作品タイトル不明
封印が解ける
「幼女ちゃん、封印って解いたらどうなんの?」
牢屋の中で、壁際で膝を抱える白髪幼女に話しかける。
「……」
うん、そろそろ幼女ちゃんの精神が限界かもしれん。虚な目でたまにブツブツ呟いてたりする。ちょっと怖い。心なしか目付きも鋭くなった気がする。
どうやら私の言葉は聞こえてはいたようで、少しだけ考える顔をした。
「……わからない」
「そっかぁ……分からないッスかぁ」
「でも……封印されているのは……悪いもの」
「……それって、遊園地にいるドレス着た女でいいの?」
私の言葉に白髪幼女は目を丸くした。
「……見えるの?」
「まぁ薄っすらとスけどね。じゃあ、ドレス女が邪悪な物なら、あのメガネの願いは叶わないって幼女ちゃんは思う?」
悪いものならハリウッドメガネは騙されてるって事になるんだけど。これをハリウッドメガネに言ったらどうなるかな? 交渉材料になったりしない?
「……叶う……と思う。封印に変な仕掛けが掛かってた……たぶん、一度だけ言うこと聞くみたいな……ものだと思う。だからモロい」
モロい? あぁ、もしかして私の能力の制限みたいな事してんのか? 封印が解きやすくする変わりに、願いを叶える条件で破りやすくする的な。
う〜む、ハリウッドメガネの願いは叶う。つまり運命力とやらを上げることができる。
問題はその後よな……。封印されてた邪悪な存在が解き放たれると……ハッキリ言ってロクな事にならない未来しか見えない。
私はどう動くべきか……一番いいのは幼女ちゃんを連れて逃げ出すことだけど……。
「それが出来たら苦労してないよねぇ……」
逃げ出せるタイミングを逃さないように、常にアンテナ張っとくしかないかぁ……。
とりあえず隙を見つけたら逃げ出すってことで。
――――――――――――――――――――――――
「とか思ってたけど、そんなタイミングなかったよ……」
幼女ちゃんよぉ……もちっと封印解除に手間取ってくれませんかねぇ……。
この子、二つ目の封印もサクッと解いちゃったよ。
まだ時間があるとか思ってたのに、封印はあと一つになっちゃったわ。ペース早すぎだろ……。
夏休みの宿題とか速攻で終わらすタイプかな?
そんでもって今は三つ目、最後の封印を解きに向かってる途中です……。どないしよ……。
「ははは、調子はどうだい? テレサーズ」
「絶好調ッスよ……」
「それは頼もしいねテレサB」
ハリウッドメガネの機嫌も絶好調で凄くウザい。
連れてこられてたのは、ジェットコースターの搭乗口。ジェットコースターとは言うものの、ハイスピードで進むタイプのものではなく、雰囲気を楽しむアドベンチャータイプだ。
トロッコのようなコースターに乗せられゴットンゴットンと進んでいく。そして作り物のような活火山の洞窟へと入って行った。
「ふふふ、この鉱山洞窟はもともと本当に採掘をしていた場所らしいよ」
ウッキウキのメガネはどうでもいい豆知識を披露してくれる。少年のような顔するんじゃないよ。絶望に叩き落としたくなるだろ。
洞窟の中程まできたらトロッコが停止する。ここからは歩きのようだ。
「ふ〜ん……確かに本当に使ってた鉱山だったらしいね」
しばらく進むと、明らかに遊園地のコースター用レールではなく、錆びついたレールが現れた。そしてその隣には壊れたトロッコが打ち捨てられている。
そして十五分くらいレールに沿って歩いただろうか。イタチ像が鎮座する空間に到着する。
最後の封印を司るイタチ像は、月明かりに照らされていた。山肌が削れ外が丸見えになっている。
「あんまり崖に近づかないようにね。落ちたら大変だ」
山の中腹に位置するこの場所からは遊園地が一望できた。泉の中央にある城もよく見える。
その光景を背に佇むイタチ像は、まるでこの光景を守っているかのようだった。
「さぁ……最後の封印解除だ。頼んだよテレサーズ」
「……へいへい。了解ッスよ」
「……」
私と幼女ちゃんはイタチ像に歩み寄り、手をかざす。
正直いうとね……。
私は封印なんて解いちゃっても構わないと思ってる。
封印を解くとハリウッドメガネの願いが叶ってしまう。そして邪悪な存在が目覚めてしまう。
「うん、ソレがどうした……」
なんだかんだハリウッドメガネと、バチバチやってるけどね……別に私はハリウッドメガネに恨みなんてないんだよ。じっさい私が何かをされた訳じゃない。
今回に関しては首を突っ込んだのは私の方で、ハリウッドメガネからしたら、誘拐してきた幼女がニセモノ臭いわ分身するわでストレスを与えただけだ。
もちろん、私は私の目的で行動しているから目的がカチあってしまった結果なんだけど。
話を聞いてみれば、微妙に目的が反発しない事が分かったんだ。
『運命力を上げたい』別にいいんじゃない? ハリウッドメガネに恨みがないからね。絶対に阻止したい訳じゃない。
そう、私の目的は……幼女ちゃんを親元に返す事なんだ。
たぶん豚貴族は私にソレを望んでいる。そう依頼だ。
ハリウッドメガネの願いとは別の問題なんだ。願いが叶おうが叶わなかろうが関係ない。
もちろん、その後も白髪親子は手元に置いておきたいようなので、それは阻止したい。
だけど願いを叶える事自体は妨害する気はない。
そして封印を解く事で復活するという邪悪な存在のことなんだけど……
「勝手に復活してろ……」
白髪ママには悪いけどね。その危険性に気づいて逃げ出して来たんだろうから……。けど知ったこっちゃない。
封印が解けたら暴れるのか?
だったら好都合……。
私はソレを望んでいる。
邪悪なモノが暴れてくれれば、きっと隙ができる。
そのドサクサに紛れて逃げ出すんだ。
混乱している間に幼女ちゃんを連れて、遊園地を脱出。そして帰ればミッションコンプリートだ。
ピシ……
イタチ像にヒビが入る。
あぁ、封印が解けるね……。
さて……どうなるかな?