろから、OL女をガシッと掴んでやると、女はビクリと肩を振るわせた。
「まいどぉ……それじゃあ暫くお世話になりますわぁ」
ニタニタと笑いながら告げると、女の口がヒクついた。
「え、えぇ……こちらこそ……」
そんなにビビんなよ……仲良くしようぜ。